記事一覧
『ハリケーンの季節』(フェルナンダ・メルチョール著 宇野和美訳 早川書房)書評
三面記事では時折「一体何がどうしてこんなことに?」とその背景を想像せずにはいられない事件が報じられる。本書『ハリケーンの季節』(フェルナンダ・メルチョール著 宇野和美訳)は、ジャーナリストでもある著者が「ある村で魔女が殺された」という記事を目にしてその真相に興味を持ち、フィクションで追求してみようと思ったことが執筆のきっかけだったという。2017年にメキシコで発表後世界的な注目を集め、34か国語
もっとみる「星の時」(クラリッセ・リスペクトル著 福嶋伸洋訳 河出書房新社)書評
1977年に出版された『星の時』(クラリッセ・リスペクトル著 福嶋伸洋訳 河出書房新社)の翻訳が2021年に出たのは、その前年が作家の生誕100年だったかららしい。作者はウクライナ生まれのブラジルの作家で、本の帯には「23言語で翻訳、世界的再評価の進む20世紀の巨匠」「伝説的作家の遺作にして最高傑作」と錚々たる謳い文句が並ぶ。
私がこの厚さ1㎝程度の本を最初に手にしてから読み終えるまでに1年
「インヴェンション・オブ・サウンド」(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳 早川書房) 書評
「想像による恐怖は眼前の恐怖に勝る*」 と言いますが、本書『インヴェンション・オブ・サウンド』(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳 早川書房)はこれを巧みに利用し読者の恐怖感を刺激してきます。読み手は文字で描写される世にも恐ろしい音を想像しては背筋を冷やし、不穏さ満載でありながら核心部分は描写されない音の採取方法について、おぞましい想像をあれやこれやと掻き立てられます。やだなあ、怖いなあ、と
もっとみる「喜べ、幸いなる魂よ」(佐藤亜紀著、KADOKAWA)書評
豊崎由美さんを講師にお迎えした書評講座第三回目の課題として書きました。まずは講評後の手直し版、その下にいただいたコメントと講評前のバージョンを載せます。
<手直し版>
生き方の価値観は人それぞれ。家庭第一の人もいれば仕事に生きたい人もいる...自分の生き方ビジョンを周囲が必ずしも共有してくれるとは限らないわけで、そこに様々なドラマが生まれます。
『喜べ、幸いなる魂よ』(佐藤亜紀著、KADO
「掃除婦のための手引き書」 書評
豊崎由美さんを講師にお迎えした書評講座第二回に参加しました。2つの課題図書のうち、こちらは「掃除婦のための手引き書(ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳 講談社)」のために書いたものです。もう一冊の「ハムネット」の書評もこちらに載せておきます。
以下、まず、講評後に手直ししたものを載せ、その下に講評前のものといただいたコメントを載せておきます。
講評後バージョン
後悔の無い人生を送れる人が果た
二層から成る「悪」の探索空間--「エルサレム」書評
書評講座に参加しました。講師は書評家の豊崎由美さん。3冊の課題図書のうち1つを選択して1600字以内で書くというお題で、私はポルトガル文学「エルサレム」(ゴンサロ・M・タヴァレス著 木下 眞穂訳 河出書房新社)で書きました。以下は講評後手直しを入れたものです。下に手直し前の文と、講評でいただいたコメントも記しておきます。
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