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66.【モノクロビル:黒スーツのお願い】

ある日の夢は……
一階部分がお店になっている場所から始まった。

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建物はアッチノ世界にあるモノクロビルみたいに真っ黒だった。
眼鏡のオッチャンは見当たらない。

アタシは建物の中ではなくて、扉のない出入口の前に立っていた。
お店の中を覗いてみると、白い壁や額縁、壺、アクセサリー等、色々と並んでいるのが見える。
外にも商品と立て看板が置いてあった。


アタシが知っているモノクロビルのお店には近代的な物が売っていた。
でも、このお店の中にある物はどれもアンティークな物ばかり。
前に黒羽根さんがいたお店みたいだった。

黒羽根さんと言えば……
Blackey』と呼ばれている黒羽根さんらしき人がモノクロビルのどこかにいるという噂を思い出した。

会えるかもしれないと思って、とりあえずお店の中に入ろうとしたら――
ブーツのような足音が後ろから聴こえてきた。
黒羽根さんはいつもブーツを履いている。

「黒羽根さん?」

振り向くと、男の人が立っていた。
燕尾服のような黒服と尖った革靴を履いている。

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黒羽根さんに少し雰囲気は似ているけど、違う人だった。
後ろで手を組み、無言でじっと見つめてくる。
気まずい。

ここは夢の中。変な人の可能性もある。
関わらないようにサッとお店の中に入ろうとしたら、男の人に腕を掴まれた。
アタシが見ると、男の人はすぐさま両手を後ろに組み直して話し始めた。

「いきなりなんだけど、キミにお願いがあるんだ」

「お願い?」

「そう。僕はあそこに座っている彼と話がしたい。でも、僕の両手が暇を持て余して喧嘩を始めちゃって会話ができないんだ。今も後ろで抑えている。だから、キミが間に入って止めてくれないか?」

そんな風なことを言われた。

夢に出てくる人って、真顔で変なこと言うよね……。

なんて思いながら、男の人がチラ見していた反対側のビルを見ると、オープンカフェのようなお店があった。
杖を持ったおじいさんが一人座っている。
長めの白い服を着ていて、頭に真っ黒なターバンを巻いた中東の国にいそうな人だった。

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「あのおじいさんか……。喧嘩を止めるってどうやって?」

気になって方法を聞いてみたのに、男の人は何も言わずに片手でアタシの視界を隠した。
そのままもう片方の手で腕を掴まれながら、どこかへ誘導されていく。

少し歩くと手を外された。
ゆっくり目を開けてみると、さっきのおじいさんが目の前に座っていた。
おじいさんは杖を両手で掴みながら、凄い笑顔でアタシを見つめている。

この場所はオープンカフェの中なのか、室内だった。
窓の外を見ると、さっき覗いていたお店がすぐ近くに見える。

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この距離なら普通に歩いてくればいいのに……。

そう思っていたら、男の人はおじいさんの斜め前のイスに座った。
同時にアタシの腕を掴んで、自分の膝の上に横向きに座らせようとした。

いや、いや、いや……一体何を?

アタシは驚いて立ち上がろうとしたけど、「いいから」と強引に座らされてしまった。
そのまま身体を捻った状態で、男の人の肩に顎を乗せて抱きつくような状態……。
まるで座りながら抱っこされている子供のようだった。

この状況は一体なんなんだ!

恥ずかしくておかしくなりそうだった。
そんなアタシのことは気にもせず、男の人とおじいさんは話し始めた。
どこかの天気の話と、船の話。
その間、男の人はずっとアタシの頭を撫でている。
抱っこされて撫でられて……
猫とか寝かしつけられている子供って、こんな気分なのかなぁーと考えていた。

これが黒羽根さんだったらいいのになぁ……。

そう思っていたらウトウトしてきて、眠るように目が覚めた。
男の人とおじいさんは何者なんだろうか。

目が覚めた後、見た夢を思い出してる時に
船の話=59.【空を飛ぶ船とアタシと地下の謎】の夢で見た船のことじゃ?と思った。
あの船におじいさんは乗ったことがあるのかな。

気になる夢でした。



別サイト初回掲載日:2011年 07月21日




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