月まで気球を

わたしという気球は
案外
運良く
すぅと浮き続けている

だいたいのルートに
山もなく
乱気流もない

たまには
のどかな田舎町に降りて
野犬に追い回されたり
偽物の商売を斡旋されてり
そんなことは
あったけれど
平時は
すんなり飛んでいる

澄みわたる空
輝く空
景色は三次元に素敵だ

ふと
宇宙まで
高く昇る
派手な気球を見上げる

感心する
うらやましく思う

実は
わたしは
いつか
月に上ろうと思っていて
でも
誰にも内緒だから
見つからないよう
籠のなかで
せっせと
宇宙服を編んでいる

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