秋かぜにふさはしき名をまゐらせむ そぞろ心の乱れ髪の君 与謝野鉄幹 こちらはひとまず雨は上がり、遠くみやれば重たげな雲がたちこめており、夏とも秋ともいい得ぬ、ゆ…
昔は台風を「野分」と呼んだことは以前にも触れました。『源氏物語』の巻にも「野分」があり、『枕草子』には「野分のわきのまたの日こそ いみじうあはれにをかしけれ」と…
その種族はサボテンに近くあり、ゆえにエキゾチックな雰囲気を、感じるのかしら。風が吹けばゆれるように開き、近くに寄れば蓮の花のような気配、夢幻に浮かぶように百合の…
今朝ほどニュースを見ていたら、この夏、都内の電車内で見つかった忘れ物の数が、過去最大数になったとのこと。中でも最も多いのは「ワイヤレスイヤホン」で、同じような小…
ほら一瞬、切符きりの音がきこえました。覚えてた。 今日もいちりんあなたにどうぞ。 カボチャ 花言葉「広大」 Text フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主 普段はお祝…
夏の始まりから秋の入り口まで咲き、その花期の長さから「百日紅」とも書くサルスベリ。 枝先に、縮れたレースを集めたような小花が群がって咲きますが、この木の肌を指先…
「爪で掻いて食べ、指先でつまんで裂いて食べ、手で割って食べ、その後は、口もあけずにモグモグと食べました。」 まるで手紙のようなこの歌は、越後新津の大庄屋、桂誉正…
魔のなかの睡魔はやさし青葉木菟 凌霄花のほたほたほたりほたえ死 のうぜんの曼陀羅覆へわが柩 -文挾夫佐恵 凌霄花のほたほたほたり。この「ほたえる」とは、「ふざける、…
昨日は二十四節気の処暑。この場合の「処」は「収まる」という意味で使われており、したがって処暑は「暑さが収まるころ、落ち着くころ」という意味をもちます。 今年の夏…
朝顔は、いけばなの出生と共に選ばれてきた花。いとも涼し気で清涼感ある佇まいは、朝に迎えるお客にもふさわしく、茶花として用いられることは、利休の逸話でも知られると…
有島武郎の短編に『一房の葡萄』というのがあります。もともと好きな作家ではありますが、このちいさい物語にひろがる色彩豊かな描写と美しい筆致は、またも読んでひと目に…
「海の向う」は、山田耕作 作曲、北原白秋 作詞の日本の古い童謡です。 ここに出てくる「さんごじゅ」とは「珊瑚樹」のこと。6~7月ごろに白い花を咲かせますが、真夏に…
よく見れば、私たちの「姓名」には実に多くの植物名が使われています。たとえば苗字(性)には、藤、桐、梅、菊、榎。名には、桜、桃、葵、百合、楓などです。 きっと皆さ…
昼間は炎暑が続いているものの、夕暮れにもなるとやわらかな風を感じるようになりました。昼間の空はまだ夏だけど、夜の風には秋の気配。 このように、夏のたたずまいを残…
東京は台風一過の夏の空、青い空に白い雲、文字通りの夏空です。 俳人 正岡子規は雲が好きだったのか、「雲の日記」など、雲ついて書いた短文を、いくつか残しています。 …
「でいこの花が咲き 風を呼び 嵐が来た」というフレーズは、宮沢和史 作詞『島唄』の歌いだし。ご存じの方も多いと思いますが、沖縄にはこれに重なる「デイゴの花が見事に…
鈴木咲子/ Sakiko Suzuki
2024年8月31日 12:22
秋かぜにふさはしき名をまゐらせむそぞろ心の乱れ髪の君 与謝野鉄幹こちらはひとまず雨は上がり、遠くみやれば重たげな雲がたちこめており、夏とも秋ともいい得ぬ、ゆきあいの空をしています。それにしても、のろのろとした台風です。このけじめない季節感と、溺れるほどの湿気のせいで、いつにない二重の憂鬱を感じております。例年にない酷暑が続いたこの八月、来る日も来る日も、夏が過ぎ去ることばかり願って
2024年8月30日 09:28
昔は台風を「野分」と呼んだことは以前にも触れました。『源氏物語』の巻にも「野分」があり、『枕草子』には「野分のわきのまたの日こそ いみじうあはれにをかしけれ」とあり、このように台風は、昔から日本人には身近な現象だったようで、それは災害をもたらす悩ましい存在である一方、水の恵みを与え、過ぎたあとの風情などは、多くの詩歌からもみてとれます。『徒然草』には「野分の朝こそをかしけれ」とありました。
2024年8月29日 23:31
その種族はサボテンに近くあり、ゆえにエキゾチックな雰囲気を、感じるのかしら。風が吹けばゆれるように開き、近くに寄れば蓮の花のような気配、夢幻に浮かぶように百合のように匂い、けれど百合ほどの悪い匂いはない。菊のように黙るけれど、菊ほどの陰鬱もない。朝顔のように、あくる日への執着もない。ただ一夜、ただ一度だけ会いにくる。一夜だけの美人薄命、不思議な花です。今日もいちりんあなたにどうぞ。月下
2024年8月28日 09:23
今朝ほどニュースを見ていたら、この夏、都内の電車内で見つかった忘れ物の数が、過去最大数になったとのこと。中でも最も多いのは「ワイヤレスイヤホン」で、同じような小型電子機器の忘れ物が、軒並み増えているとのことでした。秋の季語に「忘れ扇」というのがあります。秋の気配を感じながらも、なお耐え難い残暑がつづく頃に扇は手放せず、しかし暑さが和らぐと、うっかり出先に忘れてきたり、持って出ることさえ忘れるよ
2024年8月27日 11:15
ほら一瞬、切符きりの音がきこえました。覚えてた。今日もいちりんあなたにどうぞ。カボチャ 花言葉「広大」Textフラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002https://www.hanaimo.com/
2024年8月26日 09:52
夏の始まりから秋の入り口まで咲き、その花期の長さから「百日紅」とも書くサルスベリ。枝先に、縮れたレースを集めたような小花が群がって咲きますが、この木の肌を指先でこすると、その枝の上の花が笑っているように動くので「くすぐりの木」という呼び名もあるそうです。つるんとした木肌のせいで、猿も木から滑り落ちる、とは「サルスベリ」という名の由来にもなっていますが、その木肌をこすると花が笑う、とは知りま
2024年8月25日 12:00
「爪で掻いて食べ、指先でつまんで裂いて食べ、手で割って食べ、その後は、口もあけずにモグモグと食べました。」まるで手紙のようなこの歌は、越後新津の大庄屋、桂誉正の妻が、病床に伏していた良寛にザクロを送った際、そのお礼として桂家に贈った歌のひとつとされます。良寛の好物と知ったうえで、七つものザクロを贈ってきた桂家のはからい。そんな戴きものがよっぽど嬉しかったのでしょう。良寛はほかにもこんな歌を
2024年8月24日 19:21
魔のなかの睡魔はやさし青葉木菟凌霄花のほたほたほたりほたえ死のうぜんの曼陀羅覆へわが柩-文挾夫佐恵凌霄花のほたほたほたり。この「ほたえる」とは、「ふざける、じゃれる」といった意味があるそうで、ここでは花びらの落ちかたをいっています。天に届くほどに咲き昇った花は、やがてほたりほたりと落ちながら、無邪気に生を終わらせる。という景色にうっすらと、作者自身の死生観が漂う三連句です。あらた
2024年8月23日 09:26
昨日は二十四節気の処暑。この場合の「処」は「収まる」という意味で使われており、したがって処暑は「暑さが収まるころ、落ち着くころ」という意味をもちます。今年の夏は例年以上に酷暑が続きましたが、立秋あたりからにわかに吹きぬく夕風を感じ取るようになりました。そのような気配の変化も、暦を知ってなければ、感じとることもなかった季節感だったのかもしれない。そんなことを思います。さて、九月の声が聞こえる
2024年8月22日 08:55
朝顔は、いけばなの出生と共に選ばれてきた花。いとも涼し気で清涼感ある佇まいは、朝に迎えるお客にもふさわしく、茶花として用いられることは、利休の逸話でも知られるところです。あっさりとした風情ではありますが、花の命は短い一日花。それ故、その美しさを一瞬のうちに見せるには、扱う作法にも決まりが多く、古くから伝花(いけばなにおいて、それぞれの流派によって定められた規則)としても重く位置付けられています
2024年8月21日 10:29
有島武郎の短編に『一房の葡萄』というのがあります。もともと好きな作家ではありますが、このちいさい物語にひろがる色彩豊かな描写と美しい筆致は、またも読んでひと目に好きになりました。ここには絵を描くことが好きな「僕」と、クラスメイトの西洋人ジム、そして僕が心を寄せる、若い女の先生が登場します。「僕」の通う学校は、横浜の山の手にありました。西洋人が多く住む町でもあり、通学路から見る景色は、建物も
2024年8月20日 11:19
「海の向う」は、山田耕作 作曲、北原白秋 作詞の日本の古い童謡です。ここに出てくる「さんごじゅ」とは「珊瑚樹」のこと。6~7月ごろに白い花を咲かせますが、真夏になると赤い実がつくことから、その実を珊瑚に見立ててこの名がついてます。主には南国に育つ木のようで、ゆえに九州出身の白秋にとっては、目に馴染みのある植物だったのかもしれませんね。さて、サンゴジュは別名「アワブキ」ともいうそうで、そ
2024年8月19日 19:39
よく見れば、私たちの「姓名」には実に多くの植物名が使われています。たとえば苗字(性)には、藤、桐、梅、菊、榎。名には、桜、桃、葵、百合、楓などです。きっと皆さんのまわりにも、ご家族、お友達、お仲間に、そうした素敵な名前の方は、いるのではないかしら。このような植物由来の名付けは、欧米諸国なら、著名人や文化人の名からも見てとれます。たとえばマーガレット、ローズマリー、ベンジャミン、アルダーとい
2024年8月18日 20:50
昼間は炎暑が続いているものの、夕暮れにもなるとやわらかな風を感じるようになりました。昼間の空はまだ夏だけど、夜の風には秋の気配。このように、夏のたたずまいを残しつつ秋の兆しがただよう夜のことを「夜の秋」といいます。秋の夜、ではなく、夜の秋、です。ほんのわずかな日の傾き、ひとすじ抜ける風にも、季節の移ろいを感じとり言葉においた、先人の感性。ちなみに「今朝の秋」という季語もあり、これは立秋
2024年8月17日 12:55
東京は台風一過の夏の空、青い空に白い雲、文字通りの夏空です。俳人 正岡子規は雲が好きだったのか、「雲の日記」など、雲ついて書いた短文を、いくつか残しています。春の雲は綿のように、夏の雲は岩のように、秋の雲は砂のように、冬の雲は鉛のように。夜明けの雲は流れるように、昼下がりの雲は湧くように、暮れゆく雲は、焼けるかのように。単純な言葉ですが、これだけでも、子規と空を見上げている気持ち
2024年8月16日 12:45
「でいこの花が咲き 風を呼び 嵐が来た」というフレーズは、宮沢和史 作詞『島唄』の歌いだし。ご存じの方も多いと思いますが、沖縄にはこれに重なる「デイゴの花が見事に咲くと、その年は台風の当たり年」という言い伝えがあるそうです。デイゴは沖縄の県花で、花の咲く時期は夏前です。深紅色をした燃えたつように美しい花が、3月から5月頃に咲きます。しかし、実際は毎年咲くわけではなく、年によって花の量も変わ