中林肋骨

熱い道路の真ん中で、 鼻水垂らして横たわり、 輪郭のある冷たい違和感、 焦げた魚の煙に…

中林肋骨

熱い道路の真ん中で、 鼻水垂らして横たわり、 輪郭のある冷たい違和感、 焦げた魚の煙にのせて。 と、亀。

最近の記事

優しい沈黙

「…」 また沈黙だ…どうしよう…。 初対面やまだ慣れていない人との会話。 私はしばしば沈黙する。 何か話したいし、何か質問だってしたい。 でも、人見知りであまり人と話すのが得意でない私はなかなか言葉が出てこないのだ。 これを聞いたら失礼じゃないかな。 今の話のここをもっと詳しく聞いてもいいかな。 私のあの話したいけど、迷惑じゃないかな。 そんなことを考えていると、私は沈黙し、静かな時間を作ってしまう。 こんな時、ひょっとしたら、眉間に皺を寄せて難しい顔をしているかもしれ

    • 「休みの日は何してますか?」

      初対面の人や慣れていない人との会話。 人見知りな私はとてもしんどい。 何を話せばいいか分からなかったら、とりあえず天気の話をしろ。とよく言われている。 「今日は雨ですね…」 「明日は雨でしょうかね…」 もはや、天気の話は「私はあなたと何を話せばいいのか分からなくなってます」と同義である。 相手も人見知りだとこれは困難を極める。 「今日は雨ですね…」 「あ…そうですよね、ごめんなさい…」 私は神でもないのに、雨であることを詫びてしまう。 天照大神以外、謝罪してはいけない謝罪

      • 火曜日

        私は今、どこにいるのだろうか。 よく、どこにいるのか分からなくなることがある。 仕事中に怒りを込めて、力強くExcelのセルを見つめると、3Dのように浮かび上がってきた。 その時私は、ずっと刑務所の中にいたことを初めて知った。 月曜日から動けない私に火曜日が迎えに来てくれるはずはなかった。 そんな都合のいい話がある訳ない。 火曜日の方から来てくれるなんて。 そんなことを考えていると、一瞬火曜日が見えた気がした。 気のせいだろう。 ところで私はなんの罪を犯したのだったか

        • 月曜日

          日曜の朝、目が覚めると、冷気がなかった。 冬が冬眠に入ったようだった。 嗚呼、そうだ、死のうと思った。 とりあえず外に出てみる。 桜共は皆飛び降りた後だった。 どこを探しても私がいない。 そりゃそうだ。 この世に私なんていないのだから。 とりあえず家に帰ってみた。 薄らと腐敗の匂いが漂っていた。 どこもかしこも私だった。 そりゃそうだ。 この世に私なんていないのだから。 外は暗くなる。 中は明るくなる。 なぜに人間はそんなにも光を浴びたいのか。 私は人間ではないので、

        優しい沈黙

          錦糸町の神々1

          私は一年に一度、錦糸町に行く。 いつも必ずとても寒い。 錦糸町はいつ行っても人が多い。 治安が悪いと言われがちだが、今のところ私は錦糸町で危険な目にあったことはない。 植え込みと歩道の間にあるガードレールの小鳥がかわいい。 小鳥が「ここは安全な街ですよ」と言っているようだ。 ガードレールの小鳥に見入って歩いていると、本来小鳥がいるべき場所に穴の開いたガードレールが出現した。 私、は、錦糸町で危険な目にあったことはない。 今年もまた冷え切った空の半分がグレーな錦糸町を歩

          錦糸町の神々1

          白い毛とおっとっと

          「フグの毒ってフグ自身が持ってるんじゃなくて、摂食から毒を蓄えるんだぜ。」 田中のいつものやつが始まった。 田中は、Twitterだかなんだかで仕入れた病院食位薄味な情報を鼻息荒く専門家気取りに毎日発表してくれる。 「じゃあさ、なんでフグは死なねーの?」 はーとか、そーとか、へーとか、言って済ませればいいものを鈴木は掘り下げ出した。 「それはさ…例えば、俺がお前に「口元から生えてくる白い毛は幸運の毛だから抜かない!とかマジこえーし引くし、キモいわー」って毒吐いたら、お前は

          白い毛とおっとっと

          夏祭り

          金魚すくいで逃げ回る金魚を救ってやりたいと思っただけなんだ。 綿菓子を又貸しするのは犯罪だろ? ヨーヨーの動きのどこがヨーヨーなんだよ。 焼きそばは蕎麦なんかじゃないから気をつけろ。 なんなら風船も船じゃないから気をつけろよ。 ベビーカステラに至ってはベビーでもカステラでもない。 風呂上がりに着るのが浴衣なのではないか? それを脱がすために存在するものが浴衣なのではないか? 花火が打ち上がる。 この嘘に塗れた世界のど真ん中を夏祭りが行く。 煙が空を覆う。 神様ごめんなさい、

          10円玉を拾わなかった罪

          汚い10円玉が落ちていたんだ。 私は見て見ぬふりをしたんだ。 疲れ切っていたんだ。 同じ匂いがしてきたんだ。 頭痛がしたんだ。 吐き気がしたんだ。 埃にまみれた光る気力もない平等院鳳凰堂。 便所の後の靴底よりも落ちぶれて。 私を睨む。 私だけを睨む。 体調不良に感謝した。 もっともっと不良になってくれ。 いっそ家出してくれ。 2度と戻って来ないでくれ。 EXILEに憧れてくれ。 クレカくれ。 あ。 頭痛なんて幻覚だった。 吐き気なんて妄想だった。 ただ臭いだけだった。

          10円玉を拾わなかった罪

          世界はそれを愛と呼ぶんだぜ!

          差別を無くそう 個性を尊重しよう マイノリティを受け入れよう しかし 悪い奴は排除しよう 悪い思想は潰そう 悪い意見は炎上させよう 謝罪しろ 謝罪しろ 謝罪しろ したか?したのか? ダメだダメだ。 その謝罪なんだよ。 謝罪の謝罪しろ。 謝罪の謝罪の謝罪しろ。 謝罪の謝罪の謝罪の謝罪しろ。 しろ? くろだ。 グレーは黒だ。 綺麗な水に一滴でも汚水を入れたら汚水だろ。 謝罪するくらいなら居なくなれ。 居なくなれば許されると思うなよ。 許してもらうために謝罪するなよ。 謝

          世界はそれを愛と呼ぶんだぜ!

          おはなしのくに「桃太郎」

          心地良い眠りについて考え込むといつの間にか不眠症になっていた。 もはや眠れないではなくて眠らないことを選択しているとどんぶらこどんぶらこと桃が流れてきたので爺さんと婆さんと桃太郎は川の字になって寝ることにした。 桃から出てきた桃太郎は少しベタつきながら「25度」とのたまうので、はて今日は夏日かと思ったが鬼暑いから猛暑日やろと突っ込んだところで、桃太郎を汗拭きシートでサラサラにした。 いやちゃうねん糖度の話やねん、と桃太郎が言ったとか言わなかったとか。 「それなら我、鬼暑いの

          おはなしのくに「桃太郎」

          膀胱ジャブ

          指先でする仕事を昔は芸術と呼んだ。 今や無味乾燥な二進法に支配された指共は指としてのプライドを捨てている。 音楽のないリズミカルな音たちは灰色から灰色へ、灰と言っても煙すら立たない焼却の彼方、齧りかけのリンゴ如きに己の虚栄心をのせて。 もし「生」を作り出す生ける者の、肉体以外が死んでいても、それは生なのか。 湿度があるということは、今は、目先としては、生きてるってことなのに、それに殺されそうになりながら、乾燥した熱を帯びた季節は、肉体の死を簡単にもたらす割に、私の心や膀

          膀胱ジャブ

          マジで就寝する5秒前

          あと5秒で寝息になる 寸前の出来事と思って 見逃してやって欲しい なんで今日は こんなに良い匂いなんだろう そうだ 毛布を洗ったからだ なんで今日は こんなに寒いんだろう そうだ 毛布を洗ったからだ なんで今日は こんなに旨味が強いんだろう そうだ 昆布を洗ったからだ なんで今日は こんなにこの一球が今シーズンを占うんだろう そうだ 掛布を洗ったからだ なんで今日は こんなに京王線がなんでも停まるんだろう そうだ 調布を洗ったからだ なんで今日は 探し物が見つから

          マジで就寝する5秒前

          独り

          私は闇に亀を添える 今夜も乾いた亀を添える 亀が湿度を帯びる頃には 陽が昇らない朝が責めてくる 北枕が南を向いたら つま先だけは隠せなかった 亀を水槽に戻すと それはそれは嫌がり でも どこかでちゃんと諦めて 頭を跨げて寝息を立てた

          チェリーな私

          「チェリーボーイ」 中1の私はそれがとても恥ずかしい言葉だと、自分の頬で知るのだった。 ーーーーーーーーーー 今日は大好きなスピッツがMステに出る、とテレビブロスに書いてあったので、夜の8時直前から10チャンに合わせ、テレビの前でノートとペンを用意して、微動だにせず待ち構えていた。 チャーララララー、チャラララララー… この世の階段を降りる全てをミュージシャンにするB'zの松本さんのギターが流れ出す。 私はもうドキドキだ。 スピッツが新曲と共に降りてくる。 草野マサム

          チェリーな私

          私は上を見ないので、美しい月を知りません。 だけど私は下を見ているので、直向きな蟻を踏みません。 なんで、それじゃ、駄目なのですか? #月 #夜 #想い #心

          私は上を見ないので、美しい月を知りません。 だけど私は下を見ているので、直向きな蟻を踏みません。 なんで、それじゃ、駄目なのですか? #月 #夜 #想い #心

          矛盾を潜った良識は

          花も咲かないうんこ 指を咥えるドラえもん 間違えてゴールした脱兎 此岸に馳せる閻魔 四角く禿げた円形脱毛が 頭の中に百九個貯まったら 其れを人は出家と呼ぶ

          矛盾を潜った良識は