朝凪めい
一次小説のまとめです。SFが多いかも。
生物系、脳系、その他サイエンスについて、極力誰が読んでも面白いように解説していきます。 筆者の専門は脳(視覚情報処理)なので、その他分野に関しては大目に見ていただけると嬉しいです。
犬に会うと、よく触らせてもらう。基本的に人見知りなので知らない人間に声をかけたりなど滅多にしないのだが、犬が連れているひととなると話は別だ。犬が連れているひとに「触っていいですか」と声をかけ、いいですよと言われると犬を撫でさせてもらう。本当は犬に直接許可が取れれば話は早いのだが。 犬の中でも特に、柴犬が好きだ。基本的に警戒心が強くシャイな彼らなのだが、わたしは意外と触らせてもらえることが多い。犬は匂いで相手の感情を知るらしいので、わたしからはもしかすると「柴犬に触りたいと
1 少し前から人魚が見えるようになった。 仕事からの帰り道、夕方の海のそばを自転車で走るたびにそれは見える。潮風にさらされたざらざらのコンクリートの向こうにある、濁った灰色の海の中。上半身裸で、夕日を浴びて赤く光る銀の鱗を持った女の人魚が泳いでいるのだ。髪の毛は海水で色が抜けたみたいなぼやけた茶色で、海面からひょこっと顔を出してわたしを見つめた顔は人間の子供みたいだった。 面白半分に、そんな人魚にお菓子を投げつけたらなついてしまった。 わたしはその人魚にプリッツとい
僕は、サカマタという名前で、第八区画で働く男娼である。 第八区画は、性的サービスの提供を行う店をまとめる目的で作られた区画だ。半透明の分厚い強化特殊プラスチック壁で覆われた立ち入り特殊区画なので、入るためには認証ゲートを通る必要がある。第一から第九まであるそのゲートは、十八歳以下、その他性的サービスを受ける資格がないと判断された人間のIDカードでは通ることができない。 そんな「お堅さ」を持っている第八区画だが、ひとたび中に入ってしまえばそこは楽園だ。人間が持つ多種多様な
夢の中で、定期的に訪れる場所がある。 そこには、「窓口係」を名乗る美しい女性が一人、いつも座っている。ホワイトカラーのシャツの水色のスカーフ、艶のある黒のベスト。どこか銀行の窓口を思わせる服装をした彼女は、明るくも事務的な口調で、私の前で何かの「手続き」を進めていく。 「それでは、今回の破棄書類はこちらでよろしいでしょうか?」 そう言って一枚一枚丁寧に見せられる書類の中には、はっと息を飲むほど美しい絵もある。だから何度か「これは捨てたくないのですが」と抗ってみたことがあ
今日の議題は「遺伝子でどこまで決まるか?」です。筆者の専門が脳なので、主に脳の個性の決定について、遺伝子がどこまで決めて、どこからが育ちなのか、超絶ふわっと解説していきます。 教科書は『心を生み出す遺伝子』(著:ゲアリー・マーカス)と『脳からみた自閉症』(著:大隅典子)としますが、あくまでもっと知りたくなった人用です。この記事だけでふわっと分かるように書いていきたいと思います。 ①まず遺伝子って何やねんまずここから行きます。遺伝子とは、何なのか? 一体何をやっているの?
基本的に朝凪さんは、家で「丁寧な生活」を一切しないことを心掛けている。 研究し、非常勤講師その他アルバイトで学費を稼ぎ、合間合間に小説を書く。これに加えて「丁寧な生活」を行っている時間はない。今時1000円もあればカフェでゆっくりとした時間を過ごせることからしてみても、丁寧な時間を過ごしたいときはカフェに外部委託した方が効率がいい。すべての家事は効率重視、掃除の邪魔になるインテリアは一切置かない。時は金なり。 しかし唯一の例外がある。ルピシアのお茶だ。 ルピシアのお茶は
「いきものはどうやって進化するのか」が、超絶ふわっと分かる記事です。まず簡単な話から入っていき、だんだん専門的・かつ最新の話になりますので、いつ脱落しても大丈夫です。極力脱落しなくてもいいように、簡単に説明していきます。 1 ダーウィンが『種の起源』で唱えた自然選択説とりあえず、「進化学」の始まりはここになります。 「生き物は進化する」ということを唱えたチャールズ・ダーウィンによる「自然選択説」が、生物の進化のベースとなる考え方になっています。これをすごくざっくりまとめる
海という生まれた場所を飛び出すことは、わたくしたち生き物にとって勇気の必要な決断ではありましたが、しかしわたくしたちの胸はあの時確かに高鳴っていました。 それまで「ひれ」と呼ばれていたそれを大地に着ければそれは確かに「肢」となり、「歩く」という行為が生まれます。その肢を使ってさらにめいめいは、木を登ってみたり、空を飛んでみたり、なんとわざわざ無くしてみたりと、思い思いに大地という場所を楽しみました。海という場所もなんとも様々な生き物であふれてはいましたが、大地という場所も
「人間に、意思ってあると思う?」 ふっ、とテーブルの上に投げ出された質問に、私は首を傾げた。その質問を口にした桔梗は、小さいひとくち分のチョコレートケーキを口に運んでは、微笑を浮かべている。 アンドロイドパティシエのさきがけが生み出した、絶対に失敗のないケーキ。どうやら気に入ったらしいく、桔梗は二つ目を食べている。私も気に入った。こってりとしたミルク感があるところが、特に。 「僕らの頭って結局、脳が持つシステムからは逃れられない。それなら、真に『僕らの意思』と呼べるものは
初めまして。 現在大学院でヒトの脳を研究中の朝凪めいと申します。 ちまちまと、身の回りに溢れる脳科学・生物学ネタを発信していきたいと考えております。極力分かりやすく、専門外の方でも面白く読めるように書いていきますので、どうぞよろしくお願いします。 第一回の今回は、現在大人気のゲーム、「あつまれどうぶつの森」を元に、私たちの脳が持つ不思議について簡単にご説明したいと思います。 大ヒットゲーム「あつまれどうぶつの森」「あつまれどうぶつの森」通称あつ森は、島で「何をしてもい