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陰謀論について語りたい──【書評】チャック・パラニューク著『インヴェンション・オブ・サウンド』
SNS台頭後、ハリウッド映画は作品に「語る仕掛け」を織り込んでいる。そのために、一見普通に楽しめる映画に敢えて違和感のあるものや雑なものを投げ込んで、人々に「あれは変だろ」と指摘させ、その議論まで計算してメッセージを伝えることまである。……そういった手法を小説界に持ち込んでいるのが、映画「ファイトクラブ」原作者のパラニュークだ。
パラニュークの18年ぶりの邦訳作『インヴェンション・オブ・サウンド
闇を担わされた者たちの悲痛な叫び――チャック・パラニューク著『インヴェンション・オブ・サウンド』書評
第四回 翻訳者のための書評講座に参加しました。
今回の課題はこれまであまり読んでこなかったジャンルの小説で、書評をまとめるのが難しいかもしれないと思っていたのですが、思いのほかスムーズに書くことができました。それはたぶん、この小説が持つ、人をぐいぐい引き込んでいく力のおかげなのだと思います。
講座では今回も講師の豊崎由美さんにご教示と励ましをいただき、また他の受講者の方からも貴重なご意見をいただき
「星の時」(クラリッセ・リスペクトル著 福嶋伸洋訳 河出書房新社)書評
1977年に出版された『星の時』(クラリッセ・リスペクトル著 福嶋伸洋訳 河出書房新社)の翻訳が2021年に出たのは、その前年が作家の生誕100年だったかららしい。作者はウクライナ生まれのブラジルの作家で、本の帯には「23言語で翻訳、世界的再評価の進む20世紀の巨匠」「伝説的作家の遺作にして最高傑作」と錚々たる謳い文句が並ぶ。
私がこの厚さ1㎝程度の本を最初に手にしてから読み終えるまでに1年
『インヴェンション・オブ・サウンド』書評
この小説は音であふれている。犬の遠吠え、ワインをグラスに注ぐ音、錠剤を奥歯でかみ砕く音、真珠のネックレスをはずす音、録音テープのざらざらした再生音、サイレンやエンジンの音、電飾の電球がはじけ割れる音、建物が崩れ落ちる音、そして悲鳴。
それもそのはず、主人公の一人、ミッツィ・アイブズはハリウッドで音響効果技師をやっていて、「悲鳴」作りにかけては定評がある。音源を売らずにライセンスを売って暮らす彼
改訂版『フォレスト・ダーク』(ニコール・クラウス著 広瀬恭子訳 白水社)書評
テルアビブの海岸に建つコンクリートの無骨なホテル、ヒルトン・テルアビブが、ニコール・クラウス著『フォレスト・ダーク』の要となる場所だ。物語の舞台はニューヨークとイスラエル、主人公はエプスティーンとニコールの2人である。
最初に登場する主人公はジュールス・エプスティーン。弁護士として名を馳せ、欲しいものは何でも、富も地位も名誉も幸せな家庭も手に入れてきた68歳の男性だ。常に人と議論を戦わす攻撃的
書評『インヴェンション・オブ・サウンド』 チャック・パラニューク著/池田真紀子訳
疫病に戦争。明日にでも終末を迎えそうなわたしたちの世界を、最後のひと突きで崩落させるのは、あるいは、人間が腹の底から発するたった一つの悲鳴かもしれない——何かの比喩かと思われるかもしれませんが、あに図らんや。邦訳は十八年ぶりとなるチャック・パラニュークの新作『インヴェンション・オブ・サウンド』(池田真紀子訳)で、悲鳴という名の音は「物理的」に世界を破壊します。
舞台はハリウッド。音響技士とし
「インヴェンション・オブ・サウンド」(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳 早川書房) 書評
「想像による恐怖は眼前の恐怖に勝る*」 と言いますが、本書『インヴェンション・オブ・サウンド』(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳 早川書房)はこれを巧みに利用し読者の恐怖感を刺激してきます。読み手は文字で描写される世にも恐ろしい音を想像しては背筋を冷やし、不穏さ満載でありながら核心部分は描写されない音の採取方法について、おぞましい想像をあれやこれやと掻き立てられます。やだなあ、怖いなあ、と
もっとみる<書評>あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集(西崎憲・編)
つい先日「第4回翻訳者のための書評講座」というものに参加させていただきました。これまで書評など書いたことはなく何をどう書いたらいいものやら頭がぐるぐるになりつつ提出した初書評でしたが、講師の豊崎由美さん始め参加者のみなさまから合評いただき大変勉強になりました。以下、講評を受けて書き直したほうの書評、いただいたコメントとわたしの意図、提出した書評の順で掲載します。
*修正後*
<七月の日曜の朝は