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窓から外を見ている

見えてくるのは単一の気色と十色の人、人。
思うままに歩き、走り、去っていく。
意味もなく、それらを見つめては吐き出す煙。ぷかり、ぷかり。形を知らない雲が揺蕩(たゆた)っている。
音が響けば、それすら色で、聞くことなく、目の前を過ぎていく。
ともすれば、視線がかち合うこともあるわけで。合った瞳の持ち主が、殊に発色鮮やかならば、それは特別な証と一日の気分が良くなる。
とはいえ、ぷいと遠ざかるのも風のごとく。
どうにも旗色が悪い。
内から外に目を剥いて覗いてみれば、覗かれて吐き捨てられる寂寥(じゃくりょう)とは、言葉なく押し黙る子供の様な惨めさだ。
浮かぶ煙に巻かれて、形なく吹かれてしまえと思う心は、些か冷たい空色みたいに薄い。

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