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#小説
「原宿系なんてやめとけよ」
「だから私決めたの、絶対に銀色の車には乗らないって」
ああもう自分が何の話をしているのか、さっぱりだ。どうして車の話なんて。大人みたいに。うん、もう大人なんだけどね、二十五歳だからね。大人だからバーの薄暗い店内のひんやりとしたカウンターにぐったり、額を預けて回らない口を精一杯動かす。
「一番汚れが目立たないからなんてそんな理由であんなにさ、高いものを買うなんて信じられない。自分の持ち物よ?」
氷の
かぐや姫なんて知らない
月が落ちてきたの。嘘だと思うかもしれないけど、これは本当の話。あたしはその月をナイスキャッチで受け止めて、ぎゅっと抱きしめたらほんのりと温かかったの。
今、その月はあたしのお部屋のベッドの上にいる。ピンク色のシーツ——これはママが選んだだけであたしの趣味ではない——の上に、真っ白な枕のお隣に、大人しく収まっている。昼間はスヤスヤと眠って、夜はピカピカと光る。飼っていた黒いウサギが落ちてくる拍子に逃