朝凪めい

小説を書くのが好きな理系研究者ひよこ。ついった https://mobile.twit…

朝凪めい

小説を書くのが好きな理系研究者ひよこ。ついった https://mobile.twitter.com/mei_asanagi

マガジン

  • 朝凪めいさんの一次小説

    一次小説のまとめです。SFが多いかも。

  • オタク活動記録

    主に刀剣乱舞に狂っています。たまに本も出す。

  • ふわっと分かろう生き物と脳とサイエンス

    生物系、脳系、その他サイエンスについて、極力誰が読んでも面白いように解説していきます。 筆者の専門は脳(視覚情報処理)なので、その他分野に関しては大目に見ていただけると嬉しいです。

記事一覧

27年目の名探偵へ(ハロウィンの花嫁に対するクソデカ感情感想記事)

1996年1月8日、アニメ『名探偵コナン』放送開始。 このときわたしがどこで何をしていたかというと、何と母親の羊水の中にいた。私は1996年2月10日生まれなの…

朝凪めい
1年前
3

今日も人魚は歩かない

1  少し前から人魚が見えるようになった。  仕事からの帰り道、夕方の海のそばを自転車で走るたびにそれは見える。潮風にさらされたざらざらのコンクリートの向こうに…

朝凪めい
1年前
1

都営シャチ館

 僕は、サカマタという名前で、第八区画で働く男娼である。  第八区画は、性的サービスの提供を行う店をまとめる目的で作られた区画だ。半透明の分厚い強化特殊プラスチ…

朝凪めい
2年前
2

ながらへばそこには

 夢の中で、定期的に訪れる場所がある。  そこには、「窓口係」を名乗る美しい女性が一人、いつも座っている。ホワイトカラーのシャツの水色のスカーフ、艶のある黒のベ…

朝凪めい
3年前
2

「線」とは一体何なのか?(東京心覚ふわっと感想記事)

東京心覚のふわっとネタバレありです。 東京心覚で強調された「線」という概念心覚ではたびたび、「線」の概念が強調された。 結界の境界線。名前を書くときに用いる線。…

朝凪めい
3年前
2

超絶ふわっと分かる「脳と遺伝子」

今日の議題は「遺伝子でどこまで決まるか?」です。筆者の専門が脳なので、主に脳の個性の決定について、遺伝子がどこまで決めて、どこからが育ちなのか、超絶ふわっと解説…

朝凪めい
3年前
6

作業用ルピシアのお茶まとめ

基本的に朝凪さんは、家で「丁寧な生活」を一切しないことを心掛けている。 研究し、非常勤講師その他アルバイトで学費を稼ぎ、合間合間に小説を書く。これに加えて「丁寧…

朝凪めい
3年前
3

足元にいる絶望に寄り添ってくれた東京心覚

東京心覚に救われた自分をまた一つ見つけたので、記事にしておきます。 心覚のネタバレ及びパニック障害のパニック描写があるので、ご注意下さい。 七年前やってきた「絶…

朝凪めい
3年前
15

超絶ふわっと分かる生物の進化  ダーウィンの進化論からウイルスによる進化まで

「いきものはどうやって進化するのか」が、超絶ふわっと分かる記事です。まず簡単な話から入っていき、だんだん専門的・かつ最新の話になりますので、いつ脱落しても大丈夫…

朝凪めい
3年前
9

陸地は少し泳ぎにくいので

 海という生まれた場所を飛び出すことは、わたくしたち生き物にとって勇気の必要な決断ではありましたが、しかしわたくしたちの胸はあの時確かに高鳴っていました。  そ…

朝凪めい
3年前
3

「東京心覚」で終わる一つの思春期

※心覚と天伝のネタバレありです。 天伝「お前は何者なのか?」天伝を見ながら、私はずっとこう問われているような気がしていた。 誰かの兄や誰かの息子ではなく、お前自…

朝凪めい
3年前
3

桔梗であるとはどのようなことか

「人間に、意思ってあると思う?」  ふっ、とテーブルの上に投げ出された質問に、私は首を傾げた。その質問を口にした桔梗は、小さいひとくち分のチョコレートケーキを口…

朝凪めい
3年前
1

あつまれどうぶつの森から考える私たちの脳

初めまして。 現在大学院でヒトの脳を研究中の朝凪めいと申します。 ちまちまと、身の回りに溢れる脳科学・生物学ネタを発信していきたいと考えております。極力分かりや…

朝凪めい
4年前
8
27年目の名探偵へ(ハロウィンの花嫁に対するクソデカ感情感想記事)

27年目の名探偵へ(ハロウィンの花嫁に対するクソデカ感情感想記事)

1996年1月8日、アニメ『名探偵コナン』放送開始。

このときわたしがどこで何をしていたかというと、何と母親の羊水の中にいた。私は1996年2月10日生まれなので、ちょうど羊水で満ちた胸に来たるべく人生への期待と不安を抱いていた頃だろう。

それから約27年。
27年は長い年月なので、自発呼吸すらできなかった胎児は小説を書いたり同人誌を作って売ったり論文を書いたりできるようになった。

同時に、

もっとみる

今日も人魚は歩かない



 少し前から人魚が見えるようになった。
 仕事からの帰り道、夕方の海のそばを自転車で走るたびにそれは見える。潮風にさらされたざらざらのコンクリートの向こうにある、濁った灰色の海の中。上半身裸で、夕日を浴びて赤く光る銀の鱗を持った女の人魚が泳いでいるのだ。髪の毛は海水で色が抜けたみたいなぼやけた茶色で、海面からひょこっと顔を出してわたしを見つめた顔は人間の子供みたいだった。
 面白半分に、そん

もっとみる
都営シャチ館

都営シャチ館

 僕は、サカマタという名前で、第八区画で働く男娼である。
 第八区画は、性的サービスの提供を行う店をまとめる目的で作られた区画だ。半透明の分厚い強化特殊プラスチック壁で覆われた立ち入り特殊区画なので、入るためには認証ゲートを通る必要がある。第一から第九まであるそのゲートは、十八歳以下、その他性的サービスを受ける資格がないと判断された人間のIDカードでは通ることができない。
 そんな「お堅さ」を持っ

もっとみる
ながらへばそこには

ながらへばそこには

 夢の中で、定期的に訪れる場所がある。
 そこには、「窓口係」を名乗る美しい女性が一人、いつも座っている。ホワイトカラーのシャツの水色のスカーフ、艶のある黒のベスト。どこか銀行の窓口を思わせる服装をした彼女は、明るくも事務的な口調で、私の前で何かの「手続き」を進めていく。
「それでは、今回の破棄書類はこちらでよろしいでしょうか?」
 そう言って一枚一枚丁寧に見せられる書類の中には、はっと息を飲むほ

もっとみる
「線」とは一体何なのか?(東京心覚ふわっと感想記事)

「線」とは一体何なのか?(東京心覚ふわっと感想記事)

東京心覚のふわっとネタバレありです。

東京心覚で強調された「線」という概念心覚ではたびたび、「線」の概念が強調された。

結界の境界線。名前を書くときに用いる線。あちらとこちら側を分ける線。

中でも「線を書くことで名前が生まれ、それによって水心子は水心子となりえる」というシーンは非常に印象的だった。そこに人がいなくなると、自分たちはただの鉄となり、鉄という概念すらなくなると。

少し飛躍するが

もっとみる
超絶ふわっと分かる「脳と遺伝子」

超絶ふわっと分かる「脳と遺伝子」

今日の議題は「遺伝子でどこまで決まるか?」です。筆者の専門が脳なので、主に脳の個性の決定について、遺伝子がどこまで決めて、どこからが育ちなのか、超絶ふわっと解説していきます。

教科書は『心を生み出す遺伝子』(著:ゲアリー・マーカス)と『脳からみた自閉症』(著:大隅典子)としますが、あくまでもっと知りたくなった人用です。この記事だけでふわっと分かるように書いていきたいと思います。

①まず遺伝子っ

もっとみる
作業用ルピシアのお茶まとめ

作業用ルピシアのお茶まとめ

基本的に朝凪さんは、家で「丁寧な生活」を一切しないことを心掛けている。

研究し、非常勤講師その他アルバイトで学費を稼ぎ、合間合間に小説を書く。これに加えて「丁寧な生活」を行っている時間はない。今時1000円もあればカフェでゆっくりとした時間を過ごせることからしてみても、丁寧な時間を過ごしたいときはカフェに外部委託した方が効率がいい。すべての家事は効率重視、掃除の邪魔になるインテリアは一切置かない

もっとみる

足元にいる絶望に寄り添ってくれた東京心覚

東京心覚に救われた自分をまた一つ見つけたので、記事にしておきます。

心覚のネタバレ及びパニック障害のパニック描写があるので、ご注意下さい。

七年前やってきた「絶望感」のはなし病院で「パニック障害」と名前がつけられたその絶望感がやってきたのは、七年前、ちょうど大学受験真っ只中の事だった。

「いつか死んで、永遠の暗闇に放り出されて、そのまま私の痕跡さえいつか塵となる」

お伺いもなしにやってきた

もっとみる
超絶ふわっと分かる生物の進化  ダーウィンの進化論からウイルスによる進化まで

超絶ふわっと分かる生物の進化  ダーウィンの進化論からウイルスによる進化まで

「いきものはどうやって進化するのか」が、超絶ふわっと分かる記事です。まず簡単な話から入っていき、だんだん専門的・かつ最新の話になりますので、いつ脱落しても大丈夫です。極力脱落しなくてもいいように、簡単に説明していきます。

1 ダーウィンが『種の起源』で唱えた自然選択説とりあえず、「進化学」の始まりはここになります。

「生き物は進化する」ということを唱えたチャールズ・ダーウィンによる「自然選択説

もっとみる
陸地は少し泳ぎにくいので

陸地は少し泳ぎにくいので

 海という生まれた場所を飛び出すことは、わたくしたち生き物にとって勇気の必要な決断ではありましたが、しかしわたくしたちの胸はあの時確かに高鳴っていました。
 それまで「ひれ」と呼ばれていたそれを大地に着ければそれは確かに「肢」となり、「歩く」という行為が生まれます。その肢を使ってさらにめいめいは、木を登ってみたり、空を飛んでみたり、なんとわざわざ無くしてみたりと、思い思いに大地という場所を楽しみま

もっとみる
「東京心覚」で終わる一つの思春期

「東京心覚」で終わる一つの思春期

※心覚と天伝のネタバレありです。

天伝「お前は何者なのか?」天伝を見ながら、私はずっとこう問われているような気がしていた。

誰かの兄や誰かの息子ではなく、お前自身は何を成し遂げられる人間なんだ、お前は何者なんだ? 

一期一振は答える。「粟田口吉光による唯一の太刀であり、豊臣秀吉の刀である」。彼には、彼の答えがある。一体何者であるのか。

私もずっと、「それ」が欲しくてもがいていたのだ。

もっとみる
桔梗であるとはどのようなことか

桔梗であるとはどのようなことか

「人間に、意思ってあると思う?」
 ふっ、とテーブルの上に投げ出された質問に、私は首を傾げた。その質問を口にした桔梗は、小さいひとくち分のチョコレートケーキを口に運んでは、微笑を浮かべている。
 アンドロイドパティシエのさきがけが生み出した、絶対に失敗のないケーキ。どうやら気に入ったらしいく、桔梗は二つ目を食べている。私も気に入った。こってりとしたミルク感があるところが、特に。
「僕らの頭って結局

もっとみる
あつまれどうぶつの森から考える私たちの脳

あつまれどうぶつの森から考える私たちの脳

初めまして。

現在大学院でヒトの脳を研究中の朝凪めいと申します。

ちまちまと、身の回りに溢れる脳科学・生物学ネタを発信していきたいと考えております。極力分かりやすく、専門外の方でも面白く読めるように書いていきますので、どうぞよろしくお願いします。

第一回の今回は、現在大人気のゲーム、「あつまれどうぶつの森」を元に、私たちの脳が持つ不思議について簡単にご説明したいと思います。

大ヒットゲーム

もっとみる