【書評】『モデルナ:万年赤字企業が、世界を変えるまで』を読む。ワクチンを語る前に歴史を知ろう。
ロッシーです。
「いまさらワクチンの話か」と思った人もいるでしょう。
しかし、いまだからこそ、コロナ禍を振り返ることが大事なのではないかと思います。
皆さんは、「モデルナ」のことは誰もが知っているでしょう。「ああ、ファイザーとモデルナの二種類のワクチンだよね。」くらいには。
でも、会社としての「モデルナ」がどのように生まれ、そしてどのようにチャンスをつかみ、成長してきたのか、その歴史を知っているでしょうか?
ほとんどの人は知らないと思います。それを知るには本書はピッタリです。
※ちなみに、モデルナという社名は、
修飾されたmRNA ➡ modified mRNA ➡ mod-RNA ➡ moderna からできたとのことです。
コロナワクチンが世の中に出てきたとき、私たちは、それを「打つか打たないか」という視点のみで捉えていたように思います。
そこに欠けていたのは、歴史という縦軸の視点ではないでしょうか。
mRNAという技術が、約30年前から検討が始まっていたという歴史があったこと。
モデルナというベンチャー企業が2010年に設立されてから、コロナワクチン開発というチャンスをつかみ、成功するまでの道のりには、さまざまな荒波があったこと。
そういったヒストリーに、当時私は興味がありませんでしたし、興味をもつという視点すらありませんでした。
そういう歴史を知っていたら、ワクチンに対してまた違った捉え方ができたのかもしれません。
もはや、コロナの感染者数を毎日確認するような日々ではなくなりましたが、いまからでも歴史という視点からワクチンについて捉えなおすことが大事なのではないかと思うのです。
本書の原題は、
"The Messenger: Moderna, the Vaccine, and the Business Gamble
That Changed the World”
です。
”Business Gamble"という言葉のニュアンスが、邦訳タイトルではうまく伝わらないと思いますが、モデルナというベンチャー企業がやってきたことは、まさにギャンブルだったわけです。
そして、彼らだけでなく、米国政府、医療関係者など、さまざまなステークホルダーがコロナに立ち向かうために一致団結したからこそ、約1年間でワクチンを開発して承認して製造することができました。
私たちは「あ、ワクチンできたんだ。」と簡単に思うかもしれませんが、これほどまでに短期間でワクチンができるというのは、「ありえない」ほどのスピードです。
そういうことを本書を読んで知ることができました。興味のある方はぜひ読んでみてください。
※ワクチン開発の成果だけを賛美するのではなく、ワクチンによる健康被害等についても、きちんとしたデータをもとに検証していく必要があるでしょう。そのあたりは今後の課題だと思います。
さて、ワクチンについては、その是非を含め、さまざまな言説があります。中には陰謀論めいたものもありますし、それは今でも続いています。
それらの言説のうち、何を信じるのかは個人の自由ですのでここでは立ち入りません。
ただ、ひとことで「自由」といっても、その行使の仕方には個人によって差が出ます。
将棋に例えるなら、全くのド素人が自由に駒を動かすのと、藤井聡太が自由に駒を動かすのとでは、駒の働きには天と地ほどの差が出るでしょう。
ワクチンもそれと同じです。
きちんとしたサイエンスの知識を有している人と、全くそういう知識がなく他人がネットで言うことをそのまま鵜呑みにする人とでは、ワクチンに対して何を信じるのかは相当に異なるはずです。
そして、何を信じるのかが異なれば、おのずと行動も異なります。
ある人はワクチンを打ちますし、ある人は打ちません。またある人は、ワクチンに反対します。
その行動のどれもが自由ですが、その質には大きな差があると思います。
「知は力なり」といいますが、きちんと何かを知ったうえで、自由を行使する。
そういう人が増えるといいなと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
Thank you for reading!