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71.【真っ赤な口の兎仮面】

フリーズドライな兎仮面。
彼との遭遇は二回目。
最初はどんな夢の始まりだったか忘れてしまったけれど……。

フラフラと歩いていたら真っ白な空間に辿り着いた。
黒羽根さんと出会った真っ白な部屋や、
アンティークショップへと繋がる巨大な本を見つけた空間とも違う雰囲気の場所だった。
あの真っ白さではなく、陽の光に照らされたような黄色味がかった白色。
天井は卵の殻の中にいるみたいにドーム型になっていた。
目の前には薄い布がカーテンのように隙間なく吊るされてあって、どこからか生ぬるい風が吹くと波のような音に合わせて白い布がユラユラと揺れる。
でも、その奥に何があるのかは全く見えない。

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白い布に包まれた家の夢みたい……。

そう思いながら、くるりと振り返ると目の前に白い壁と茶色い木の扉が一つあった。
扉は猫一匹分だけ開いていた。

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扉の隙間からレースの布がはみ出ているのが見える。
何枚も重なっているのだろうか。
風が吹く度に色々な種類の布が揺らめいている。

あの扉の先はどこへ繋がっているのだろうか……。

様子を見ていると――
背後から足音のような音がした。
振り向くと、十メートルぐらい離れた場所に兎の仮面をつけた大柄の男の人が立っていた。
その兎の仮面は物凄く可愛くない。

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骨がゴツゴツと浮き出ていて、顔の半分は血で染められたみたいに赤くなっている。
見開かれた目は白く濁っていて、どこを見ているのかわからない。
突き出た前歯は歪で尖っていた。
まるでフリーズドライにされちゃった兎のような仮面。

〝……コツン……〟

兎仮面は一歩ずつ、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
走ってくるわけでもないのに近づいてくるのが怖い。

〝……コツン……〟

捕まってどうなるかなんてわからないのに、逃げなきゃいけないと思った。
アタシは目の前の扉へ走った。
ドアノブにも触れずに開きかけた扉を掴むように引くと、扉の先は狭い空間だった。
一メートルもない正方形の空間に、同じような扉が正面にも左右にもあった。
どれも猫一匹分ぐらい開いていて、扉にレースの布が何枚も貼りつけられていたり、隙間からはみ出ているのが見える。
よく見ると、どの扉もドアノブの位置や扉を開ける方向が違っていた。

ちょっと悩んで、アタシは右の扉に入ってみた。
するとまた同じような空間に扉が三つあった。
まるで迷路に迷い込んだみたいだった。

〝……コツン……コツン……〟

足音が聴こえる度に焦って、アタシは何も考えられずにどんどん進んだ。
でも、ふと立ち止まった瞬間、動けなくなった。
目の前の開きかけた扉の隙間から、光と一緒に影のような物が見える。

兎仮面はこの扉の前にいる……。

そう思っている間に、その扉のドアノブがゆっくりと傾き始めた。
それを見てアタシは何を思ったのか、開こうとしている扉の上部を掴んで、下にあったドアストッパーみたいな部分に無理やり足を乗せてしがみついてみた。
アタシを引っ付けたまま扉が開く。
でも、兎仮面は出てこない。
そのまま、またゆっくりと扉が閉まった……かと思えばまた開く。

段々とスピードが上がる。
右側の扉の布が分厚くて、クッションみたいになっているからか、扉に背中が当たっても痛くはない。
けれど、無理やりしがみついているから、すぐに振り落とされると思った。

兎仮面はアタシがしがみ付いているのを知っててワザとやってるんだ。
見つかったらどうなるのかな……。

何をされるか不安になっていたら目が覚めてしまった。

これがフリーズドライな兎仮面との最初の遭遇。


二回目はアッチノ世界の学校の中だった。
廊下を歩いていると、通り過ぎた教室の一番後ろに兎仮面が立っていた。

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慌てて逃げると、その先の教室の一番後ろに同じように立っている。
それを繰り返す夢だった。
兎仮面に何かをされたわけではないけど、遭遇したら危ないといつも思う。


そんな夢でした。

別サイト初回掲載日:2011年 07月28日



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