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読書感想文 『旅のラゴス』

【旅のラゴス】


序盤、SFな香り漂う章に引き寄せられ、最後まで味わってみると、主人公ラゴスの旅する姿勢に魅せられている小説であった。



本作はタイトル通り、ラゴスという人物が旅をしていく物語である。
他の場所に移動する(ワープする?)「転移」であったり、壁を通り抜ける芸人が出てきたりと、序盤は旅でもあり、SF要素もありの展開。そんな導入から、気づくとラゴスの「旅」にどっぷりと浸っている。


中盤から終盤にかけてが特に、本作における注目点であるように思う。まず、どの旅先においてもラゴスはその集団において慕われる人物として描かれている。別段、他の人物よりすごく優れているようには見えないのだが(容姿についてはただの想像)、別れの際には常に引き留められている。それだけラゴスという人物が、集団に馴染みやすく受け入れられやすい人物だからこそ、旅を長くできる(二度ほど奴隷にはなってたけど)要因のように思う。
そして、引き留められても必ず次へ旅を始めるところも、その集団でのラゴスの価値を引き立たせている。


また、ラゴスという人物は、知識や地位を私利私欲に用いるのではなく、必要な時に必要なだけ発揮していることがよくわかる。旅において、(勿論、旅だけではないけど)この姿勢こそがある種の正解のように感じた。これがもし、常時自分の力を最大限に行使していたとしたら、それこそ旅先の人間はラゴスを手放さなかっただろう。




もし私が旅をする機会が訪れたら、少なからずラゴスの旅を参考にするだろう。ただし、ラゴスのように引き留められる人物になれる自信も、引き留められても旅立てる自信もどちらも持ち合わせてからの旅にしたいものだ、、、



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