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ESCAPE

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子育てを終えた女性が全てから距離を置き、一人の時間を自分に贈ろうと海外で暮らす一ヶ月の話。
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ESCAPE④

ESCAPE④

自分の時間 湖のそばのベンチが私の定位置になりつつある。「整った自分」というのも私のテーマの一つだったから、毎朝6時に目が覚めるまま朝のウォーキングをすることにしている。こちらに着いてから、幸いまだ雨が降っていないので毎朝のウォーキングはもう私の日課になっている。初日こそサンドイッチを買って食べたけれど、その後はスーパーで短くて丸い日本の米に似たお米を見つけたので、それを炊いておにぎりを作ることに

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ESCAPE③

ESCAPE③

新しい日常 朝早くに目が覚めた。旅先ではいつもそうだ。仕事も家事もない場所に来たというのに。自分だけのために使っていい時間はたくさんあるのに。やっぱり早く目覚めてしまう。そして起きてすぐに思ったことは
「今日はお弁当の日だっけ」
それと同時に冷蔵庫に何があったかを思い出そうとしていた。
習慣ってすごい。

 結局昨晩寝る前に夫に「無事到着しました。疲れたから寝るね。」とだけメッセージを送った。出発

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ESCAPE②

ESCAPE②

ビフォア vs アフター 降り立った空港は20年の時を経て、随分と近代化されていた。
20年前何の宛てもなくバックパック一つで立っていた同じ場所に、私はスーツケースを引いて立っている。行き先も決まっている。小さな町の湖畔のゲストハウス。
そこまで高速バスで向かう。
 行き先も方法も全て整っていることが、この20年間を物語っている気がしてちょっぴり淋しいが、違う理由でも同じようにワクワクしている自分

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Escape①

Escape①

ちょっとサヨナラ 「少しだけ海外で暮らしたい」
夫に提案してみた。一緒に行きたいって言ったら考えてもいいと思っていたし、別に頑なに一人で行きたいとも思っていなかったけれど。
 「どのくらいの間?」
意外と冷静な反応だったので、思わず口から出まかせで「一ヶ月」と言ってみた。
若い頃バックパッカーとして世界を旅した経験がある私と、家と職場の行ったり来たりを彼此30年近く続けている夫。「海外で暮らす」と

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