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空想日記

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あなたの知る私ではない『誰か』から届くメッセージ。日記のようで、どうやら公開して欲しいみたいだったのでここで。ちっぽけな世界のちっぽけな私のここから、私の元に届く誰かからの日記。… もっと読む
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#日記

透きとおるようなあさ

透きとおるようなあさ

久しぶりに懐かしい顔と会ったから、心地よいアルコールの巡りに唆されたせいか、昨日は少しも眠ることが出来なかった。
濃紺のビロードが波打つそこに、めいっぱい宝石をぶちまけたみたいな夜空。

のみ込まれそうな、くろ。

それがだんだんと白けて遠くに行くような夜明け、くろとあおの狭間が過ぎれば、

透きとおるような、あさ。

夜が開ける直前の、空気がすきだ。
なんの音もしない、だれの気配もない。
そんな

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#11.タイム物置

#11.タイム物置

ウェバロキア山脈の地底から、古代生物の化石が発見されたらしい。
未知の巨大生物らしく、その謎の解明に世界中から注目が集まっているそうだ。

地の底に眠る古代生物。
なんてロマンティックな響きだろうか。

実は遥か昔に封印された邪竜で、掘り起こすことでその封印が解け、世界が滅亡の危機に陥る!
なんてシナリオだったらば面白いのに。

まあ、そんなことある訳がないので、今日は我が家の地下を掘り起こして見

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#12.永遠に彼の中で眠り続ける

#12.永遠に彼の中で眠り続ける

地下から発掘された巨大化石の正体は、未だ解明されていない。

とにかく巨大で、哺乳類と鳥類、さらには魚類の特徴まで備えているらしい。

なんでも、未知の生物らしく、古代に絶滅した新種の生き物らしい。

(絶滅した新種の生き物ってどう意味だろうか。)

本当に竜だったらどうしよう。

名前を公募で決めるらしく、世界中から集めているらしい。

こう言うのって普通、発見者が決めるものじゃなかったっけか?

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#13.今日という日に幕が落ちる。

#13.今日という日に幕が落ちる。

ここ最近、家に籠もっている時間が長かったので、今日は気分転換に外に出ることにした。

あさ、目が覚めてすぐに近所の公園へ向かう。太陽光を浴びてぽかぽかしながらのんびり歩く。気になる景色があればインスタントカメラのシャッターを押して、耳に残る音に気づけばレコーダーのスイッチをオンにする。

のんびりしつつも、アンテナはしっかり張り巡らせて歩いていく。

途中、思いついたワードを喋って録音したりして、

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霞のように消えてしまう。

霞のように消えてしまう。

いい事があった日は、必ず誰かに報告をする。
報告をする相手がいない日は、メモに書いてとっておく。
嬉しかったことや、楽しかったことはなるべく外に出して残しておく。

ひとは、幸せな瞬間ほど記憶に残りにくいそうだ。

だからすぐに余計な記憶に埋れてしまう。
でもこうやって物や他人、とにかく自分の記憶以外のところに残しておくと、嫌な感情や悲しみの波が押し寄せてきた時にマイナスの波と打ち消しあってくれる

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#14.すうっと染みて消えてった。

#14.すうっと染みて消えてった。

昨日、遅くまで本を読んでいたせいで、あさは少し寝坊してしまった。
急いで着替えて家を出て、電車を乗り継ぎ都心へと向かう。
予定の時間にはなんとか間に合いそうだ。

今日は、映画を観る予定なのだ。

映画館で観るのは久しぶりだ。
近頃はもっぱら配信サービスを使うことの方が多い。
これから観に行くのは単館上映のインディーズ映画だ。
知り合いが監督をした作品で、今日が封切りなのだそうだ。せっかくなので初

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#15.たくさんの知らない景色

#15.たくさんの知らない景色

手紙が届いた。
遠い海の向こう、外国で暮らしいてる叔父からの手紙だ。

なんて事はない、季節の挨拶と向こうの近況、こっちの様子はどうかなどが書いてあって、あとは写真が数枚。

叔父さんは外国を渡り歩き、世界中を旅して回っている。そして、その時撮った写真の中でもとびきりのを数枚送ってくれるのだ。

雲でできた高原や、海坊主とのツーショット、虹色の氷山、たくさんの知らない景色を教えてくれる。

小さい

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#16.めくるめく文字の海

#16.めくるめく文字の海

家から歩いて10分ほどした所に、図書館がある。
入場も貸し出しも無料なので、頻繁に利用している。
読みたい小説や漫画は大体電子書籍で買っているが、図鑑や絵本など、大きく見たいものやもっていると嵩張るものは図書館で借りることが多い。

赤茶っぽいレンガ造りの建物の中を通ると、図書館独特の本の香りが漂ってくる。

紙に染み付いた様々なニオイや、刷り立ての新書のインクのニオイが、創作意欲をかきたててくる

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#17.明日はどんな一日をすごそうか

#17.明日はどんな一日をすごそうか

日記を書いていると、自分には好きなものがたくさんあることに気づく。

夜更かししてしまった明け方の、濃紺と透き通る青、柔らかいクリーム色と鮮やかなオレンジのグラデーション。

起き抜けに嗅ぐ、挽きたてのコーヒー豆の芳ばしい香り。

裸足で芝生の上に立ったときの足裏の感触。
ひんやりしてらしっとりしてて、チクチクしてくすぐったい。

路地裏にあるボロい店の大学芋。

本のページをめくったときに紙が擦

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#18.プラナタリネスの空は広い。

#18.プラナタリネスの空は広い。

宇宙列車に乗って、アンドロメダ銀河に行こう。
永いながい旅路の途中、
迷ってしまわぬように、切符を無くさぬように。

窓にうつる景色を追って、ガラスの草原を走り抜けよう。
雲の海に潜って、虹の橋を渡り、星の川を通る。

オーロラのトンネルを抜けたらそこは、銀河だった。
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宇宙列車アンドロメダ銀河行き特急、通称はこぶねは、レトロな装いの寝台特急である。
一等級なんて高級室には泊まれない庶民

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#19.暗い宇宙にただひとり

#19.暗い宇宙にただひとり

快適な宇宙(そら)の旅。

大気圏の外は当たり前だけど空気がない。
空気がないから音がない。
ゴウンゴウンと響く空調の音を楽しみながら、めくるめく景色の移り変わりを楽しむ。

景色が星の海に差し代わった頃、突然、窓の外を大きな何かが横切った。

横切ったと実際に気づいたのは、なにかヒレのようなものが左から右へと通り過ぎて行ったからだ。
それが過ぎるまでは、ただ景色がなにも見えなくなっただけで、どう

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#20.沈むように、夢の中へ

#20.沈むように、夢の中へ

故郷の星を出発してから二日程の距離を移動して、惑星ポララのセントラル・ターミナルに到着した。
ここからゲートをつかってプラナタリネス、メロウ海岸地方へと向かう。

寝台列車と違ってゲートでの移動は一瞬だ。
惑星ポララのゲートは地下神殿のような場所にある。
行列に並んで一歩ずつゆっくり進むと、巨大な壁画の中央、十字型のゲートは淡い光を発していた。

順番に光に飲み込まれ、抜け出た先にあるのは草原の広

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月のウサギ

月のウサギ

つきのうさぎはひとりきり
大きなつきにひとりきり

うさぎはいつも泣いていた
ひとりさみしく泣いていた

宇宙をまるごとぜんぶひっくりかえして
めんたま皿にしたっても見つからない
ぼくより不幸なやつは見つからない
ぼくよりひとりは見つからない

ぼくだけがいつもひとりきり
だれもちっともみてくれやしない
だれもちっともきづいてくれやしない
だれかに好きになってほしいのに
だれもいないから叶わない

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#21.キラキラと輝くヴェールの下

#21.キラキラと輝くヴェールの下

子供の頃、好きだった童話がある。
ひとりぼっちを嘆いてばかりのつきのうさぎが、おなじくひとりぼっちの月のウサギの存在に気づき、嘆くのをやめる。そんなような話だ。

結局、つきのうさぎは最後まで月のウサギと出会う事もないし、誰かに何かを言われる訳でもない。
自分の流した涙でウサギに気づき、ウサギが自分と同じく孤独であると思い、自分だけがひとりじゃないと知り、自らの力で孤独から抜け出す。

最初から最

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