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愛をする人

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30数年振りの再会。少年だった心にいつまでも残る後悔。似たような境遇で暮らしてきた2人が引き合うも、捨て去る事ができないもどかしさ。それが更に2人を包み込む。
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愛をする人 (5)

愛をする人 (5)

 亜希子との再会

 奥さんを、今住んでいる町の市民病院へ入院させた。
 奥さんの両親も同じ病気で亡くなっている。
 「遺伝だね、、、しょうがないね、、、後、頼んだわよ。」
 奥さんは落ち着いた声で、俺を牽制した。
 【実家にある家屋敷、田畑、山林、人に貸している土地、、、娘の名義にしておけ、、、、それしか無いってか。】
 娘に連絡した。
 「ママを入院させた。爺さんと婆さんと同じ病気だ。いつ迄か

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愛をする人 (4)

愛をする人 (4)

 18の春

 高校生活も、残すは卒業式のみとなる頃になっていた。クラスの同級生らは6割方就職し、3割が専門学校、1割が大学へ進学するらしい。
 俺は遠く離れた専門学校へ進む事にしていた。大学に行きたかったのだが、実家の経済事情と当人の学力面から熟慮の上、専門学校とした。
 新たなる希望への旅立ちなのだが、気掛かりが一つだけ残る。それは亜希子の事。
 何してやれていない。励ましてもいない。喜んでも

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愛をする人 (3)

愛をする人 (3)

 真夏の一夜が、あっという間に明けた30数年前。

 世界で一番暑い夏の朝、今から面接へ向かう亜希子に伴い俺は、大通りのバス停へと歩いた。
 まだ朝靄が漂っていそうな時間でも、すでに汗ばむ程気温は上がっている。
 その中を競輪場へと向かう大勢の男たちの流れに逆らう様に歩く二人。
 シャッターの閉まった商店前には、今日のレースの勝敗予想を記入したメモ紙を売るおじさんや、競輪新聞へ赤鉛筆で丸を記入し、

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愛をする人 (2)

愛をする人 (2)

 中学2年の頃、、、

 「良いよね。ギター、、、弾ける人、カッコイイよね。」
 本屋で偶然に会った亜希子からの一言で、俺は音楽教室へ通う事にした。週に一回、木曜日の6時30分からの30分。
 ショッピングモールの一角にその教室はあり、ギターを持っていない人には貸してくれる。
 何回か通った後、その音楽教室を主宰している楽器屋から購入すると、年一回の発表会へ参加できる特典が付いてくる。
 得なのか

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愛をする人 (1)

愛をする人 (1)

 愛をする人

 目の前にいる亜希子がどうしようもなく愛おしくなっている。
 再び会えるまでの想像中の亜希子、この腕の中にいる現実の亜希子、、、どちらも俺にとっては大切な存在。

 【最後に愛する人、、、亜希子。】

 すっかり冬模様となって街中が賑やかになってきた頃の、いつものホテルの一室。
 亜希子と30数年ぶりに再開し、その間ずっと抱き続けていた思いを打ち明け、今の関係になって1年半が経つ。

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