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ショートステイ

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クリエイター・リンク集「バスを待つ間に触れられるものを探しています」
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#現代詩

詩「ワンルーム•パパ」

先日あなたは
遠くに行きました
戻る気配はないようです

買ったことない
野菜の調理法
誤って
歯に挟まったり

そんな僕のような
あやまちを
母さんと出会う前
あなたもしたでしょ

"ひとり"と"ひとり"になれたから
話をしたい
「エヴァ、終わりましたね。」

やり切れない思いを
見せ合いながら 笑いながら

眉毛の太い
足の短い
僕によく似た男の子

【詩】CROW

【詩】CROW

深淵はもう飽きました
表層に憧れてます
うらぶれた地質学に小さな納屋を建て
夕陽のことを考えて、戒名と共に暮らす
昨日の事を今日のように話す家畜と
生活の匂いのしない長さと
大小の容れ物に仕舞われた作物と
舌先(のようなもの)と

戻った時にはひとりだった
今度は耐えられるだろう
レンズの裏側に捕らえられた展望のうち
一体どれだけのものを私は相続出来るだろう?
どれだけの足が私の後を追うだろう?

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透明なまま
電車に乗り込む
空いている車内なら
誰かにバレることなく
網棚に寝そべっていられる
長い長い
通勤だからそれがいい
そのうち
満員列車になって
人々の蒸気が立ち込める
もやもやが
透ける体と心を侵してくる
そろそろ降りて
色付き人間に戻らなくては
みなさん
おはようございます

【詩】凱旋門

【詩】凱旋門

もう忘れたかな?
駅までの道が暗くて少し怖かったこと
もう忘れたかな?
ルーズリーフの穴の数が微妙に合わなかったこと
あの角のタコスサンドは閉店間際は大盛りで
もう忘れたかな?
君は大勝利を手にあの門を潜る
堂々と胸を張って
胸を張って

もう忘れたかな?
「ありがとう」と「ごめんね」を毎日繰り返して
もう忘れたかな?
いつまでも好きなままじゃいけないって気付いて
ハイドパークの白鳥に指を噛まれて

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再度出会う

再度出会う

もう誰も追わない、誰とも知り合わない。
密かに感じていた。
私の心の音と貴方の心の色は此処から見る夜空の向こうの電波塔と繋がって、微弱な電波から流れ出るシンパシーは私の心を占拠しているように感じられていた。
私の心が誰かの空を呼ぶ度、不気味に浮遊する物体は私の胸元から入り込み私の身体に呪いの様なものをかけていく。

静寂の中、月を見上げると、さっき迄其処に浮かんでいた筈の月は消えていた。
公園の隅

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詩)始まる yasuhirom

詩)始まる yasuhirom

朝4:30
窓から流れ込む冷気で目が覚める
タオルケットの中に体をまるめると
秋の虫が鳴いている

目覚ましだろうか
スマホから流れる独特の音楽が
かすかに聞こえてくる

新聞配達のバイクの音も朝の始まりを告げている

うだるような暑さの昨日は過ぎ去り
新しい朝がもう始まっている

【詩】STAY HOME

【詩】STAY HOME

飛行機雲が稜線に交わる
伝えたいもの手に入れたからSTAY HOME
まだ出て行かないよこの星から

目も眩む深い谷を渡る
木霊に何度も呼び掛けて確かめていたい私の本当の住所
それでも明日が来てしまうなんて考えたくなくて
動きたくないんだこの橋から

ペンと紙切れひっ掴んで駆け出した
芽生えた気持ち逃がすためのSTAY HOME
まだ出て行かないよ
燻ってる炎、消えるまで見届けたいから

指先に宿

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月まで気球を

わたしという気球は
案外
運良く
すぅと浮き続けている

だいたいのルートに
山もなく
乱気流もない

たまには
のどかな田舎町に降りて
野犬に追い回されたり
偽物の商売を斡旋されてり
そんなことは
あったけれど
平時は
すんなり飛んでいる

澄みわたる空
輝く空
景色は三次元に素敵だ

ふと
宇宙まで
高く昇る
派手な気球を見上げる

感心する
うらやましく思う

実は
わたしは
いつか
月に上

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見つからないなら

スリッパが
勝手にいなくなったこと
許してやってほしい

猫は
死期を悟ると
どこかへ出て行って
人知れず
ひっそりと息を引き取る
というけれど
スリッパも
きっと
そんなふうなのだと思うよ

片方だけ
いなくなったのにも
なにか
特別な
理由があるんだよ

ほら
もう片方を見て
とても
辛そうにしてるじゃない
まるで
何か知っていて
それは
決して口外できない
というような風で

だから
もしか

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水たまり飛んだ

水たまりが飛んでいる
ひらひらと
ぶよぶよと
海月が
波に
揺さぶられるように
風に
揺蕩っている

そうっと近づいて
つかまえようとすれば
蝶のように翻って
蜻蛉のように逃げた

わたしの
悲しそうな瞳の色が
水たまりに映り
波を打つ

それでもっと
哀しくなって
へたり込んでしまう

不意に
頬が冷んやりして
顔を上げると
水たまりが
目の前を飛んでいる

もう
つかまえるのはやめて
ぼんやり

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詩「地球外炭酸飲料」

となりの県にも
    いけない俺は

地方の一間で
   宇宙にいくよ

    ほらだって

      理科室の匂いだし

          キンピカだし

    湧き上がる
      一粒一粒が
        小惑星の
         地球外炭酸飲料

  こいつを飲み干したんならば、
        宇宙にいけない
           わけないだろ

  ツーツー...

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パラパラ・チャーハン

パラパラ・チャーハン

チャーハン食べて生きようよ
意気揚揚と生きようよ
チャーハン・パラパラ・パラダイス
走攻守揃った紹興酒
御念のこもった五年物
寝ても冷めても美味しいよ

チャーハン食べて生きようよ
死ぬまで食べて生きようよ
蓮華の上に咲くチャーハン
白胡椒の蓋、故障中
五目チャーハンごもっとも
覚めて冷まして4000年

チャーハン食べて生きようよ
チャーハン食べて終わろうよ
痛め悼まれ炒めれば
この世は茶番の半

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0:34

ゆっくり浮かんでいく

円やかに舌の先で解けていくような

高揚感が病みつき

AMに変わった瞬間

月のしっぽが足の小指に届くような

持て余し

うとうと

充電が切れそうだ

もう少し音楽を聴いてたいよ

だって瞑ってしまったら

また1からやり直しでしょう?

万能細胞

万能細胞

大きなシャボン玉に
園児たちが映り
弾けると
合成洗剤のオレンジの香りが
すぅと胸の中へ沁み渡った

知らない他人の子どもたちの
ふわふわした笑顔で
愛に似た情愛みたいな感情が
沸き
また湧いて
小さな哀しみは霞んだ

毎日毎日の
わたしの心の運動は
どこへ行くんだろうか

今日の想いが
万能細胞になればいい
そうして
いつか
誰かの傷を癒しますように