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階級社会の仕組みをあばく! ピエール・ブルデュー『ディスタンクシオン』

 こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です。

 今回は、わたしの好きなブルデューについて紹介したいと思います。
 ブルデューは『再生産』において、階級格差の生まれる場所が教育、つまり学校にあると指摘しました。『再生産』は専門用語が多く、ブルデューの中でもかなり難しい本なのですが、『ディスタンクシオン』には卑近な事例が多く出てくるので、誰にとっても共感しやすい本だと思います。
 ピエール・ブルデューの『ディスタンクシオン』をざっくりまとめると、フランス社会における「卓越性」に基づく階級構造を分析した社会学理論といったところでしょうか。

ピエール・ブルデューとは

 20世紀を代表するフランスの社会学者・哲学者。 彼の代表的な著作は『ディスタンクシオン』と『再生産』。フランス社会に階級構造を分析し、文化資本や社会資本といった概念を用いて、従来の経済資本に基づいた階級概念を超えた社会分析を展開。 ブルデューの理論は、教育、学歴、芸術、ファッションなど、様々な社会現象に応用され、現代社会における格差や不平等の問題を考える上で重要な手がかりとなった。 ブルデューは、晩年まで精力的に研究を続け、2002年に71歳で亡くなった。

ブルデューの主な主張

  • 文化資本と社会資本 経済資本だけでなく、教育や教養によって培われた知識やスキル、審美眼などの「文化資本」、そして人脈や社会的な地位、評判などの「社会資本」が、人々の生活に大きな影響を与えることを明らかにした。例えば、親が社長で高学歴で良質な書物の揃った本棚を所有している場合、その子供は「社会資本」と「文化資本」を受け継いでいるため、親のように成功しやすいという事例

  • ハビトゥス 個人の思考や行動様式が、無意識のうちに社会によって形作られる「ハビトゥス」という概念を提唱。例えば、読書を重視する家庭では、子供も自然と本に親しむ習慣が身に付き、学業成績が良くなる傾向がある。食事のマナーから言葉遣いにいたるまで、この「ハビトゥス」は顕在化する

  • 象徴的暴力 支配階級が自身の文化資本や社会資本を正当化し、被支配階級との距離を保つために用いる「象徴的暴力」という概念を提唱。例えば、教育現場で西洋中心の歴史教育が行われると学生はその価値観を内在化し、非西洋の文化や歴史を軽んじやすい。また、非西洋の学生は自分たちの文化が劣っていると感じやすい

  • 再生産 社会の既存の権力関係や階級構造を再生産し、維持する役割を果たす機能。例えば、エリート教育を受けた人々が支配的地位を占め続けることで、社会の階級構造が再生産される。「文化資本と社会資本」「ハビトゥス」「象徴的暴力」と連動して、支配階級に有利な社会を再生産していく機構。この項目を深く知るにはブルデュー『再生産』を併読していただきたい。ブルデューは学校が資本階級に優位に働く教え込みを内面化させ、再生産する場所と述べる

 再生産については、同じような哲学者に『再生産についてーイデオロギーと国家のイデオロギー諸装置』で知られるルイ・アルチュセールがいます。    アルチュセールも大好きな思想家ですが、個人的にはブルデューのほうが好みです。何より、人を殺していませんからね(笑)
 ルイ・アルチュセール『再生産についてーイデオロギーと国家のイデオロギー諸装置』を読んだ後に、ブルデューの『再生産』を読むことが望ましいと思われます。

ブルデューの影響

 ブルデューの理論は、社会学、人類学、教育学、文化研究など、様々な学問分野に大きな影響を与えました。また、彼の思想は、反グローバリズムやフェミニズムなどの社会運動にも影響を与え、大学の人文学や社会学の講義でも定番の本になっています。

ブルデューの言葉

  • 「社会は、人々を分類し、秩序立て、格差を生み出す仕組みによって構築されている」

  • 「教育は、支配階級が自らの文化を正当化し、再生産するための手段である」

  • 「人は、自分が属する社会のハビトゥスによって、無意識のうちに思考し、行動している」

 現代社会の複雑さを鋭く分析するこれらブルデューの言葉は、私たちに重要な問いを投げかけています!

「ディスタンクシオン」とは?

 ブルデューは、これらの資本が支配階級と被支配階級の間に不平等な格差を生み出すという考えに基づき、「ディスタンクシオン」(差別、区別)という概念を用いました。「ディスタンクシオン」とは、支配階級が自身の文化資本や社会資本を正当化し、被支配階級との距離を保つために用いる戦略を指します。

「ディスタンクシオン」の具体的な例

  • 教育 エリート層は子どもたちの教育に多額の投資をすることで、優良な教育機関に通わせ、高い文化資本を身につけさせる。

  • 趣味 支配階級は、テニスやゴルフなどの高級な趣味を好み、自らの社会的地位や文化的な洗練さをアピールする

  • 言葉遣い 支配階級は、独特な発音や語彙を用いることで、自分たちと異なる階級の人々を区別する

  • ファッション 支配階級は、高級ブランドの服やアクセサリーを身につけ、自らの経済力・文化的なセンスを誇示する

 どうでしょうか?
 これ、日本の格差社会にも通底する理論だとは思いませんか?

 ブルデューの理論は、フランス社会だけでなく、日本をはじめとする多くの資本主義社会においても依然として有効であるとされています。

 これら2冊に纏まっているので、ぜひ手に取ってみて下さい。

 また、有名なNHK100分de名著シリーズにもなっており、手っ取り早くブルデューの思想に触れたい方にはこちらもおすすめです。

 今回は、格差の根源を明らかにしたピエール・ブルデューの『ディスタンクシオン』について紹介しました。

あなたも、この本を手に取って、格差社会の本質に迫りませんか?
そこには、いま、わたしたちが抱えている普遍的な問題が描かれています!


【編集後記】
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