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#20.沈むように、夢の中へ

故郷の星を出発してから二日程の距離を移動して、惑星ポララのセントラル・ターミナルに到着した。
ここからゲートをつかってプラナタリネス、メロウ海岸地方へと向かう。

寝台列車と違ってゲートでの移動は一瞬だ。
惑星ポララのゲートは地下神殿のような場所にある。
行列に並んで一歩ずつゆっくり進むと、巨大な壁画の中央、十字型のゲートは淡い光を発していた。

順番に光に飲み込まれ、抜け出た先にあるのは草原の広場だ。

何回通っても、ゲートを抜ける感覚は不思議だ。言葉に出来ない浮遊感のようなものがある。
広場のすぐそばに駅があり、ここからまずは本日の宿を目指す。
荷物を預けて宿屋周辺の探索をするためだ。

各駅停車に乗り担当とこれからの予定を確認したり、車窓にうつる景色をカメラに収めたりする。

駅から歩いて5分ほど、ミントグリーン色した屋根の宿屋はすぐに見つかった。
フロントで先に荷物をあずけ、登録証のチェックと渡星税の支払いを済ませる。

プラナタリネスには既存生命体は存在しないが、暮らしていくことは十分に可能な環境であるので、観光惑星化計画の際、移住してきた他惑星の者たちが宿屋やレストランを経営しているそうだ。

宿屋周辺にどんな建物があるか、駅までの道のり、緊急時の集合場所などを2人で確認していく。
事前に決めていた場所も現地に来てから改めて確認しておけば、万が一はぐれたり通信機器が使えなくなった場合でも安心だ。

一頻り散策し、カメラやレコーダーに納めたい景色や音を撮ったあたりで、雰囲気の良さそうなカフェに立ち寄る。

ネルドリップ式のコーヒーが飲めるらしく、さっそくブレンドコーヒーを頼む。
長旅と散策の疲れを癒すため、シナモンロールも注文した。

深く濃い味わいのコーヒーと、甘いシナモンロールの組み合わせはピカイチだ。
デニッシュ生地にたっぷりのシナモンと砂糖。カロリー爆弾ではあるが、美味しいのだから仕方ない。

この店、なんとラテアートもあるそうで、ためしに担当が注文したところ、想像以上に可愛らしいキャラクターのラテアートが出てきてしまい、少し照れ臭そうにしていた。
味は良かったそうだ。

宿にもどり荷物を軽く整理し、ベッドの上で一息つく。

窓の外にはピンクとむらさきの夕空が広がっていてとても綺麗だ。

夕飯の話をする同室者の声が遠くに聞こえる。
明日行く場所は初めての所だ。
どんな世界に出会えるのだろうか。
踊り出したくなるほど胸がときめくのだけれど、ときめきよりも眠気マシマシである。

ふかふかとしたマットレスに沈むように、夢の中へ落ちていった。

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