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かわせみ亭コラム☆日本文化論

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日本人の行動原理および行動について考えてみました。日本人における思考や行動の原理が分かれば少しでも合理的かつ妥当なプロマネ人生を歩むことができるのかも知れません。
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記事一覧

幼稚化する大人たち

(かわせみ亭コラム#29)
 実に天真爛漫な能天気な振る舞い方だと思う。自分の組織の者が大きな不始末をしでかした時の組織幹部の記者会見の言葉は決まって、「ご心配とご迷惑をおかけしました」というマニュアル言葉なのだ。聞いているこちらは一向にご心配などしてはいないし、深い陳謝の念など一かけらも感じられない。
 謝罪の言葉は言い訳のオンパレードで、「私は知りませんでした、指示してはいません、担当者が勝手

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仏性は子どもに宿る

 新聞の読者投稿欄の記事を読んで不思議な感覚にとらわれた。小3の男の子の話だった。その祖母よると、この子は神社の庭にばらばらに死んで転がっているセミをきれいに一列に並べたり、採集したアメンボを元の川にそっと戻したりする子で、10歳年上の兄が受験に出かける時も「おい、己に勝てよ」と声をかけ、帰ってきた時には「己に勝てたか」と聞いてきたとのこと。また母親に反抗する兄に向って、お兄ちゃんは誰から生まれた

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良薬口に苦し

(かわせみ亭コラム#27)
 初心者向けの教材となる文章をやっと書きあげて、数人の人たちに試読をお願いした。
 いろいろな指摘が出されるだろうとは思っていたが、実際に、ここが分かりにくいあそこは難し過ぎるとの指摘を受けてみると、良い指摘をもらったと感謝するよりも、何でそこが分かりにくいのだろうかという自己弁護の感情が先に立ってしまった。 しばらく時間を置いたあとで冷静な頭で考えると、もともと原稿の

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よき友よ!

(かわせみ亭コラム#26)
 吉田兼好(鎌倉時代の人)は徒然草の中で悪い友・良い友の特徴について次のように書いている。
 「友とするのに悪い者として七つがある。一つ目は身分の高い人。二つ目は若い人。三つ目は身体強健な人。四つ目は酒好きな人。五つ目は勇猛果敢な武人。六つ目は嘘をつく人。七つ目は欲深い人。一方、良い友には三つある。一つ目は、物をくれる友。二つ目は薬師。三つ目は、知恵がある友」
 現在で

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忖度(そんたく)と損得

(かわせみ亭コラム#24)
 “忖度”という怪しげな言葉がマスコミを賑わわせていたが、この言葉が日常会話で使われることはまずない。一昔前にもこの言葉と同様のニュアンスを持った言葉で、「空気を読む」を略して“KY”という言葉が取り上げられたことはまだ記憶に新しい。
 これらの言葉に共通している意味は、相手や周囲の気持ちを推測し、それによって自分の判断や行動を行うと言う点にある。このような思考や行動に

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どこまでも譲れるものではない

 「売り手良し、買い手良し、世間良し」のいわゆる三方良しは良い仕事の基本と言える。更に良い仕事の条件は、やるべきことについて「1.決まっていること。2.理解していること。3.方法を知っていること。4.やるべき時にやっていること」および「5.やるべきでないことをやらないこと」だと言える。しかしながらこれらの原理原則を逸脱する組織が後を断たない。GoToなんとか、情報の改ざん、不良品のリコール、工事の

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上位の者たちこそ重い責務を果たすこと~ノブレス・オブリージュ

(かわせみ亭コラム#22)
 古来日本人は常に連帯を保ち、その共同体の上位の者も下位の者も共にその応分の責務を果たし、弱き者を援け、利己を廃し、義をもってその行動規範とし、この日本列島において幾多の天変地異や戦火をくぐり抜け数千年を生きのびてきました。共に手と手を携えて生きる精神の中にこそ日本人の生きる道があるということをその伝統的な行動規範の中に再度発見すべきでしょう。優位の者こそ大きな義務を負

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蜂の社会と旧日本社会の共通性

(かわせみ亭コラム#21)
 蜂の社会と人間社会にはおもしろい共通性を見つけることができる。 蜂は複数の個体で集団を形成しており、コローニーと呼ばれる独立した巣を持っている。人間社会で例えれば、複数の人間が集まって、一つの村落共同体を形成しているようなものである。
 また、蜂はその集団内で、それぞれ異なった役割を持っている。一匹の女王蜂および少数の雄蜂は、子孫を残す役割を担い、多数の働き蜂は蜜を集

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コンプライアンス通報制度の無意味さ

(かわせみ亭コラム#20)
 多くの会社組織において不正行為が頻発するようになった頃から、遵法精神を高揚するためにコンプライアンスという言葉が使われ始め、それを所管する社内部門も整備され、不正についての社内通報制度が設けられるようになった。しかしながら、一向に会社における不正行為やその隠蔽事件は減る様子が見られない。
 なぜなら、その社内通報制度を利用することなど、会社組織の意味が分かっている普通

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イジメというリンチを無くせない理由~心の空洞化を埋める暴力

(かわせみ亭コラム#19)
 空洞化は何も産業構造の空洞化だけではないであろう。産業構造の空洞化と連動して、日本人および日本の組織における心の空洞化も進んでいる。飽くなき利の追求は産業構造のみならず個人および組織共同体の心の空洞化も招いている。空洞化する前にその心を満たしていたものは、日本の伝統的な倫理感や道徳感などである。これらの心の空洞は決して「利」によって満たされるものではない。過去千数百年

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とうとうやってきた成長神話の行き止まり

(かわせみ亭コラム#18)
 現在の我々のこれまでの状況を振り返ってみるに、現在までのやり方の延長線上には本当の解決は絶対にないだろうということが確信される。現在までのやり方である、経済拡大、経済成長以外に国家繁栄の道はないという成長神話に基づいた考え方および行動基準はもはや現在の閉塞状況の解決策にはなり得ないであろう。際限のない欲望に応えられる無尽蔵の資源はこの地球という星には存在しないのだから

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#どうにもとまらない ~「選択と集中」という神話

(かわせみ亭コラム#17)
 現在でも「選択と集中」を経営方針の中核に据えている企業の何と多いことであろうか。理に適っているように見える。ただしこの前提は、「選択が正しかったら」であろうということである。選択を間違えると集中した投資は全て無駄になり、その企業は即破産となる。「選択と集中」という言葉は実に魅力的であり、誘惑に満ちた言葉である。しかしながらエルピーダメモリーはDRAM技術の先端技術をも

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平安なき繁栄

(かわせみ亭コラム#16)
 なぜ今日本は調子が悪くなったのかもう一度考えてみたい。本当の原因はどこにあるのであろうか。そもそも戦後の日本には何もなかった。全国の主要都市のほとんどは空襲により破壊し尽され丸焼け状態であった。食べるものも、着るものも、住む家にも、働く場所にも事欠いていた。 現在の日本よりも何百倍も何千倍も悪い条件にあった。この最悪の状況を救ったものは、最初に米国による援助であり、次

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悪魔のデススパイラル

(かわせみ亭コラム#15)
 現在の日本における経済不況はデフレーションの悪循環に陥り、それから抜け出せないでいる。経済的な不況は、真っ先に労働者の賃金カットによる収入減に結びつき、収入の減った人々は支出を減らそうと一円でも安いものを買い求めようとする。その結果、企業はより安いものを供給しなければ生き残れないため、一層の労働賃金カットやより低コストの海外に生産拠点を移さざるを得なくなる。結局、日本

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