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初期のビジネスプランの採点ポイントと日常から課題を切り取る力

先日、あるビジネスコンテストの審査に向けて、審査員間で採点基準の合意形成の場がありました。各審査員の様々なポリシーがあり、それらのポリシーは尊重しつつ、主催者の方から頂いた選抜者の方の活躍のイメージに準拠しようという話になりました。

正直なところ、審査員だってその審査結果に対して、100%成功や失敗を保証できるのかと言われたら不可能であると思います。だとしたら、何をもって応援をしたくなるのか、少しばかり自問自答した内容を今日はここで書かせて頂きたいと思います。


あるべき論と未来の断絶

審査に限らず様々なイベント、書籍などで、「経営者像」「起業家のマインドセット」等が定義され、語られる場は多いと思います。「こうあるべきだ」と。

多くの場合は、誰かの実体験のエッセンスを抜き出して、それが転用されるべきであるという考え方に基づいているように感じます。これらは「語るは易し、成すは難し」だと思います。

「画一的な個性」×「固有の状態・環境」でしか再現性のないという事を、「能力」という言葉に置き換え強いているように感じるのです。ある一時点での成功の要素を抜き出して、同じ環境が整う事は本当にやってくるのでしょうか。

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こうあるべきだという論調は、イベントや出版物等のコンテンツとして長い間支えられるものこそ、実践からいずれ遠のくのではないかと感じます。コンテンツを受取る側もリテラシーが必要なのです。「現在に当てはめる際に何を取捨選択、カスタマイズすればよいか」アップデートする事で新たな拠り所を、生み出す必要がある事を理解してほしいのです。決して取扱い説明書のように未来が約束された手法では無いのです。


定量分析と未来の断絶

もう一つが、データ分析から導かれた事業プランです。こちらも未来と断絶した手法であると思います。過去の統計的な数値から、将来を予測する手法であると思います。

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一見すると予測の精度は、n数が増えれば高まるという論理は理解が出来ます。しかし、私たちはこの連続性に対する不安を、ここ半年で大きく味わったのではないでしょうか。

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このようなデータ至上主義は、ある種の安定主義の一つであると考えられます。人の思考が「過去から変わらなければ良いな」という願望に基づいて組み立てられていると考えられます。物理学の放物線の計算式のようなものは説明がつきます。重力加速度の値が変わる事は今のところ起きえないからです。一方で、自然科学的手法をビジネスに転用する事は正しいのでしょうか。

この手法は、既存ビジネスにおいて上図の行動結果の数値がなんらか変化した際に、「兆しの発見」「大局観の把握」の目的においては大いに有効です。これまでの延長にあって欲しかった未来が、無くなった事を知らせ、ビジネスモデルに転換の必要性が出た事を示すサインです。急に売上が下がった、お客様が離れた…等の異常値の発見に役立つと思います。

一方で事業を立ち上げる際に、その先の「顧客の行動」を全て、定量的データから説明できるものではないのです。


未来への意思を持つ方の支持

私の持論にはなりますが、最も端的であり分かりやすいと感じるのが、「未来への意思を持つ方の支持」を受けた事実が書かれている事業提案書です。

「未来の意思を持つ方」=「将来、お客様となり得る候補」の方です。その方が、現時点で未来に向けて叶えたい事を知り、その手助けになりうる事が書かれたプランに魅力を感じます。

丁寧な対話の中から抽出するという事

丁寧な対話から抽出され、起案者の方が独自で知られた「ご要望」が記載されている事です。誰でもニュースサイトを眺めていれば分かるような「ご要望」とは粒度が違い、極めて新鮮な印象を受け、手触り感を感じるものです。

例えば、withコロナの渦中にある私たちにとって、ニュースを見れば、誰もが「リモートワークの効率性に不安」という事は容易に理解が出来ます。だからリモートワークの為のITツールを作って提供したいと考えたとします。既に顕在化しているこの市場は、会社のドメイン(本業)がそこにある会社であれば良いですが、今から素人の起業家が参入する余地は乏しいと考えられます。

先の図でいえば「リモートワークの効率性に不安があると多くの人が言った」というのはメディアがまとめた顧客の行動結果の情報です。起業家・起案者の方々が着目すべきは、「なぜ、不安と言っているのか」「不安と思っているのに解決できていない、或いは不安とどう対峙しようとしているのか」という因果関係にある顧客の想いです。

そうしたものは常々、顧客の日常の中の細部に現れます。ある人は、「チャット型の社内連絡に対応に慣れず、画面上でポップアップが表示される度に、手を止めてしまう」と言いました。ある人は「chromeのタブをついつい開きすぎてしまいがちで、タブに目が行くと別の仕事を思い出して注意力が散漫になる」と答えました。一見すると、個々人の極めて個別な要望にみえます。しかし、これらの不安の深層を起点に考えたアイディアが、芯を捉えた解決策に昇華されていく事を期待しています。本当に困っている方の顔を一人でも知っているという事は、初めのお客様の顔が見えている事に限りなく近いのです。


日常から切り取る力をあいみょんに学ぶ

「では、どのようにしたらいいのか?」とのお声を頂きます。真剣にビジネスを学び実践に移ろうとされている方には、拍子抜けされてしまうのですが、常々「日常生活を真剣に生きて下さい」とお伝えします。


日常生活の中で過ぎていく情報

実は、私たちは多くの情報が、視界には入りながらも通り過ぎていっているのです。街を歩く際、少し気にするだけで多くの事に気が付きます。その気づきを大切にするという事が「日常生活を真剣に生きる」の真意です。

例えば、とある渋谷区の交差点の角にある銀行の入り口に、雑然と止められている自転車が気になりました。都内でも有数の地価を誇るこのエリアです。近隣から自転車で店舗にお越しになるお客様はこの支店において、どういう意味をもつお客様でしょうか。もし私がこの銀行の支店に勤めている担当者であれば、窓口で接するだけでなく、来店からご帰宅までの一連の「窓口に行く体験」を伺おうとするかもしれません。新たな悩みや日々窓口からでは見えなかったお客様の心のハードルに気づき、解決に乗り出していくでしょう。

これは、昼食を食べている時、エレベータに乗り合わせた人、学校の落とし物箱…様々な時間、人、場所や物がトリガになり考えを巡らせてヒントを得られるのです。目に映りながらも通り過ぎてしまっている日常の風景に、如何にしてそれに注意を向けるか。日々工夫しながら、私は生活をしています。


あいみょんに学ぶ・相手の気持ちを描写する技術

ここまで書いて、「なんだニーズの発見の話か」と思われたかと思います。そうです「ニーズ」です。往々にして、初期の事業提案書の中で描かれる「ニーズ」は抽象的で、その抽象さによって「規模」を表現したものをよく拝見します。

私が一番知りたいのは「抽象化」された「大きな虚像」より、「小さいけども魅力ある事実」が知りたいのです。それを書く事はとても、骨の折れる作業です。

少々軽薄に聞こえる「ニーズ」を、抽象化せずに正しく引き出すのは、ことのほか難しいのです。例えば、皆さんはご家族の「ニーズ」を正しくご存じですか?こんなに身近にいらっしゃるのに意見がすれ違う経験はありませんか?近しい間柄の方でも難しいのに、赤の他人の「ニーズ」を突き止める事はそんなに簡単であるはずがありません。

ここでは、相手の「気持ちを知る」というプロセスが必要になります。しかし、これは単純にインタビューで「どんな気持ちですか?」と聞くだけでは捉えきれません。

相手の方が、日ごろどのような行動をされていて、そこにどのような意味を持たせていて、どのような解決手段のレパートリーの中から、どのようなポリシーで今の行動を選ばれたのか。その一連の中で、本質的な悩みを抽出できれば、それが「どなたかに解決を手伝ってほしい課題」なのです。

これを知るには、相手の方の行動をよく観察する眼と、少しばかりの「良い問い」を立てるスキルが必要だと思います。

私はこの観察力で、見習うべきは歌手のシンガーソングライターのあいみょんさんだと思います。

この動画の「君はロックを聴かない」という楽曲では、思春期の男の子と思われる「僕」が、心惹かれたお相手に自分の好きなロックを聴いてほしいという気持ちが描かれています。おそらく、「僕は」それほど多くのジャンルの音楽を知らず、一方で今の自分がいくつかの恋を乗り越える支えになってきた大切な音楽が、「お相手」にどのように受け取ってもらえるか心配しているという歌詞です。

歌詞の中の「僕」にとって、「ロック」はただの音楽のジャンルではなく、自分という個性を説明する手段であり、「僕」は他に代替する手段を持ち合わせていない今、相手が思うように受け取ってもらえるか「不確実性」を持ち合わせた状態を切り取っているのです。

こんなワンシーンを切り取る事が出来れば、事業企画の初期の「ニーズ」はきっと見つけられると思います。その先の事業化・スケールまで拡張していくのは、また別のスキルだと私は考えています。

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