見出し画像

絵本『桃太郎』の可能性

――絵本「桃太郎」の三本の柱は、「共生」「多様性」「体験」です。


人生は物語。
どうも横山黎です。

大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。

今回は「絵本『桃太郎』の可能性」というテーマで話していこうと思います。


📚『桃太郎』を見つめ直す

僕は自分の卒業研究の題材を「桃太郎」にするくらいに、「桃太郎」が好きです。そして、可能性を感じています。だから、近々「桃太郎」についてめちゃくちゃしゃべる「BOOK TALK LIVE “桃太郎”」を開催するし、今後の僕のテーマは「桃太郎」になるだろうし、「桃太郎」を中心に作家活動をしていくと思います。 その一環として、分かりやすいことをしたいなと思っていて、絵本『桃太郎』をつくろうと考えています。

「桃太郎」を研究していくと、興味深い事実が分かりました。「桃太郎」の物語が、時代によって変化しているということです。

「桃太郎」は室町時代頃に成立したといわれているんですが、その頃の桃太郎は「経済的な幸福」がテーマでした。次の江戸時代では、パロディが増えたことからも分かるように、「面白さ」や「滑稽さ」がテーマでした。明治時代では、日本を強い国にしようという政府の意図があったので、「国に従うこと」「強い国造り」がテーマでした。労働運動が盛んだった頃には「労働」がテーマだったし、戦争の色が濃くなってきた頃は「戦争」や「勝利」がテーマでした。こんな風に、時代の思想や風潮、価値観が、「桃太郎」の物語には反映されてきたんです。その時代に英雄とされる姿勢を、桃太郎に重ねてきたというわけですね。



さて、今の時代はどうでしょう。どんな姿勢が、英雄とされるに値するでしょうか。異質の相手を排除するヒーローでしょうか。

従来の勧善懲悪の物語は、今の時代には合わない気がします。多様化が謳われる時代ですから、違いを受け入れて、異質の相手と共に生きていく「共生」の物語こそ、今にふさわしいはず。そう思うのです。

もちろん悪いことをしてはいけないという教えを子どもたちに伝えるのは大事だけれども、より重視すべきは、相手を許すこと、認めること、共に生きていこうと手を取り合うこと。そんなメッセージを孕む「桃太郎」をつくりたいなと思うのです。

以前から少しずつ考えてはいるんですが、現時点での方向性を整理しておこうと思います。


📚「共生」と「多様性」と「体験」

絵本「桃太郎」の三本の柱は、「共生」「多様性」「体験」です。ひとつずつ説明していきますね。

まず、「共生」ですが、前節でも語ってきたように、今の時代にふさわしいのは「勧善懲悪」の物語ではなく「共生」の物語。鬼を退治するのではなくて、鬼と仲良くなる展開を描きます。

また、これは作品からは離れますが、「桃太郎」をテーマに活動していくとなったときに、いろんな人をたくさん巻き込んでひとつのことを成し遂げるイベントや企画を開催するつもりでもあります。「共生」が大事といっておきながら、僕が「共生」を追求していなくてどうするんだって話ですから、自分からやってみせることにします。


次に、「多様性」についてです。この言葉が使われるようになってからはだいぶ時間が経っているような気がします。10年、20年以上前と比較するとだいぶいろんな価値観、嗜好が認められる世の中になりましたが、まだまだ始まったばかり。より多くの人が住みやすい世界をつくろうとする動きは絶えず続いていくのではないでしょうか。

異質の存在と共に生きる物語を展開する絵本『桃太郎』は、「多様性」もひとつのテーマといえます。

しかし、ここで課題が生まれました。「多様性」を投げかける絵本『桃太郎』が、たとえば桃太郎が陣羽織を羽織っていたり、鬼は姿かたちを決めてしまっては本末転倒です。絵本とはいえ、物語に絵を添えるということは「これが正解です」と価値観や思想を決定してしまうものだから好ましくないんですよね。

そこで閃いたのが、「絵のない絵本」にしちゃえばいいじゃんってこと。文章だけが記されていて、絵はない。文章も平易にして、できる限り客観的なものにする。その文章からどんな絵を浮かべるのかは読者次第。読者の数だけ、絵が存在する。そういうコンセプトの本にすれば、「多様性」を謳う絵本として申し分ないといえると思ったのです。

「絵のない絵本」は別の可能性を追求することもできます。3本目の柱である「体験」を実現できるのです。


読者の数だけ絵が生まれる「絵のない絵本」という発想は良いんですが、もっとステキな本に仕上げることができないかと考えました。そこで思い付いたのが、「読者が絵を描く絵本」にしようってアイデアでした。

左のページに文章があって、右のページは白紙。右のページには本来絵があるはずですが、「絵のない絵本」なので絵が描かれていません。そこで、読者自身が、文章を読んで思い浮かんだ絵を描けるようにすれば、読者自らの手で絵本『桃太郎』を完成させるという体験を実現することができるのです。

その体験こそ、絵本『桃太郎』の価値につながると考えていて、最後に読者が完成させる絵本という打ち出し方は面白そうだなと思いました。実際に、「塗り絵」は立派なコンテンツだし、今回のアイデアに類似した「描き込める絵本」というコンテンツもあります。落書きできる絵本って感じ。


📚絵本『桃太郎』の可能性

「共生」の物語を、「多様性」を重視するために限定的な絵を描かず、文章だけで表現する絵本『桃太郎』は、読者が絵を描くという「体験」を提供します。世界に1冊だけの絵本が生まれるわけです。

誰だって子どもの頃は、上手い下手とかそっちのけで、絵を描くことが好きだったじゃないですか。塗り絵とか、落書きとか、とにかく自由に何かを描きたくて仕方がなかったんです。絵本『桃太郎』は、その子どもの欲求を満たす絵本になり得ると思っていて、自分で絵を描いて完成させた絵本にはきっと愛着が湧くし、後々振り返ってみると「ナニコレ!」と懐かしめる思い出としての価値も生まれるんですよね。

さらに、絵本『桃太郎』の表紙とか、中身の絵とか、「君はどんな絵を描いたの?」「犬がチワワじゃん」「虹色の鬼っておもしろいね」みたいな風に、絵本をきっかけにコミュニケーションが生まれる未来も見える。そんな瞬間を、いつか目の当たりにできたらいいな。


絵本『桃太郎』は、元々こじんまりと少しつずつ広めていくつもりで、マス向けに出版する予定ではなかったんですが、このコンセプトは多くの人に分かりやすく響くものであるし、「共生」とか「多様性」を売りにするんだから、より多くの人を巻き込んだ方が面白いと思うようになりました。つまり、流通に乗せる商業出版に挑戦するということ。

もちろんリスクはあるし、大変なこともたくさんあると思いますが、「桃太郎」の物語を刷新するためにも、頑張ってみようかなと思います。

昨日、バイト先で清掃しているときにぼんやり考えたことをつらつら述べていきました。最近は頭の中が桃太郎でいっぱいです。また進捗がありましたら、共有しますね。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

20240114 横山黎



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?