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マークの大冒険 古代ローマ編 | 選択の代償 Chapter:6


前回のあらすじ
マークは黄金の果実を使用し、自身の記憶の喪失と引き換えに時を止め、エジプトごとを呼び出す降神陣を描くことに成功する。エジプトの降神により、ホルスは本来の力を覚醒させた。展開は一気にマークたちの優勢となったが、マークが記憶を代償としたことにカッシウスとブルートゥスは納得できずにいた。

前回のストーリー
マークの大冒険 古代ローマ編 | 選択の代償 Chapter:5
https://note.com/shelk/n/na616017ef7ba


ユピテルは再びブラックホールのような穴を宙に出現させ、その中から投槍を出現させた。ユピテルが投槍を握って構えると、光を放って長槍へと姿を変えた。銀色に輝く槍がホルスに向けられる。すると、ホルスも右手から魔法で長槍を出現させた。黄金に輝く槍をホルスが構える。両者は突進し、互いの間合いに入った。槍と槍がぶつかり合い、激しい火花が散った。槍がぶつかる度に、その衝撃で爆音と空気が振れるほどの波動が響く。だが、ユピテルの動きが次第に鈍くなっていき、彼の長槍はホルスの斬撃で遠くへと吹き飛ばされた。

「神殿の破壊が利いているんだ。ユピテルの動きにキレがなくなってきている。フィールドがホルスの神域であるエジプトであることもユピテルの弱体化に影響している......?」

マークは、ホルスとユピテルの決戦を目の前に呟いた。

丸腰になったユピテルは身体中に電撃を走らせ、ホルスに体当たりした。だが、ユピテルは身体をぶつける前にホルスに蹴り飛ばされ、クフの大ピラミッドへと激突した。その衝撃で辺りに激しい地響きが起こった。覚醒したホルスに電撃は通じず、むしろホルスが発する熱気に全てが中和されていた。ユピテルを突き放したホルスの眼が再び青白く光り始め、百発百中のウジャトが発動される。ホルスは黄金の長槍を思い切り振りかざし、ユピテルを目掛けて激しく投げた。槍は轟音と波動を放って身体を貫き、ユピテルは雄叫びを上げた。その後、ユピテルは完全に動かなくなり、次第に空気に溶けるように消えていった。彼が消えると、辺りの景色もエジプトからローマに戻っていた。そして、マークたちの目の前には傷で動けなくなったカエサル、アントニウス、オクタウィウスが倒れていた。

「マーク、本当にすまない。だが、礼を言う」

ブルートゥスはそう言うと、短剣プギオを取り出し、横たわる三人の方に歩いていった。

「ブルートゥス、ケリをつけよう。これで全て決着がつく」

カッシウスもプギオを抜いた。

「ブルートゥス、私を殺すのか?」

カエサルが弱々しい声で命乞いした。

ブルートゥスに動揺の表情はなく、冷静だった。

「クソが.....」

アントニウスはそう吐き捨てながら最後の力を振り絞って動こうとするが、既に体力は残されておらず、起き上がれなかった。

「今、楽にしてやる」

カッシウスはアントニウスにそう言い放つと、彼の心臓を目掛けて思い切り短剣を突き出した。

「何!?身体が、動かねえ......」

カッシウスが自身の異変に驚きの声を出した。

「どうなってる!?」

ブルートゥスにも同じ現象が起きており、彼も困惑していた。

「そこまでだ!」

その声の持ち主は、マークだった。カッシウスとブルートゥスは、マークの方を向いて驚きの表情を見せた。

「不戦の契約だ。キミらは殺し合うことが強制的にできないようになっている。いくらお互いを殺したくても、殺せないわけさ。残された道は、和解しかない。カエサルはポンペイウス側についたキミらをクレメンティア(寛容)の精神で一度許した。キミらもクレメンティアの精神でもって答えるべきだ」

「いつからだ?いつから俺らを裏切った!答えろ、マーク!!」

カッシウスが怒鳴った。

「カッシウス、ブルートゥス、エジプトを降神する際、実は同時に不戦の契約をキミらに結ばせていたんだ。キミらはボクの剣を使って契約しただろ?そして、描いた降神陣の中にも不戦の契約を発動させる呪文をあらかじめ混ぜていたんだ」

「マーク、最初からそれがお前の狙いだったんだな!」

カッシウスは、怒りの表情を浮かべながらマークに言い放った。

「いや、最初は本当にキミらに味方するつもだった。でも、やっぱりこんなの間違ってると思った。戦いの中で気づかされたんだ。誰かが死ぬなんて、そんなのボクの望むシナリオじゃないってね」

「全てお前の計画通りってわけか、マーク」

ブルートゥスが睨んで言った。

「世界を支配するのは武力じゃない。知識なんだ。ボクはキミらよりも多くのことを知っている。だからこうして、今キミらを支配した。相手よりどれだけ多くの情報を保有しているか。情報は最も鋭い剣なんだ。キミらは知識でボクに負けた。それがこの状況を生み出している。今までの戦いでもそうだった。キミらは自分たちでどう戦うか考えようとせず、いつもボクに頼りっぱなしだった。無知が招いた結果だ。そして、悪いがボクは自分のエゴを押し通す。ボクはキミらローマの英雄が全員生存するシナリオが見たかった。そんなもうひとつの可能性。新生ローマ共和国の誕生。キミらがこれからそれを創るんだ。選択肢は、もう和解しか残されていない。手と手を取り合い、ローマの繁栄を願うべきだ」

「だが、それじゃあ、俺らは何のために戦ってきた!」

カッシウスは、納得できずにいた。

「カッシウス、キミの憤りも分かる。それでも、諦めるんだ。一度発動した契約を止めることはできない。キミらが彼らに手を下すことはもちろん、キミらの差し金で動く何者かの手を介しての暗殺もできないようになっている。その逆も然り。彼らもキミらを傷つけられない。お互いの命が同時に保障されるんだ。キミらも彼らやその支持者に殺される心配はない。これが不戦の契約、ボクの望んだ世界、記憶の代償として選択した道なんだ」


To Be Continued...


Shelk 詩瑠久🦋


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