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あばら家のわが家も今日は銀のいえ
静かな年始を過ごすようになって時間ができたこともあり、かつて賑やかに迎えた新年をともに過ごした身内をゆっくりと思いだすことが多い。祖父がせっせと正月料理を準備していたことや、お年玉袋を大量に用意して頭を抱えている母や、曾祖母の家での餅つきや、なんとなくいつもより浮かれている幼い私たちのことや……。
二人いるはずの祖母は、私が生まれたときにはすでに二人ともいなかった。母方の祖母は、母が10歳のとき
旅の記録 ①(②があるかは未定……)
2022年9月7日(水)の忘備録
台風一過の晴れた日。佐賀市内のビジネスホテルを出て路線バスに乗る。30分ほどで着いたそこは、母方の祖父の故郷だ。元村役場前でバスを降りると、役場の裏にある郷土資料館の小さな分室に寄り、町史誌を閲覧してこの地の歴史をざっとたどった。
ここに来るのは40数年ぶり。子どもの頃に誰かの法事があったとき以来だ。祖父と母と私と弟。鹿児島本線に乗り、鳥栖で長崎本線に乗り換え
黒い服を着てWomen in black展へ
8月25日に代官山のアートフロントギャラリーへエカテリーナ・ムロムツェワの「Women in black」展を見にいった。前の週には新潟の展示も見たし、どちらも見逃さずにすんでよかった。アートの批評など私にはまったくできないので、これから書くことは、なんでもすぐに忘れてしまう自分のためのメモだけれど、ロシアの女性たちのことをいつも見ている身だから、少しは他の人と違った感想ではあるかもしれない。現代
もっとみる映画『戦争と女の顔』
ようやく見に行った。見損ねなくてよかった。あらすじや批評はすでにたくさん出ていると思うから、自分のための忘備録として直後の感想を残しておこうと思う。必ず見るつもりでいたので、他の人の評価はあまりしっかりとは読まないでいた。でも概ね良い映画だと言われていることは知っている。
その上であえて言うと――とても良い映画だった。動く絵画のような映像は、独ソ戦直後のレニングラードがかくも美しいのかと思えるほ
弾丸より花を(2022/05/09の記録)
これは5月11日付けでフェミニスト反戦レジスタンスのSNSに掲載された、5月9日の活動の報告のひとつ。とても小さな小説を読んでいるような気持ちになった。
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体調のせいで大掛かりなアクションに出ることができなかった、そんな力がなくって。
それに、人びとが自国のネオナチのかぎ十字で、記憶の日を傷つけるところを見る力もなかった。私は中庭へ出て、二時間しっかりと、固くなった芝生を小さなスコッ
イリーナ・ジェレプキナ ハリコフからのメッセージ
旧ソ連圏のフェミニズム・ジェンダー研究の第一人者で、ハリコフ・ジェンダー研究センターの創設者でもあるイリーナ・ジェレプキナは、現在もハリコフの自宅で戦禍を過ごしている。これは、彼女が『ボストン・レビュー』に寄稿したテキストの訳です。ちなみにこれは私の実力不足ゆえに、ロシア語からの重訳になっています。英語が得意な方は、オリジナルで読まれることをおすすめします。オリジナル:https://boston
もっとみる【マニフェスト】フェミニスト反戦レジスタンス
*ロシアのフェミニストたちへの結集を呼びかける反戦レジスタンスの立ち上げが宣言され、マニフェストが公開されたので以下に訳出しました。責任者はジェンダー研究者でジャーナリストでもあるエッラ・ロスマン、その他のメンバーは匿名となっています。以下、全文です。
2月24日、モスクワ時間の午前5時半頃、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンは、「非ナチ化」と「非武装化」のためにウクライナ領土内での「特殊作戦」