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鈴木まもるさんインタビュー 『あなたがだいすき』20周年記念制作秘話

絵本『あなたがだいすき』は20周年を迎えました

あたたかなイラストと、ページをめくるたびに愛情いっぱいの言葉であふれる鈴木まもるさんの絵本『あなたがだいすき』。読むだけで優しい気持ちになれるこの1冊は、2002年に刊行されてから多くの人々に愛されて刊行から20周年を迎えました。
これを記念して、編集者が『あなたがだいすき』が生まれた制作秘話を作者の鈴木まもるさんにおうかがいしました!

―—『あなたがだいすき』20年周年おめでとうございます。今のお気持ちはいかがですか?

(鈴木)ずいぶん昔のことなので、こんなに前なのかな‥‥‥という感じです。つい昨日のことのようですね。

『あなたがだいすき』誕生のきっかけは?

―—私も息子によく読み聞かせをしています!読むだけでストレートに「大好きだよ」って気持ちが伝わるところがとても素敵な絵本ですよね。ずっと気になっていたのですが、『あなたがだいすき』を思いついたきっかけみたいなことはあったのでしょうか?

(鈴木)朝、目が覚めたら、ぞうさんと子供の絵が思い浮かんだんですよ。

鈴木さんが最初に思いついたシーン

子どもも動物もすきなので、こんな感じの絵が最初から最後までずーっときたら素敵だなと思ったんです。

―—このシーンですよね! イラストを見ただけであたたかい気持ちになります。創作はいつもこういった絵のイメージから入られるんですか?

(鈴木)そうですね。いつも僕は絵が先に思い浮かんで、この絵を描きたいなって描いてくと、ストーリーができているタイプです。たぶん、自分の中で伝えたいこととかがたまってくると、絵になって浮かんでくるんです。でも、その時点では何を伝えたいのか、どんなストーリーになるかは自分ではわからなくて‥‥‥。描きたいなって思っている絵を描いていくうちに、ぼくはこういうストーリーを作りたいのかな、こういうことが伝えたいのかなとわかってきて物語ができあがります。

―—『あなたがだいすき』もそうやって作られていったのですね。

(鈴木)ぞうさんとこどもの絵から始まって、何枚も子どもと動物の絵を描いているうちに、小さな生き物にたいする「かわいい」という気持ちを表現したい、「好き」って気持ちを伝えてあげたいなと思うようになっていきました。

―—鈴木さんの中から自然と出てきた言葉で作られた絵本だからか、シンプルな文章なのに、とても強いメッセージ性と優しさを感じます。

(鈴木)ぼくは文章の世界の人間ではないので、この絵本も何か起承転結を意識して書いたとかそういうわけではなくて‥‥‥。本当に絵を描いてるうちに、すっと自分の中から文章が生まれた感じです。

―—何回も推敲されましたか?

(鈴木)最後のほうは少し‥‥‥。実は最後のページの「とっても」を、重版後に増やしたんです。もっと念を押したい!って気持ちになって。

―—最後にこのページがあることで、たくさんの愛情に満たされた気持ちになりますよね。

最終ページ

制作過程について、くわしく!

―—登場する動物はどうやって選んでいったんですか?

(鈴木)ぞうさんから始まって、いろんな動物を描きたいと思って描きました。似たような形の動物がつながらないように気をつけて描いたと思います。

―—先に絵を描かれたということでしたけど、文章と絵がとってもマッチしてるんですよね!

(鈴木)個々の動物たちに深い意味はありません。それよりも動物の大きさや柔らかさ、温かさ、自然に包まれている感じを大切にして描いていましたね。文章とあうように絵を並べ替えたりもしました。

―—登場する子どものモデルはいますか?

(鈴木)具体的にはいませんね。男の子にも女の子にも見えるように描きました。無国籍な感じで。現実から少し離れた感じをださないと、動物にぎゅっとされてるのが違和感に感じるかなと思いまして。

―—制作当時はどんな人に読んでほしかったのでしょうか?

(鈴木)あんまり具体的にはなかったですね。とにかく、好きな理由、気持ちを何かのかたちで描きたかったんです。
自分は気持ち良く絵を描きたいだけなので、読者にここを見てほしい、みたいな気持ちはなくて‥‥‥。絵を描くことに集中していることが多いですね。

20年間愛されている理由とは?

―—『あなたがだいすき』にはたくさんの読者はがきが届くんですよ。子育て中のかたからのはがきだけでなく、老若男女、本当にいろんな人からお便りが届くんです。子育て中の人はもちろん、大切な人を亡くされたかたや、ペットロスのかた、コロナで人と会う機会が減った方、など‥‥‥。担当になって、とても驚いたのを覚えています。

(鈴木)何か優しいものに包まれたいと思ってるかたが求めてるのかな‥‥‥。日本の人はストレートに表現するのが苦手なので、自分の気持ちの代わりに伝えられるものを探しているのかも。

―—プレゼントにも人気ですよね。お誕生日プレゼントとしてはもちろん、出産祝いやお別れのプレゼントなどにも選ばれています。

(鈴木)手にすっぽりおさまる判型が、ちょうどよいので、あげやすいですよね。巻末に友人がこの本をもとに作曲した楽譜を載せていますが、メロディがつくと、もっと自然にこのメッセージを伝えやすいかも。子守歌にもなっていいですよ。

―—卒園や入園などハレの舞台にもピッタリの曲ですよね! 私も息子に歌ってあげたいと思います。本日は貴重なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました!

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鈴木まもる
1952年、東京都に生まれる。東京藝術大学工芸科中退。
画家・絵本作家・鳥の巣研究家。
1955年「黒ねこサンゴロウ」シリーズ(竹下文子/文・偕成社)で赤い鳥さし絵賞を受賞。2006年『ぼくの鳥の巣絵日記』(偕成社)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。2015年『ニワシドリのひみつ』(岩崎書店)で産経児童出版文化賞JR賞を受賞。ほかの作品に『みんなあかちゃんだった』(小峰書店)『ウミガメものがたり』(童心社)『せんろはつづく』(竹下文子/文・金の星社)『てをつなぐ』(金の星社)『戦争をやめた人たち』(あすなろ書房)『鳥は恐竜だったー鳥の巣からみた進化の物語』(アリス館)など多数ある。

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