本棚は段ボール Vol.38 『死なれちゃったあとで』/前田隆弘
死んだ人間が、美化されるのが大嫌い。
美化するんだったら生前に本人を褒めておけよ。
自分の後味のために他人の死すらも利用して、気持ち良くなろうとするな。
というのもあるし、なによりも、死んだ人間が、周りの人間に美化されて、私の記憶からも死んでしまう。本当のその人を思い出せなくなってしまう。それは余りにも苦しくて許せないことなのだ。
私の記憶の中のその人は、生きているときに極悪人だったなら、私が死ぬまで私の中では極悪人であり続けてほしいのである。そうでなければ、それは別人であり