りょう 読書感想文

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記事一覧

読書感想文 『アルジャーノンに花束を』

【アルジャーノンに花束を】 ・ヒューゴー賞 ・ネビュラ賞 32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイが手術を受け知能が向上していく。 これだけを感想の冒頭に…

読書感想文 『煙鳥怪奇録 忌集落』

【煙鳥怪奇録 忌集落】 実話怪談にはフィクションの怪談とは違う怖さがある。 本作では会津地方の取材で語られる「土地遣い」が興味深い。 帯にある通り、忌み地を操る…

読書感想文 『君が手にするはずだった黄金について』

【君が手にするはずだった黄金について】 ・2024年本屋大賞第10位 これはフィクションだと頭では理解していても、本当はエッセイなのでは??と思ってしまった。むしろ、…

読書感想文 『斬首の森』

【斬首の森】 今回も期待を裏切らない読後の後味の悪さ。 ある異様な団体の研修合宿から逃げ出した先は斬首の森だった。果たして、より恐ろしいのは「研修」と「森」どち…

読書感想文 『レーエンデ国物語 夜明け前』 

【レーエンデ国物語 夜明け前】 2024年本屋大賞 第5位 レーエンデ国物語の第4巻 異母兄妹のレオナルドとルクレツィア。間違いなくふたりは目指すところは同じく「レ…

読書感想文『成瀬は信じた道をいく』

【成瀬は信じた道をいく】 「何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」という成瀬の言葉が何よりも成瀬感あった。そして、そんなの分かっていると思っても…

読書感想文『成瀬は天下を取りにいく』

【成瀬は天下を取りにいく】 ・2024年本屋大賞受賞作 個性が突き抜けている主人公は魅力的である。 ただし、成瀬あかりは天下を取りにいける魅力の持ち主である。この本…

読書感想文『スピン/spin第7号』

【スピン/spin 第7号】 表紙に光り輝く「スピン」は、美箔ワタナベさんの箔押し。 写真だけでは伝えきれない、凹凸感、艶感、表紙の和紙のようなザラザラ感との対比はい…

読書感想文 『ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ』

【ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ】 今回は扉子栞子智恵子、3人3世代それぞれの17歳の物語。 鎌倉文庫という貸本屋と、夏目漱石の名著から3人が17歳の時の物語がひとつに繋…

読書感想文 『存在のすべてを』

【存在のすべてを】 ・2024年本屋大賞ノミネート 物語は『二児同時誘拐』から幕を開ける。 新聞記者の男と、誘拐された児童と接点のある女の2視点から徐々に真実が明か…

読書感想文 『ガニメデの優しい巨人』

【ガニメデの優しい巨人】 『星を継ぐもの』シリーズ第2部 2500年前のガニメアン宇宙船が太陽系に帰還し、人間と邂逅することで、第1部で謎に包まれていたところが解明…

読書感想文 『ツバキ文具店』

【ツバキ文具店】 ・2017年本屋大賞第4位 ぽっぽちゃんは文具店を営みながら代筆業をしている。 彼女のもとには老若男女問わず様々な人から代筆依頼が舞い込んでくる。ぽ…

読書感想文 『星を継ぐもの』

【星を継ぐもの】 ・第12回星雲賞海外長編部門受賞 SF×宇宙 星をつぐものを読むまで、この組み合わせは「未来」を想起させる概念しか、私は持ち合わせていなかった。し…

読書感想文 『残月記』

【残月記】 ・2022年本屋大賞ノミネート ・吉川英治文学新人賞 ・日本SF大賞 「そして月がふりかえる」 「月景石」 「残月記」 の3遍 3編とも、月が絡む2つの世界をダ…

読書感想文 『店長がバカすぎて』

【店長がバカすぎて】 •2020年本屋大賞ノミネート作 目次には「〜がバカすぎて」しかなく、読んでみるとたしかにバカすぎる人ばかりでだった(主人公、谷原京子目線で)…

読書感想文 『旅のラゴス』

【旅のラゴス】 序盤、SFな香り漂う章に引き寄せられ、最後まで味わってみると、主人公ラゴスの旅する姿勢に魅せられている小説であった。 本作はタイトル通り、ラゴスと…

読書感想文 『アルジャーノンに花束を』

読書感想文 『アルジャーノンに花束を』

【アルジャーノンに花束を】

・ヒューゴー賞
・ネビュラ賞

32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイが手術を受け知能が向上していく。

これだけを感想の冒頭に持ってくると、頭が良くなってハッピーエンドだけな話。しかし、急激な変化に翻弄されるチャーリイをみているとフィクションだと分かっていても胸が締め付けられる思いであった。

人間が年を経て成長していく、もとい知能が上がっていくのは自然な

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読書感想文 『煙鳥怪奇録 忌集落』

読書感想文 『煙鳥怪奇録 忌集落』

【煙鳥怪奇録 忌集落】

実話怪談にはフィクションの怪談とは違う怖さがある。

本作では会津地方の取材で語られる「土地遣い」が興味深い。

帯にある通り、忌み地を操るという怪談であるが、そもそもが忌み地を操ろうとすること自体が相当なタブーを犯している感があり怖い。そんなことしたら確実に自分自身が呪われそうである。いや、もしかしたら、操ろうとすること自体が既に、もう呪われている結果なのかもしれない。

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読書感想文 『君が手にするはずだった黄金について』

読書感想文 『君が手にするはずだった黄金について』

【君が手にするはずだった黄金について】

・2024年本屋大賞第10位

これはフィクションだと頭では理解していても、本当はエッセイなのでは??と思ってしまった。むしろ、「最後の受賞エッセイだけがフィクションです。」と言われても納得してしまいそう。間違いないのは、この小説の内容もリアルの捉え方についても、判断するのは自分自身であることかな。

どの短編もシチュエーションが小説としてリアルというより

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読書感想文 『斬首の森』

読書感想文 『斬首の森』

【斬首の森】

今回も期待を裏切らない読後の後味の悪さ。

ある異様な団体の研修合宿から逃げ出した先は斬首の森だった。果たして、より恐ろしいのは「研修」と「森」どちらだっだろう。

森から命がけで抜け出してきた女の証言によって、徐々に斬首の森の恐ろしさが浮き彫りなっていくドキドキというかワクワクというか、どんな森なのかということとどうやってこの女が生きて脱出できたのかということが明らかになっていく

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読書感想文 『レーエンデ国物語 夜明け前』 

読書感想文 『レーエンデ国物語 夜明け前』 

【レーエンデ国物語 夜明け前】

2024年本屋大賞 第5位 レーエンデ国物語の第4巻

異母兄妹のレオナルドとルクレツィア。間違いなくふたりは目指すところは同じく「レーエンデの自由」であるが、それを成し遂げるための正義は真逆と言ってよい方法をとる。
もし正義に色があるのなら、ふたりの正義は真逆の色をしているのだろう。だけど、相反する色であろうと、ふたりが描くのは「レーエンデの自由」なのである。ど

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読書感想文『成瀬は信じた道をいく』

読書感想文『成瀬は信じた道をいく』

【成瀬は信じた道をいく】

「何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」という成瀬の言葉が何よりも成瀬感あった。そして、そんなの分かっていると思っても、やるのは簡単ではないからこそ、成瀬の強さがカッコよい。

前作の「成瀬は天下を取りにいく」よりも直截的に、成瀬が周囲に及ぼす影響力が分かりやすく感じた続編であったと思う。

『やめたいクレーマー』の章では、普通の人であれば受け取り方が難

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読書感想文『成瀬は天下を取りにいく』

読書感想文『成瀬は天下を取りにいく』

【成瀬は天下を取りにいく】

・2024年本屋大賞受賞作

個性が突き抜けている主人公は魅力的である。
ただし、成瀬あかりは天下を取りにいける魅力の持ち主である。この本を読んだことで、200年に及ぶであろう成瀬あかり史のほんの一時を見届けることができた。なぜ200年かは読んだ人なら分かるだろう。

性格を表現する言葉の一つに「真っ直ぐな性格」がある。成瀬あかりを表すなら、「真っ直ぐしか知らない性格

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読書感想文『スピン/spin第7号』

読書感想文『スピン/spin第7号』

【スピン/spin 第7号】

表紙に光り輝く「スピン」は、美箔ワタナベさんの箔押し。
写真だけでは伝えきれない、凹凸感、艶感、表紙の和紙のようなザラザラ感との対比はいつまでも見飽きない。触り飽きない。

インパクトが強かったのは、中村文則さんの「彼の左手は蛇」
蛇だけでも字面から禍々しさが伝わってくるのに、男の心の歪み方がまた悍ましかった。

恩田陸さんの「そして金魚鉢の溢れ出す午後に、」では「

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読書感想文 『ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ』

読書感想文 『ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ』

【ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ】

今回は扉子栞子智恵子、3人3世代それぞれの17歳の物語。

鎌倉文庫という貸本屋と、夏目漱石の名著から3人が17歳の時の物語がひとつに繋がっていく。このシリーズを読み続けてきた人からすると結構豪華な一冊かも。

特に、智恵子や栞子は基本的に成人での物語だったので、過去編は新鮮であった。3人は、鋭い観察眼をしているところや本に対する好奇心とかは非常に似ているのだが(

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読書感想文 『存在のすべてを』

読書感想文 『存在のすべてを』

【存在のすべてを】

・2024年本屋大賞ノミネート

物語は『二児同時誘拐』から幕を開ける。

新聞記者の男と、誘拐された児童と接点のある女の2視点から徐々に真実が明かされていくのだが、この物語は事件の真相に迫る、ただの誘拐犯罪小説では到底収まりきらない。

男は誘拐事件の視点から、女は絵画の視点からそれぞれ物語は進んでいく。読者からすればこの2つがどのように繋がる或いは交差するのかを楽しみなが

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読書感想文 『ガニメデの優しい巨人』

読書感想文 『ガニメデの優しい巨人』

【ガニメデの優しい巨人】

『星を継ぐもの』シリーズ第2部

2500年前のガニメアン宇宙船が太陽系に帰還し、人間と邂逅することで、第1部で謎に包まれていたところが解明されていく第2部。

タイトルにある通り、ガニメデの巨人(ガニメアン)は優しい異星人だった。と言うより、優しすぎて人間の暴力性がよく分かった。作中でもガニメアンは地球を恐れている。しかし、ハント、ダンチェッカーたちがガニメアンが以前

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読書感想文 『ツバキ文具店』

読書感想文 『ツバキ文具店』

【ツバキ文具店】

・2017年本屋大賞第4位

ぽっぽちゃんは文具店を営みながら代筆業をしている。
彼女のもとには老若男女問わず様々な人から代筆依頼が舞い込んでくる。ぽっぽちゃんが依頼に対してどのように代筆したのかは読んでのお楽しみ。そこには日常に溢れている、人工的な文字にはない感動が待ち受ける。

手紙の文字には、いくらフォントを換えようと電子の文字には決して真似できない、書き手(依頼主)の表

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読書感想文 『星を継ぐもの』

読書感想文 『星を継ぐもの』

【星を継ぐもの】

・第12回星雲賞海外長編部門受賞

SF×宇宙

星をつぐものを読むまで、この組み合わせは「未来」を想起させる概念しか、私は持ち合わせていなかった。しかし、これを読んだことで、SF×宇宙に「過去」という面白さを概念に加えることができた。そして、SF×ミステリに「つまらない」は存在しないのではないかと思った。

帯に書いてある通り《月面で発見された5万年前の死体はどこからやってき

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読書感想文 『残月記』

読書感想文 『残月記』

【残月記】

・2022年本屋大賞ノミネート
・吉川英治文学新人賞
・日本SF大賞

「そして月がふりかえる」
「月景石」
「残月記」
の3遍

3編とも、月が絡む2つの世界をダークな世界観と圧倒的な描写量で表現しており、終始溺れ続けている様な生々しい息苦しさを感じた。

地球から月を見上げると必ず裏側があるものだが、本作は月の裏側の様なダークな世界観と、その中でこそ夢見ずにはいられない、生きるこ

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読書感想文 『店長がバカすぎて』

読書感想文 『店長がバカすぎて』

【店長がバカすぎて】

•2020年本屋大賞ノミネート作

目次には「〜がバカすぎて」しかなく、読んでみるとたしかにバカすぎる人ばかりでだった(主人公、谷原京子目線で)。
しかし、これほどまでみんながみんな、不器用で真っ直ぐすぎるバカは愛せずにはいられない。

だから、主人公には悪いけれど、みんなこのままみんなバカで楽しい話をずっと読んでいたいと思ってしまった。こんな事言っては主人公に半笑いで怒ら

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読書感想文 『旅のラゴス』

読書感想文 『旅のラゴス』

【旅のラゴス】

序盤、SFな香り漂う章に引き寄せられ、最後まで味わってみると、主人公ラゴスの旅する姿勢に魅せられている小説であった。

本作はタイトル通り、ラゴスという人物が旅をしていく物語である。
他の場所に移動する(ワープする?)「転移」であったり、壁を通り抜ける芸人が出てきたりと、序盤は旅でもあり、SF要素もありの展開。そんな導入から、気づくとラゴスの「旅」にどっぷりと浸っている。

中盤

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