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詩|王子様は、待たない。

あなたなら
息をするだけで
美しいのでしょうね
絵本の中の
お姫様みたいに
かなしみの涙さえ
綺麗な宝石に
苦しそうなその顔も
気だるそうなため息も
粉々になった夢も
冷めてしまった珈琲でさえも
幸せそう
すんでのところで
背を向けたのは正解でした
背けた背中から
立ち上るは征服欲
血のように真っ赤な美味しい林檎をどうぞ
追悼の準備は整っています
手の平に爪痕
止まらない鼓動
流れ出す雫
虹の終わりに埋めてあげましょう
ぬかるんだ土の艶かしいこと
眠いのなら
望み通りに
花いっぱいの
棺の中へ
(蓋をするのは私の仕事)


(下手な誘い文句は
放っておきましょう)
曼珠沙華の花束はあなたの手の中へ
未来は私の手の中に
昔話や
迷信は
桃の枝に挿してしまえばいい
柔らかく
揺れる
陽光を浴びて
来春には芽が出ますように
林檎は虹の終わりに埋めてあげましょう
瑠璃色の宝石を胸に抱いて
劣等感は鼻で笑って
朗々と歌いましょう

わたしは王子様
を待ったりなんかしませ

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