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記事集・H

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私は蓮實重彥(蓮實重彦ではなく)の文章にうながされて書くことがよくあります。そうやって書いた連載記事や緩やかにつながる記事を集めました。
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#ジル・ドゥルーズ

名づける

名づける

 前回に引きつづき、今回も、蓮實重彥の『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』の読書感想文です。

 引用にさいしては、蓮實重彥著『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』(河出文庫)を使用していますが、この著作は講談社文芸文庫でも読めます。

*あとで名づける、とりあえず名づける

 蓮實重彥の『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』を読んでいると、「名づける」、「命名する」、「名」という言葉が目につきます。目につく箇所

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読みやすさについて

読みやすさについて

 今回は、「読みにくさについて」に引き続き、執筆中の記事の一部を独立させて、先に投稿することにします。これは体調が良くないための措置で、全体を一気に書こうとして無理をしないようにとの配慮からです。

 現在執筆している記事のタイトル(仮題)は「sense・意味・方向、order・順序・序列、space・空間・空白」です。前回の「読みにくさについて」では「sense・意味・方向、order・秩序・序

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読みにくさについて

読みにくさについて

 ある記事を書こうとしていて、ある部分が長くなってきたので、そこだけを記事にすることにしました。以前なら多少長くなっても強引に記事にしたのですが、このところ体力が落ちているので、無理をせずに別の記事にします。

文章の特徴
 蓮實重彥の文章を読んでいて感じる特徴はいくつかありますが、なかでも私が目を惹かれるのは以下の四つです。

1)音声化できない文章の要素である約物の使用。

⇒「立体、平面、空

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まばらにまだらに『杳子』を読む(08)

まばらにまだらに『杳子』を読む(08)


見て見て
『杳子』の「一」を読んでいると、目につくことがあります。くり返されているし、反復されているのです。

 たとえば「見」「目」「感」という文字が頻出します。驚くほど多いのです。まるで「見て見て」と言っているように感じられるほどです。

 そう感じたら、ちゃんと見てやらなければなりません。言葉は健気だし、いとおしいものです。

     *

「見」「目」「感」を見ていて気がつくことがあり

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アンチ・アンチ

アンチ・アンチ

 蓮實先生と言えば、また思いだすことがあります。

 そう言われてみると、そうなのです。

 Empirisme et subjectivité、経験論と主体性、Nietzsche et la philosophie、ニーチェと哲学、Proust et les signes、プルーストとシーニュ、 le froid et le cruel、マゾッホとサド、冷淡なものと残酷なもの、原子と分身、Dif

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宙吊りにする、着地させない

宙吊りにする、着地させない

 この記事では、蓮實重彦による二つの断片的な文章を読んでみます。

第一部:宙吊りにする◆「と」、傍点

 まず、一文だけ紹介します。

「理論と実践」、「真実と虚偽」、「問題と解決」

 以上の文字列が挙げられたあとに、次の一センテンスを含む段落が、『批評 あるいは仮死の祭典』にあります。

 数でいうと、センテンスが1、文字が211、「、」が8、「。」が1です。テーマは、並置の接続詞「と」と言

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