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海外生活振り返り日記-ニュージーランド前編-#9

赤いぽちぽち

 ランギトトから帰ってきた次の日、雨の中歩いたせいかただ疲れたせいかまた風邪ひいた。しかし今回は風邪だけではない。なんか腕や足が痒い。虫に刺されたような赤い湿疹があちこちに現れた。沢山あったので幾つあるか念の為数えた。
 その日は初めは18個。しかし次の日の朝になると30個以上、学校から帰ってきて夜数えてみるともっと増えていき、3、4日経った頃にはお腹も背中も首にも手のひらにも、全身に湿疹が現れ100個を超えていた。ただただ痒い。痒すぎて夜寝付けない程だ。熱も少し出ていたがそれが湿疹と関係あるのかただ疲れから来た風邪のためなのか分からなかった。
 学校に行った時にソフィーにその湿疹を見せて相談すると目を丸くして驚いて、同僚の先生も呼んであれこれ話していた。熱も関係しているかもしれないから直ぐに病院に行くように言われた。
 学校帰りに前回と同じ医療通訳の方に連絡し、病院に来てもらった。
 予約はしていなかったがわりとすぐに診察してもらえ、医師からはダニかノミかもしれないと言われた。手のひらの少し膨らんでいた粒は皮膚の中にダニが住んでいて皮膚を食べながら進んでいると恐ろしい事を言っていた。ホームステイ先に猫や動物は居るか、外の芝生で寝転んだか等聞かれたが、猫も犬もペットも居ないし芝生に座ってもいない。ランギトトでは皆木に触ったりしていたけれど湿疹が現れたのは私だけ。でもどこから来たものか分からないから、とにかく燻煙剤を使って部屋の中を徹底的に掃除して、リュックもジャケットもランギトトに持っていったもの全て丸ごと洗うように言われた。
 中々ジェーンに言いづらかったが家に帰って説明すると、家にはダニなんか居ないし今まで一回もそんなこと無かったと言われ、ちょっと申し訳ない気持ちになったがしょうがない。ダニの潜伏期間も1ヶ月かかるものもあるらしく、飛行機の座席か最初に泊まったホテルのベッドかどこから持ってきたのか全く分からなかった。学校の先生もジェーンに連絡してくれたらしく、ダニ退治の為の掃除をしてくれた。
 処方された薬は洗い流すタイプの塗り薬で、クリームを頭から爪先まで全身に塗り、10分くらい待ってからシャワーで洗い流すというものだった。それでダニが死ぬらしい。
 早速その晩薬を使ってみると毎日増え続けていた湿疹はそれ以上増えることなく、その日から段々消えてきた。痒みも熱も無くなったので一件落着。
 海外に来てわずか1ヶ月ほどで3回も病院に行くなんて笑ってしまうが大したことなくて良かった。海外保険も元をとるほで度はなかったが無駄にならずに済んで良かったんじゃないかと思った。

誕生日

 誕生日に授業があった。先生方の名簿には生徒の誕生日の情報も載っているので先生方は知っている。自分からは今日が誕生日だとは周りに言わなかったが午前中の授業でも午後の授業でもお祝いをしてもらって嬉しかった。
 リサから彼女が撮った湖と桟橋の写真を貰った。明け方か日没か、ランギトトの帰りに見たような青い空気の中に桟橋のシルエットが黒く映えてとてもかっこよかった。
 ソフィーからは小さな箱を渡された。なんだろとワクワクしながら開けると、白くて少し平たいまんまるの石と小さくてふわふわした鳥の羽が一本入っていた。なんて素晴らしい感性なんだと感動した。彼女は自然の中を散歩するのが好きで、以前旅行に行った際、河原でこの石を見つけたと言う。
 私は嬉しくて帰ってから日本から持ってきたスケッチブックと水彩絵の具でまんまるの白い石と茶色い羽の絵を描いて次の日ソフィーにプレゼントした。ソフィーも私と同様とても喜んでくれた。
 石と羽を誰かの誕生日プレゼントにするなんて一度だって考えたこともないし、どう頑張ったってそんな発想湧いてこない。しかしこうして、こういう人たちの感性に触れ合う事で私の感受性も豊かになる。買った物も嬉しいけれど作ってくれたものや自分が素敵だと思うものを信じてそれを人に送れるって良いなと思った。100%その人の個性が込められているのは面白い。
 この感動をちっぽけな考えと捉える人もいるし、脳に稲妻が走るくらい感動する人もいるだろうし、何の興味も示さず変なのと呆れる人もいるだろう。そういう周りの意見など全く気にせずに生きられる彼女たちはとても自由に見えた。
 私が素敵だと思って異国のいくつかの色の違う浜辺の砂を集めて小瓶に詰め、異国で見つけた小さな黄色の貝殻とだだっ広い草原で摘んだ小さなドライフラワーをその中に入れてプレゼントして本当に感動してくれる友達はどれくらいいるだろう。
 ニュージーランド人だって色々な人がいるから勿論リサやソフィーの様な考えではない人たちもいるだろうけど、私はこの人たちに会えて良かったなと心から思った出来事だった。

たからもの

つづく

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