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本棚は段ボール Vol.13 『わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版』/くどうれいん

天邪鬼だから、流行りのものをいつも、流行りが終わった後に手にとって、「うん、いいなあ」となっている気がする。
天邪鬼というか、変なところで「秩序」を守りたがる性格のせいかもしれない。
ものの優先順位を吟味して、それよりも高いものがあれば手を出さない。
流行っているただなかでも、その前から読みたいと思っていたものがずっと心の中に溜まっていて、そちらを消化するまでは新しい興味に飛びつけない。
面倒である。そのときに「やりたい」と感じていること、タイムリーに「これだ!」というものに飛びついたらいいのに。
どうしてもそれができないのである。

 そんなこんなでやっとのこと読むことができた、そろそろ優先順位が回ってきたこの本。
素敵な文章が綴られていて、心にしみていった。おいしくて優しい、誰かが私を想って作ってくれた料理みたいに。

 私は食にこだわりがない。
美味しいものは好きだし、これが食べたい!という事もあるにはあるけれど、いつも自分が何を食べたいのかすらわからないし、お腹はすくのに何も食べたいものがない。
食にこだわりのある人には、理解できないという顔をよくされる。食にこだわりがある人は、ぜんぜん無関係のところで知り合った無関係の人でも、私の話を聞くと、そろって「理解不能」の顔をするからちょっと面白い。
よく考えたら食べたいものがわかるよ、と言われたこともあった。なるほどそうかと思って帰りに寄ったスーパーで食べたいものを探して5周しても何も見つからず、もう早く帰って休みたいと思ってしまったから結局ダメだった。いつも、コンビニやスーパーを何周しても、食べたいものがわからないし、同じく自分が何を食べたいのか何もわからなそうな人とうろうろぐるぐるするうちに何度も鉢合わせたりして、なんだか気まずくなってしまう。
全部食べたくない、とかではなく、そういうこともあるにはあるが、大抵は、これのような気もする、けれど、いまいちピンとこない。あれが食べたいような気がしないでもない、でもいざ目の前にするとやっぱり別に食べたくない、みたいな感じになり、最終的にやけくそで、そんなような気がするものを全部放り込んで、買って食べてみるとやっぱりこれじゃなかったなと思う日々です。

 ああ、ひとり暮らしをする前の、おいしい、やさしい、幸せの、母のご飯や父のたまのうどんがこいしい、こいしい。
だから私にはいつも食べたいものがないのだなあと思う。食べ物の種類の話ではないのだ、きっと。

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