鈴木咲子/ Sakiko Suzuki

植物と文学 花屋の店主 https://www.hanaimo.com/

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最近の記事

悩みの花

東京にも、やっと六月らしい雨が降りました。朝から空から絶え間なく、しゃらしゃら注ぐ雨音が、たまの休日には心地よくありました。 六月は水無月(みなづき) 。昔から、田植えのはじまるこの時期は、あちこちで田に水を引くため水が無くなる。故の「水無し月」と呼ばれる説です。 とはいえ東京にいる限りは、近年の六月は雨も少ない空梅雨。容赦なく降り注ぐ日差しに、さっそく萎えた花もありました。なので今日の雨には、花木も安堵したんじゃないかしら。 一方こちらは、年々ながく厳しくなる夏を前に

    • つめくさの花

      幼少の頃に、クローバーの四つ葉を見つけに探した、思い出がある人は多いと思います。花はツメクサと呼ばれますが、この名の由来が「詰める草」だと知ったのは、大人になってからのことです。 それは江戸時代に、オランダからガラスの器具などが運ばれてくるとき、ガラスが壊れないようにと、今でいうパッキン代わりにこの枯れ草を詰めたのだそうで、まさに「詰める草」であったことから「ツメクサ」と名が付いたのだそう。 そんな使われ方をしていたくらいだから、当時は辺り一面に、ツメクサが自生していたの

      • グリーン グリーン

        ある日 パパとふたりで 語り合ったさ この世に生きる喜び そして 悲しみのことを グリーン グリーン 青空には 小鳥が歌い グリーン グリーン 丘の上には ララ 緑がもえる . その時 パパが言ったさ ぼくを胸に抱き つらく悲しい時にも ラララ 泣くんじゃないと グリーン グリーン 青空には そよ風ふいて グリーン グリーン 丘の上には ララ 緑がゆれる . ある朝 ぼくは目覚めて そして 知ったさ この世に つらい悲しいことが あ

        • 花筏(はないかだ)

          花筏蕾みぬ隈なき葉色の面に 中村草田男 「花筏(はないかだ)」というと、一般的には散った桜の花びらが、水面に浮かんだ様子をいいますが、この「花筏」という名がそのまままついた、植物があるのをご存じですか。ひょっとすると、山菜が好きな方や、山が身近な方、お茶をなさる方でしたら、お詳しいかもしれませんね。 花筏は、森の中など湿気の多い肥沃な土地に育つ植物で、4~6月ごろになると、葉の中央に淡緑色をした小さな小花を咲かせます。先にも触れましたように、若菜は山菜、花は茶花にも使われ

        マガジン

        • 花屋の向こう側
          11本

        記事

          六月のうた

          新しい詩を見つけました。六月のうた。 のり子さんがみた夕暮れはすみれ色をしてたらしい。 どこかに美しい村はないか どこかに美しい街はないか どこかに美しい人と人との力はないか ひとまず ここに美しい花ならあります。 今日もいちりんあなたにどうぞ。 タチアオイ 花言葉「恩恵」

          獅子に牡丹

          来てみれば獅子に牡丹のすまひかな  松尾芭蕉 初夏に大輪の花を咲かせる牡丹の花は「富貴」の象徴とされる花。百花の王とも言われます。中国では古代から様々な詩歌にもうたわれてきた花で、日本でも吉祥文様の中では特に格調が高く、着物や陶器、家具などの模様に好んで使われてきました。 歌舞伎に見る、鏡獅子や連獅子などの「石橋もの」の舞台には、必ず大輪の牡丹の花が飾られています。このように「獅子に牡丹」といえば、切っても切れない関係にあるのですが、実は怖いもの無しのように見える獅子にも

          愛 岡本太郎と敏子

          岡本太郎は云わずと知れた、『太陽の塔』『明日の神話』『こどもの樹』など、数かすの作品を残した日本の芸術家。実はその妻敏子も、とてもユーモアに溢れる情熱的な女性で、彼女の活躍や魅力は、過去に出版された書籍やメディアを追いかけるだけでも、うかがい知るには十分です。 敏子はもともと太郎の秘書で、太郎が「結婚」という形を望まなかったため「養女」になったという経緯があります。 それは、太郎の両親(一平とかの子)の、奇妙な結婚生活からくる嫌悪によるとも言われますが、他方では、太郎の作

          愛 岡本太郎と敏子

          薔薇を数えて

          1本「私にはあなただけ」 2本「この世界に2人だけ」 3本「愛しています」「告白」 4本「死ぬまで私の愛は変わりません」 5本「あなたに出会えて本当に嬉しい」 6本「あなたに夢中」 7本「ひそやかな愛」 8本「思いやりに感謝しています」 9本「いつも一緒にいてほしい」 10本「あなたは完璧」 11本「最愛の人」 12本「私と付き合ってください」 13本「永遠の友情」 14本「誇りに思う」 15本「ごめんなさい」 18本「誠実」 19本「忍耐と期

          君の友達

          友情といえば思い出す、キャロルキングの『You've got a friend(君の友達)』。その昔、海外にいる大切な友人が、立ち直れないほどの苦境におかれていることを知り、私はとっさの衝動で、日本とキャロルが大好きだった彼女に、この詩を大きな和紙に筆で手書きして、ドイツに送ったことがありました。 スペルが間違っていたかもしれず、その意味が伝わったかも解らなかったけれど、友達を想う衝動ってあんな感じと、今もこの曲を聴くたびに思い出します。 この曲はジェイムス・テイラーの曲

          レモンの花の咲く頃

          君よ知るや  レモンの花咲く国を 暗き葉かげに黄金色の オレンジが輝き 柔らかい風は  青空からそよ吹き ミルテの花は静かに  月桂樹は高くそびえる そこへ そこへ 私はあなたと行きたい            ゲーテ「ミニヨンの歌」 . . 明日の朝はレモンを浴びたい。 そんな気分。 レモンの花の咲く頃に 今日もいちりんあなたにどうぞ。 レモン 花言葉「心からの思慕」

          レモンの花の咲く頃

          桔梗色の空

          「色彩と光の文学」と呼ばれる宮澤賢治の作品の中には、色の描写がたいへん多く、とくに青色への思い入れが強いことで知られます。比喩の文学ともされる『銀河鉄道の夜』の中には、空の色を「桔梗色」と表現している箇所が、4つもありました。 「がらんとした桔梗いろの空」「きれいな桔梗いろの空」「桔梗いろの がらんとした空」「桔梗いろのつめたさうな天」。 東北の空を象徴する青天、透明な水、満天の星空。それらすべてに共通する青色は、彼の故郷である花巻の風土に生きた色。その色から、賢治は生命

          ”So it goes.”(そういうものだ)

          梅雨を待つ間の降ったり晴れたりよどんだり。そんな変わりやすい夏の天気は、いらぬ湿気も相まって、なおさら身体にこたえます。 そんな空模様をして「わからぬは夏の日和と人心」なんてことばもありました。人の心も虚ろなもので、変わりやすく解らないものだ、という意味です。 似たようなことばに「男心と秋の空」というのもありますね。男の女性に対する愛情なんて、移り気なものだということば。 これを「女心と」に置き換えると、男性に対する愛情に限らぬ移り気なことをいうそうです。 さて、今日

          ”So it goes.”(そういうものだ)

          あじさいの日

          今日6月6日はあじさいの日。六月の「6」がつく日に紫陽花を逆さに吊るすと、その紫陽花が魔除けとなり、不運から守ってくれるという言い伝えです。 紫陽花を和紙でくるんで紅白の水引で結んだものを、家の軒先などに逆さにして吊るすんだといい。 トイレに吊せば女性の病気を防ぐともいわれます。 この日になるたびに、そんなまじないを思い出し、きっと今年も彼女なら、吊るしてるわと思い出す友がいまして 花が咲くたび便りをくれて、そろそろ会いたいわね、なんていいながら、気づけばいつもこの季節

          夏椿(シャラノキ)

          夏の花で何が好きかと問われれば、私のいちばんは夏椿。別名を沙羅樹(シャラノキ)といいます。沙羅双樹(サラソウジュ)によく似た名前ですが、植物としては別種です。 沙羅双樹のほうは、仏教では三大聖樹のひとつとされています。「双樹」というのは、お釈迦様が入滅のときに、臥床の四方に二本ずつ並んだ沙羅の樹があったからだそうです。ただ日本では、本種の沙羅が育ちにくいために、代用として植えられた夏椿に沙羅樹(シャラノキ)と名付けられたとありました。 夏椿も花は白く、花の命は一日。ほかの

          夏椿(シャラノキ)

          夜想曲

          梅雨を待たずに、紫陽花の花が盛んに咲きだしました。昼間に見る紫陽花は、我も我もと楽しい弾みが花にあり、見ている心にも明るい調子が宿ります。 ところが夜に見つけると、何ともつかぬ淋しさが心の内を領してき、光を通さぬ銀器のように、がらんとした気持ちになるのです。悲しそうにも見えました。その影絵のような紫陽花は、ホイッスラーの「青と銀のノクターン」のようでした。 「ノクターン」といえばショパンを思い浮かべますが、ドビュッシーも、匂い立つほど美しいです。よかったら。今日もいちりん

          雨降り花

          その昔、その花を摘むと雨降るよと、大人に言われてびっくりし、花輪をつくって持ち帰ったことを、後悔した夜がありました。シロツメクサの花でした。 幸いに、翌朝に雨はなかったけれど、ああいう冗談を真に受けるところ、大人になった今も変わっておらず、たびたび人に笑われます。が、このままゆくしか無さそうです。 「雨降り花」と呼ばれる草花があります。「その花が咲くと雨が降る」、あるいは「その花を摘むと雨が降る」と言い伝えられている花です。 私が子どもの時分に知ったのは、シロツメクサで