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『葬儀はあなたのためにある』GRAVETOKYO

3944人。
一日のうちに、日本ではこれだけの人が亡くなっている。
(数字は厚生労働省『人口動態統計 令和3年』の死亡数から算出したもの)

死は人間にとって当たり前の出来事だ。
どんな人であろうと死は隣に存在し、前兆がないことだって少なくない。
故に、人は死を隠したがる。
できるだけ考えないようにして、必要に迫られてから死へ向き合う。

「終活」という言葉が浸透して久しいが、自分の死を積極的に捉えようとする人は多くない。
遺される人に迷惑をかけないため。
面倒な手続きを発生させないため。
自分の死を、自分本位で考えようとはしない。
だからこそ、あえて聞いてみたい。

あなたはどんな最期を迎え、どうやって葬られたいですか?

誰だって想像したことはあるだろう。
自分が死ぬ瞬間も、自分の葬儀をこっそり見ている自分の姿も。
そのときあなたは、自分の死を自分本位に考えているはずだ。

そうした自分らしい死に、「GRAVETOKYO」は広がりを与えてくれる。
葬儀にはデザインの余地があるようだ。

「この人らしかったね、いい人生だったね」

カラフルで華やかな棺桶。
「GRAVETOKYO」で販売されている「可愛い棺桶」は、暗い葬儀のイメージを壊すような活力を持っている。

こうした棺桶を含む葬儀具は、布施美佳子さんの手によって製作されたもの。
棺桶や骨壺、遺影などのデザインを通して、その人の「自分らしい最期」を表現する。
お客さんからその人らしさを聞き出し、モチーフや色として葬儀具に反映。
オーダーメイドで製作される棺桶は、一人一人の人生を表すように個性的だ。

常識に囚われない、自由で可愛い棺桶。
そこには布施さんが抱く、死と葬儀に対する違和感が関係している。

秋田県出身だという布施さん。
実は、秋田県は何十年も連続で自殺率が高い地域。
布施さんも若いころから何人も知人を亡くしており、葬儀に出向く機会も多かったという。

布施さんが葬儀の場で目にしたのは、かつて生きていたその人との差異だった。

「こういう人じゃないのに、というショックを受けました。日常を知っているが故に、葬儀とのギャップが大きかったんです。アバンギャルドな活動もしていて、こんな真っ白な棺桶に入る人じゃない。人生のストーリーみたいなものが見たかったんです」

その人の死は誰のものか。
遺された家族のものというのが主流だが、果たして本当にそうなのか。

参列した友人たちに「この人らしかったね、いい人生だったね」と思われたい。
彩り豊かな棺は、最期まで自分らしくありたいという思いが込められている。

その人らしさがあふれる、遺影のデコレーション。

葬儀は人生のラストチャンス。

葬儀を取り巻く状況は、コロナ渦を経て変化してきている。
棺桶と死装束を通販サイトで購入し、自家用車で火葬場へと運ぶ。
「DIY葬」と呼ばれるこの手法は10年ほど前から存在し、年々比率も上昇傾向にある。
コロナ渦では密集を回避するために用いられた。
葬儀の形式は簡素化され、逆にいえばそれだけ自由になった。

一方、葬儀業界ではまだまだ選択肢の幅が狭い。
メーカー側もアイデアを出して展示会などをしているが、新しいデザインのものはなかなか採用されない。
顧客側も死が迫るまで考えないため、有意義な選択ができないまま取引が成立してしまう。

布施さんは死に対して、「HAPPY ENDING」という概念を掲げている。

死は自分らしさを表現できる最後の機会。
一人一人で違うのだから、弔いの表現だって違うはず。
それぞれの人にあった棺桶があれば、生きているときの気持ちも変化する。

「例えば壁紙が変わると自分も気持ちが変わって、気持ちが変わると行動が変わりますよね。そういうパーソナルな空間を変えていくことで、毎日楽しくイキイキできる。人生の最後に入る棺桶がウキウキできるデザインなら、人生の最後ももっと楽しくなる。そういう共通項があると思っています。」

選びたいエンディングを選んでもらうため、選択肢に広がりを持たせる。
遺された側にも選びたいものを選んで送り出せたと思ってほしい。
後悔のない葬儀をしてほしい、と布施さんは語る。

「最終目標としては、キャラクターものの葬儀具を提供することですね。小さいお子さんを亡くされた方を始め、キャラクターものの葬儀具を探してる人はたくさんいます。死者数の割合では高齢者が多いので市場としては成立しませんが、キャラクターの存在価値は人に寄りそうことなので、それを世界中に届けられるようになりたいです」


販売しているオリジナルエンディングボックス(骨壺)の1つ。
お洒落な骨壺も、「HAPPY ENDING」の意識から。
かつての同僚から「インテリアに馴染む骨壺がない」と相談されたことがきっかけ。
骨壺の定義に囚われない、新しい弔いの形。

死を体感し、生に回帰する。

「GRAVETOKYO」では棺桶などの葬儀具販売をメインとする一方で、葬儀に関連するイベントもサービスとして提供している。
入棺体験や生前葬を実施し、生きたまま棺に入る機会を設けている。

葬儀で使われることもあるが、購入動機のうち一番多いのは生前葬らしい。
なお実際に葬儀で使用する際は「ご遺体にエンバーミングしてゆっくり葬儀をしましょう」と提案しているそうだ。

入棺体験イベントでの展示。

布施さん曰く、人生には3回褒められる機会があるという。
生まれたとき、結婚するとき。そして最後は、死ぬとき。
このうち死だけは、どうしたって体感できない。

現状、死は遠いものになりつつある。
少子化の影響があるにもかかわらず、2022年には子どもの自殺者数が史上最多となった。
遠ざけて怖いものになったがために、死が憧れや逃げ場になっている。
布施さんはそう捉えている。

もし死にたいと思ったら、入棺体験で死を体験してほしい。
積極的にイベントを開催している裏側には、そんな意図もあるようだ。

「死にたいって考えるときって、思考に支配されてる。心から感じてるようで、頭で考えてるだけなんです。棺桶に入ると本当に自分が死んだ気持ちで考えられるので、心が死にたくないって訴えてくる。死にたいと言っている人が、入棺体験をすると泣いてこっちに帰ってきて、『元気になりました』って言ってくれる。ああ、やっててよかったって思いますね」

死を意識することで本当の自分にも向き合える。
可愛い棺桶は、生きている人間にとっても意味がある。

「原宿で展示をしたときに、大学生の子も来たんですよ。みんな『自己肯定感が上がった』って言うんです。『綺麗だよ、可愛いよって周りの友達が褒めてくれて、こんなの人生で初めて』って」

生前葬は自分で作れる、自分を超褒めてもらえる機会。
自己肯定感が欲しいときにぜひ来てほしい、と布施さんはインタビューを締めくくった。

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執筆者: 廣瀬慎

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