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かわせみ亭コラム☆日本文化論

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日本人の行動原理および行動について考えてみました。日本人における思考や行動の原理が分かれば少しでも合理的かつ妥当なプロマネ人生を歩むことができるのかも知れません。
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2020年11月の記事一覧

悪魔のデススパイラル

(かわせみ亭コラム#15)
 現在の日本における経済不況はデフレーションの悪循環に陥り、それから抜け出せないでいる。経済的な不況は、真っ先に労働者の賃金カットによる収入減に結びつき、収入の減った人々は支出を減らそうと一円でも安いものを買い求めようとする。その結果、企業はより安いものを供給しなければ生き残れないため、一層の労働賃金カットやより低コストの海外に生産拠点を移さざるを得なくなる。結局、日本

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人間の経済的価値の復権

(かわせみ亭コラム#14)
 欲に駆られて何でも安ければ良いというものではない。経済的世界においては物やサービスの価格が下がるということは、それに携わる人間の経済的な価値も下がるということを意味する。とくにお金が全てであるかのような価値観の世界では、人間の価値まで収入の多さの順にされてしまう。それでは収入のない人は価値ゼロ、人間ではないことになってしまう。事実、それぞれに事情は異なるであろうが、多

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共同体の破壊は日本人を無力化する

(かわせみ亭コラム#13)
日本が本当に恐るべきことは、人々の孤立分断化および企業の孤立分断化による共同体の破壊なのではないだろうか。利益共同体の破壊、地域共同体の破壊は現在も恐ろしい勢いで進んでいる。更に、経済のグローバル化による利益至上主義は異常なコスト競争を招き、国内の企業は怒涛のごとくオフショア委託生産や生産拠点の海外移転を進めており、これらの動きは国内における分業体制を破壊し共同体の衰弱

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企業の過剰防衛反応がもたらしたもの

(かわせみ亭コラム#12)
 人間の孤立化が進めば組織の孤立化も進み、個人も法人も幼弱化し、過剰な自己防衛に走ってしまう。
企業の過剰防衛反応の一つが、金として現れてきたものが406兆円にも積みあがった企業の内部留保金であり、雇用圧縮として現れてきたものが2016万人もの非正規労働者や60万人もの若年無業者や208万人もの完全失業者であり、それらの民力衰退の結果もたらされたものが、216万人もの生

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幼弱化が不安を増幅させ過剰反応を招く

(かわせみ亭コラム#11)
 日本人は集団としてまとまりをもっている状態においては非常に強固で効率性に富み、柔軟な思考および自律的な行動を発揮するものであるが、一たび孤立分断化された「個」あるいは「孤」の状態では、一気にその幼弱性を露呈させてしまう傾向が強いのである。それは個人においても組織においても同様である。その幼弱性により、不安やリスクに直面した場合にとる態度は極端に防衛的な思考や行動であっ

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孤立分断されると日本人は幼弱化する

(かわせみ亭コラム#10)
 オリンピックに限らず、水泳や体操、その他の競技において日本人が得意とし多くのメダルを獲得しているのは団体競技であり、個人戦においてはなかなか活躍できない。
 戦後の高度経済成長も集団の力の結集で達成された。日本製品の品質改善に大きな貢献をしたQCサークルも、多数の企業における新製品の創造もみな集団の力の結集のたまものであった。
 日本人は昔から集団の中で生きるのは得意

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かわせみ亭コラム#9

唯我独尊の優位者たち 自分の振舞いは常に相対的なもの、すなわち他人との関係性の中にある、という認識のない人々の行いは常に独善的であり、専横的であり、私利私欲的になり、ついには自己ないしは共同体を衰亡・破滅に導くという歴史の事実にまったく気がついていないのである。特に力で優っている人々、頭脳で優っている人々、権力で優っている人々、金力で優っている人々においては、常にそのような傾向が強く、「利益は自分

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かわせみ亭コラム#8

失敗に学べない日本人 日本人は自分の過ちを振りかえることが苦手である。特に日本人は起きてしまったことは、今さらとやかく言っても仕方のないことだとして「水に流す」ことにしてしまう性癖をもっている。精神の穢れさえ「みそぎ」によって落とすことができるものと信じている。このように過去の失敗に学ばない性癖が、せっかくの日本人の特性によって築きあげた大切な宝ものを一瞬にして崩壊させてきたことを学習しているとは

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かわせみ亭コラム#7

日本人における強烈な平等感 日本人におけるその所属階層を越えた強烈な平等感はどこからきたのであろうか。例えば、金持ちだからといって威張るなとか、横柄な役人の態度は常に非難の的とされることや、貧困であるがことを理由に他人から卑下侮辱されることを許さない態度は、いまでも広く一般的に日本人の共通の心情的な態度である。
 日本人は、その共同体に対する絶対的な生存の保障という信頼感を基底にして、共同体の各階

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かわせみ亭コラム#6

日本人の性格特徴を形づくったもの その③ 生き残るための知恵として結晶化した日本人の行動規範人間に襲い掛かる苛酷な自然災害は、まさにこの「鍛錬」や「焼入れ」という試練を日本人の共同体に与えるのと同じ効果を生み出したことであろう。強大な自然災害に遭遇して、われわれ日本人の共同体は、自然の脅威を克服するために、組織内の不純物を排除すること、すなわち個々の勝手な行動を規制し、その構成員の力を同じ方向にま

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かわせみ亭コラム#5

日本人の性格特徴を形づくったもの その① 明るく陽気だった日本人
 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)はその著書『日本』のなかで明治初期の日本人の様子について次のように語っている。「かれら(日本人)はどんな事情の下にあっても、うわべの快活さだけはけっして失われない。また、どんな難儀なことがあっても――暴風、火事、洪水、地震のようなものがおこっても、高笑いで挨拶をかわし、明るい笑顔で丁寧にお辞儀をしあ

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かわせみ亭コラム#4

早離(そうり)と即離(そくり)の話
”怨み”と苦悩からの救いについての短い話を紹介したいと思う。
『早離と即離は、幼い兄弟である。両親に早く死別したので毎日泣いていると、ある心のよくない男が、父母にあわせてやるからこの小舟に乗れと誘った。二人はだまされたとは知らずにその言に従う。小舟は沖あい遥かに浮かぶ名もない小島につけられて、幼児二人をおろすと、その男は舟を漕いでもとへ帰ってしまった。
 二人の

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組織における失敗の原因と結果の関係

(かわせみ亭コラム#3)《再録》 

失敗の原因と結果の分析結果が示すところは次のようであった。
1.「組織」が原因の失敗による損害が約80%を占めている。
2.重大な事故は、ほとんどが「組織」が原因であり、被害の大きさの76%を占めている。
3.「個人」が原因の失敗による損害は約20%を占めているが、④誤判断、⑤調査・検討不足による失敗は、件数が最も多く、軽微から大きな障害まで広範囲に渡っている

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かわせみ亭コラム#2

愚化(おろか)
 「貧すれば鈍す」と昔から言われているが、最近の人間は若きも老いもみな一様に愚化が進んでいるように思える。 愚かさは暴力的な行動や発言となって暴発する。駅のポスターにはこう書いてある。「頭突きしてケガをさせる」「ネクタイを引っぱる」「ビールをかける」これらはすべて暴力です!。駅員に対する暴力事件は一向に減らない。以前は「切れる若者」の話題が多かったが最近はさらに「切れる老人」の話題

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