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運命と私

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運命には逆らえない。運命に翻弄されながら生きた女性の一生。
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2019年12月の記事一覧

運命と私 17

運命と私 17

最近は食欲が無かったのだが、
サンドイッチを見たら、
久し振りに食べたいという気持ちになった。

私は迷わずお店に入った、
出来たばかりの綺麗なお店で、
お店の奥を見るとテラス席もあった。

12月にテラス席に座る人はあまりいないようで、
誰も座っていなかった。

「テラス席でもいいですか?」

「えっ!いいですけど、寒いですよ。」

「大丈夫です。」

私はテラス席に座ってローストビーフのサンド

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運命と私 16

運命と私 16

江藤とのことがあってもう1週間以上が過ぎた。

12月なり急に寒くなり、街ではコートを着る人が増えた。
最近の江藤は遅刻ぎりぎりで出社することが多かった。
奥さんのつわりがひどく、
家事をしてから出社しているらしい。
私は江藤と話すこともなく、
目を合わせることも無かった。
江藤からメールは来るが無視していた。

仕事が終わり会社を出た。

金曜日だからなのか?
行き交う人がいつもより多く感じる、

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運命と私 15

運命と私 15

まだ実家で暮らしている時のことを思い出した。

私には妹がいる、
妹はわがままで、いつでも妹優先の生活だった。
いつの間にか私は我慢することが当たり前になっていた。
そして母親はいつも否定的で、
私がやることすべてに反対だった。

そんな習い事は将来役に立たない、
あのお友達とは距離を置いたほうがいい、
この学校は良くない、将来役に立つ資格を取りなさい。
と口うるさく言っていた。
私は心の何処かで

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運命と私 14

運命と私 14

時計の針は真夜中の2時を指している。

寝れない。

いつかこんな日が来ることはわかっていた、
でもこんなに辛いとは思ってもいなかった。
始めは身体の関係だけだと割り切っていたけど、
私はいつの間にか江藤のことを愛していたのだ。

私はベッドから出て、
キッチンでお湯を沸かした。
暗い部屋の中でガスコンロの青い火が、
ゆらゆらと踊っているのが綺麗だった。

私はお湯をマグカップに入れて、
カーテン

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運命と私 13

受話器を持ったその時、目の前に置いてある、
鏡に映った自分の顔にびっくりした。

醜い顔。

私は受話器を置いた、電話は出来なかった。
逆切れなんて惨め・・
自分でまいた種で、
いつかこんな日が来ることは心のどこかで覚悟していた。

ことを大きくしたら、
私も江藤も仕事を失い、信用を失い、
未来を失い、家族を悲しませるだけだ。
妊娠中の奥さんを傷付けるなんて私には出来ない・・・

不倫なんて・・・

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運命と私 12

運命と私 12

人生はいつ何が起こるかわからない。

いつも通り会社に行くと社長が江藤と話しをしていた。

「江藤くん聞いたよ!待望の第一子おめでとう!
良かったな、父親になると男は変わって来るから。
これからがんばれよ。」
江藤は一瞬私を見たがすぐに視線を逸らした。

私は何が起こっているのは理解出来なかった、
ただ血の気が引いて、
全身が冷たくなって行くのだけがわかった。

みんながおめでとうと江藤を囲んで話

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運命と私 11

運命と私 11

不倫から抜け出せない。

不倫というぬるま湯から出て、
現実と向き合わないといけないと何度も何度も考えた、
しかし不倫の関係をやめることが出来なかった。

始めは1週間に1回だけ会う関係だったが、
多い週は1週間に3回もホテルに行っていた。

4年たった今は江藤からの連絡はほとんど無くなり、
1ヵ月に1、2回と会う回数もだいぶ減っていたが、
私たちの関係は続いていた。

いつも同じホテルだとおかし

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運命と私 10

運命と私 10

私たちはお互いの身体を忘れることが出来なかった。

それから私たちは1週間に1度は会うようになった。

ただ身体を求め合うという秘密の関係。
傍からみたら淫らで汚い関係だと思われても仕方がない、
しかし当時の私は江藤が心の支えになっていたのだ。

冷静になった時に私はなんて最低な人間なんだ!
奥さんに申し訳ない、人間失格だ・・・と、
自己嫌悪に圧し潰されそうになることも多々あったが、
江藤との関係

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運命と私 9

運命と私 9

さみしい私と奥さんとすれ違いばかりの江藤。

私たちはお互いの満たされない心を満たすように、
抱き合った。

好きでもない人とセックスするのは初めてだった。

好きな人とのセックスだと、
嫌われたくない、いやらしい女と思われたくないと、
消極的な私だが、
その時の私はただ欲望のままに江藤の身体を求めていた。

まっ江藤じゃなくても良かったのだが・・・

江藤の手つきはとても優しく、
私は久し振りに

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運命と私 8

運命と私 8

江藤のおすすめのお店は、
路地裏の隠れ家的なおしゃれな居酒屋だった。

まだ出来て3ヵ月の綺麗で私好みなお店だった。

私たちは明日がお休みということで、
時間を気にすること無く飲んでいた。

「俺さ前から川崎さんとご飯行きたいと思ってたんだよ。
だって川崎さんって誰にも心を開かないような、
ミステリアスなとこがあるから!」

「えっ?そうですか?」

「俺はそんな川崎さんが気になってたんだ。」

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運命と私 7

運命と私 7

私は重たい気持ちを引きずって、
1人で家に帰った、
家にいても、会社に行っても、
私は孤独、このまま孤独死するのかな?
私の心は底なし沼に沈んでしまった。

次の日も私の心は沈んだままだった、
底なし沼から這い上がるには時間がかかる。

朝起きてカーテンを開けて、
「会社行きたくない!」
と独り言を言って見た。
わかってる、
生きる為に働かないといけない。

私はがんばって仕事に行った。

そして

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運命と私 1

運命と私 1

また朝が来た。

まだ外は暗く重い空気が流れている。

冬の朝は憂鬱。

布団から出るだけでも大変。

いつもと同じ朝。

いつもと変わらない私。

ただ季節と時代だけが変わっていく。

私は重い体を起こして、
布団から出て、
石油ストーブを点火する。

石油ストーブ独特の匂いが部屋の中に広がる。

私はストーブの前で膝を抱えて座って、
膝に顎をのせてストーブの火を見ていた。

薄暗い部屋に煌々と

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運命と私 6

運命と私 6

「もうこんな時間行かなきゃ!」

とるみがカバンから財布を出した。

その財布はエルメスの財布だった。

「私ね去年独立して、
今は自分で会社経営してるんだ。
明日はニューヨークに行かないと行けなくて、
これから明日持って行く物を買いに行くのよ!」

「えっ!?独立?会社経営?社長ってこと?」

私は頭が混乱した。

「うん、小さな会社で従業員は6人だけどね。」

「すごい!社長なんて・・・
ニュ

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運命と私 5

運命と私 5

「るみ?」

「海月だよね?久しぶり!昔と変わらないね!」

「るみも変わらないよ!ここで何してるの?」

「これから買い物に行こうと思ってて、
あっそうだ!今って時間ある?」

「今?大丈夫だよ、1人で買い物してただけだから。」

「お昼食べようと思ってて、
1人だとさみしいから一緒に食べない?」

「うん、いいよ!」

私は旧友に会えて嬉しかった。
変わってないと言うのは褒め言葉なの?
それと

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