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短編

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#掌編

不肖

思うに、謝りたいのだと思う。何に?彼に。どうして?己の罪悪感を払拭したくて。
大きくなるに連れて、視野が広くなったのか、はたまた狭くなったのか、あまり考えたくはないけど、背が高くなって、見える景色の中の、あなたの姿に、思うところが無いとは、決して言えないのです。
時代があったのでしょうか?環境があったのでしょうか、でも確かに、あなたが持っているものを、私が持っていないと、思う心が、嫌悪に沈みます。

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脊柱

高い天井を見上げている。驚くほど真っ白だ。清潔感よりかは、いっそ、自分自身の色を吸い上げられてしまうような吸引力を感じた。
頭の中の宝箱にしまった、過去の鮮烈な記憶が、極彩色の映像となって投影された。
ああ、可愛らしい彼女の横顔だ。いじらしく気になって、ばれるかもと怖がりながら見つめていたことを覚えている。
ちょっと照れた引きつりを顔に感じて、隣で彼女が笑っている。彼女が頼まれた荷物を、勇気を出し

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湯の花

心地が良い。耳をくすぐる湯の音が、己に貯まる凝り固まった淀んだものを砕いて、押し流していく。
肺に渦巻く暗いものを、己を見下ろす空へと向けて投げ出した。自然は全てを受け止めてくれた。少なくとも私は、そう感じた。
ゴツゴツと不揃いの岩が、体に食い込み、小さくない痛みを感じることもあるが、生きることに比べれば、大したことのない刺激にすぎない。
あまり強くはないが、今日という日のために、一等よいお酒を買

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止痛

どこか、頭の通り途の何処かを、ピンセットで吊り上げたような、鈍痛がします。
ため息が漏れます。
はぁ、と、垂れ落ちた気怠さの通行人が会釈をして通り過ぎていきました。
どうやら今日は朝、らしかったのです。
光が在りました。どうも仕事はしたくないらしい。
首をもたげて、発する光輝に色々をペタペタ仕込んでいました。
手には錆びたカッターの折れた刃が握られていました。どうしてでしょうか。
せっかくなので私

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隠している

隠している
隠している。色々と。
実を言うと、隠さなくてもいいものも、結構あったりする。
隠しとかないと、どうしようもない物もあったりする。
隠していると、嬉しいものもある。
隠したくないものも、あるにはある。
隠していたら、変わっていたものもある。
どちらにせよ隠している。
多分どこにでも隠している。
一挙手一投足、隠している。
隠していないときがない。
むしろ隠していないものってなんだろう。

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窓から外を見ている

窓から外を見ている

見えてくるのは単一の気色と十色の人、人。
思うままに歩き、走り、去っていく。
意味もなく、それらを見つめては吐き出す煙。ぷかり、ぷかり。形を知らない雲が揺蕩(たゆた)っている。
音が響けば、それすら色で、聞くことなく、目の前を過ぎていく。
ともすれば、視線がかち合うこともあるわけで。合った瞳の持ち主が、殊に発色鮮やかならば、それは特別な証と一日の気分が良くなる。
とはいえ、ぷいと遠ざかるのも風のご

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印象

印象

音が響いてる。雫が落ちている様に。
波紋が広がっている。線が幾重にも重なる。
重厚。絢爛(けんらん)。瀟洒(しょうしゃ)。なんか良い。
口を開く。口ずさむ。ペラペラ。ピーチク。
思いの外軽い。ショック?
通り過ぎる。風の塊。抜ける。抉(えぐ)る土塊(つちくれ)。
動く。笑う。いひひ。ぱちくり。うーん?
進む。ドキドキ。ワクワク。たったった。
眩しい。劈(つんざ)くような。キリキリ。暗闇。影。
触れ

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溺死

命が溺れ死ぬ深き淵
天上に移ろう薄ら寒い影
しんしんと積もる漣の刻薄
さ丹漏れ出づる血肉の吐息
心命賭して紡ぐ絞首の縄
足元に伸びる光にいとけなく咲う

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特に脈絡もない突然なセンチメンタルが城縫威を襲う!!書き終わったあとのチキンラーメンの旨さったらなかったぜ!Yeah!!!(意味もない徹夜明けのテンション)