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2023年6月の記事一覧

詩|たまごのはなし

詩|たまごのはなし

卵が先か鶏が先か
なんて神様しか知らな
いんじゃないの?なんて彼
女に言ったら、そんなしょうも
ないこと聞きたくないと怒りだすも
んだから、ダーウィンの進化論の話をし
たら、また怒り出す彼女。あなたと会話が
したいのよ、と言うがこれは会話じゃなかっ
たのだろうかと、好きな卵料理の話を振ってみ
た。あなたまた私の卵料理が固すぎるって文句
言うつもりねと怒る彼女に僕は何と声をかける
のが正解だろうか。

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詩|SKY

詩|SKY

明日が
いい天気だといいな

うんざりするような雨だって
映画のワンシーンみたいに
思い出になる出来事があればいい

からっと
気持ちよく晴れてるのもいい
曇りだって素敵

喧嘩したって
小雨が降って
さした一本の傘のおかげで仲直り

幸せな気分になりたくて
素敵な
背中の
そばまで駆け寄って
タッチして
ちょっとだけ
繋いだ右の

と左の手

何気なく見上げた空を
虹が七色に
塗ってたら
猫に

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詩|7分間、沸いている。

詩|7分間、沸いている。

湯を沸かすのは卵を
茹でようと思ったか
らなのだが、鍋に卵
が入っていない。私
の頭が沸いている。

沸かした湯を沸いた
頭で眺め、手に持っ
た携帯電話で何をし
ようとしたのかを検
索しても解らない。

役に立たない文明の
利器め!と沸いた湯
で、携帯電話を茹で
てみると、ふと卵の
ことを思い出した。

ゆで卵を作るんだっ
た。携帯電話が熱湯
の中で叫び続けてい
る。熱湯の中でも壊
れない?!まじ

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詩|王子様は、待たない。

詩|王子様は、待たない。

あなたなら
息をするだけで
美しいのでしょうね
絵本の中の
お姫様みたいに
かなしみの涙さえ
綺麗な宝石に
苦しそうなその顔も
気だるそうなため息も
粉々になった夢も
冷めてしまった珈琲でさえも
幸せそう
すんでのところで
背を向けたのは正解でした
背けた背中から
立ち上るは征服欲
血のように真っ赤な美味しい林檎をどうぞ
追悼の準備は整っています
手の平に爪痕
止まらない鼓動
流れ出す雫
虹の終わ

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詩|橙ヲ、消化セヨ。

詩|橙ヲ、消化セヨ。

空が橙に染まる。
川も、山も、カレーの匂いがするあの家の窓も、橙に染まる。

「きれいな夕焼けだね」
公園帰りの子どものお母さん。
あの子の頬も橙に染まる。
「きょうのばんごはん、なあに」
橙の頬のあの子がにこにこしてる。
「今日は、オムライスにしようかな」
お母さんの頬も橙だ。

私の頬も橙に染まっている。
橙は私の身体中に染みていく。
胃の、ずっと奥の方に仕舞い込んだはずの今日が、胃液に押し上

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詩|結露する、私。

詩|結露する、私。

周囲の熱と、冷め切った私
結露が体内を満たしていく
プランクトンを育て魚を飼う
大きな魚の背びれに捕まり
悠々と泳ぐ海はどこまでも深い
そのうちに結露が溢れ出す頃
ようやく、私が生まれる

詩|足跡

詩|足跡

今日の地続きに明日があって
歩いてきた足跡に昨日がある

道のりが長ければ長いほど
道のりが険しければ険しいほど
見えるのは近くばかりで

日が昇り
日が沈む
月が昇り
月が沈む
雲が流れ
風がくすぐる

あの水平線の向こう側に明日があって
振り向けばその水平線の向こうに昨日がある

どこまでも続く平らな道でも
先の見えない山道でも
立ちすくむことは恐怖と隣合わせで

日が昇り
日が沈む
月が昇り

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詩|21グラム

詩|21グラム

無機質な明日が手をふる
その横で僕は青いため息
勢い余ってエクトプラズム一体
体重が21グラム軽くなった
吸い込む息と帰るエクトプラズム
何色だったか見ておけばよかった
元に戻った体重は間違えている
例えばグラムとキログラムを
あるいは僕と獏を
心と体が完全に不一致だ
動けないのは漬物石のせいだ
胃の奥に誰かの忘れた漬物石がある
僕はこれから水が上がるのを待つのみ
エクトプラズムを吐くか
溢れ出し

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詩|ただ泣く、そして書く。

詩|ただ泣く、そして書く。

13日前の夜。
350mlの缶ビール6本で、泣く。

夜中に一人、推しの番組を見ながらビールを飲み、キラキラしている彼らと対照的な自分に泣く。
なりたいものに一つもなれていないと、悔しくて声を出して泣いた。

なりたいものはたくさんあった。
歌手、童話作家、絵本作家、インテリアデザイナー、詩人、バックパッカー、小説家。
どれにもなれないまま、今日を迎えている。

別に、日々を嘆いてなどいない。

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