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116.【人喰い恐竜ブロック再び:列車とオジサンとドゥードゥルの旅】


ある日の日曜日。

その日は一日中とても眠くて仕方がなかった。
畳んであった布団に寝っ転がったら、すぐに寝てしまった。

「ねぇ、晩御飯どうする? 今日は何か作りたくないなぁ。外に食べに行くか何か買ってきちゃおうか?」

薄っすら目を開けると、足元に母が座っていた。
アタシは眠気に耐えられなくて何も答えず寝たふりをした。
そのまま本当に眠ってしまったのか、気がついたら緑色の列車に乗っていた。
自然公園とかにありそうな子供と大人が乗る豆汽車。

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ほのぼのした雰囲気ではなく……
左側が崖になった山道をなかなかのスピードで走っていた。
アタシは一番前に座っていたけど、運転するのに必要そうなボタンやレバーは見当たらない。
前を見ると線路はずっと奥まで続いていた。

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見える景色は空と生い茂った木の葉っぱと線路だけ。
それと駅なのか、線路の脇に小さな建物が点々と建っていた。
どれも廃墟のようにボロボロで、中には完全に潰れている建物もあった。
列車は停らず通過していく。

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線路の上にまで建物の廃材のような物が出っ張っていて、前を通る度に列車にぶつかったり擦れて激しく揺れた。
それを何度か繰り返していたら、列車の部品なのか何かが右から左へ吹っ飛んだ。
驚いて右側を見ると、すぐ近くに小太りなオジサンがいた。

なんで?
どうなってるの?

よく見てみると隣にもう一本線路があって、オジサンも小さな列車に乗っていた。
オジサンのは黒い蒸気機関車。

縦に並んだり横に並んだりしながら走っていると、また小さな建物が見えてきた。
小さな建物は二つの線路の間にあって、オジサンの列車が離れていった。
さっきと同じように廃材が飛び出ていて、アタシは左側に避けた。
オジサンの方にも廃材があるのか「ワッ!」とか「ヒャッ!」なんて声が聞こえるような気がする。

それに気を取られて、余所見をしていたアタシ。
ふと前を見たら、崩れかけた塀が飛び出していて慌てて避けた。
同時に列車が激しく揺れた。
大げさに避けたせいかわからないけど、衝撃で左側に体が倒れそうになった。
倒れるというか外に飛び出しそうだった。

あっ……左は崖じゃん。

そう思った瞬間、アタシの右手を誰かが引っ張った。
横を見てみるとオジサンがアタシの手を掴んでいた。

「掴めた……ワタシ動いた……動けた!」

興奮気味のオジサン。

「ありがとうございます!」

「危なかったじゃない。あー焦った」

んっ?
ちょっと口調が……?

気になりつつもオジサンの顔を見ると、思いっきり目が合ってしまった。
その瞬間、安心したのか何なのか、アタシもオジサンも大笑い。
変にテンションが上がってしまい、それからは列車に乗っているのが楽しくなっちゃって、二人で大声を出したり両手を上げたりしながら騒いでいた。
お互いおかしな状況なのに、不思議とそのことについては聞きも聞かれもしなかった。
それよりも見える景色と触れる風と空気の匂いが心地よくて、アタシは騒ぐのに夢中になっていた。

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暫くすると目の前に大きな建物が見えてきた。
よく見ると線路もそこで終わっている。
でも、列車はスピードを緩めない。

「えっ……あれってちょっと……このままじゃ突っ込むじゃない!」

オジサンの悲鳴にも近い声が聞こえた。
それを聞いて一気に怖くなった。
あと二十メートルあるかないか。
アタシは両手で頭を抑えて体に力を入れた。

怖い……怖い……怖い……

そう思っていたら、列車が停まった……?
そんな気がした。
恐る恐る顔を上げてみると、目の前にはさっき見た大きな建物があった。
結構なスピードで走っていたし、ブレーキ音も何も聴こえなかった。
どんな仕組みで停まったのか全くわからない。
横を見るとオジサンも放心状態だった。

暫く座ったままボーッとしていたら、オジサンが立ち上がった。

「乗ってきたやつは反対方向には動かなそうだし、歩いて戻れる距離でもない。誰かいるかもしれないから行きましょ?」

「行くって?」

「この中よ」

オジサンは建物を指差した。

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建物の入り口は高い場所にあって、扉は開いた状態だった。
よじ登って入ると、使われていない場所なのか中はがらんとしていて埃っぽい。
建物も古そうに見える。
中心部分には何もないけど、端っこに四角い大きな物がたくさんあった。
機械なのか荷物なのか、どれも布に覆われていて黒い塊に見える。

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倉庫?
工場かな?

キョロキョロと見ていたら

「あの……」

背後から声がした。
オジサンもアタシも驚きながら振り向くと、入ってきた扉の前に女の子が立っていた。
二十歳前後ぐらいのロングヘアーが似合う綺麗な女の子だった。

「驚かせてすみません。私、変な乗り物に乗ってここまで来ちゃって……帰り方がわからなくて」

「あら。それならワタシ達と同じじゃない? 人がいないか探しているから一緒に行きましょ」

そうオジサンが言った時だった。
どこからか物音がした。
ほら!と言いたげにオジサンは目を見開いてアタシと女の子の顔を見た。
建物の一番奥には両開きの扉が開いていて、その奥にも部屋がありそうだった。
物音もそこから聴こえてくるような気がする。

オジサンはその扉の方へ、ずんずん一人で歩いて行く。
アタシと女の子もついていこうとした時、また物音がした。

「ほら! やっぱりこの奥から聴こえるわよ!」

そう言いながらオジサンが嬉しそうに振り向いた瞬間、両開きの扉の奥を何かが横切った。
それを見て、アタシは同じものをどこかで見たような気がした。
壁で見えないけど、何かが向かった先を目で追うと、四角い大きな物があった。
さっきは機械とか荷物が黒い布で覆われているだけだと思ったけど、改めて見てみると何か違う。

これもどこかで見たことがあるような気がする……。

そう思った瞬間、99.【侵入者:人喰い恐竜ブロック】の夢の映像が頭に浮かんだ。

あの時の恐怖が一気に蘇ってくる。

「ダメ! アタシ前に夢で同じの見た! そいつら人襲う!」

焦って片言になってしまった。
オジサンが驚いた顔でこちらを振り向いた。
同時に両開きの扉から、まるで暖簾を潜るみたいに巨大な黒い何かがこちらに入ってきた。
ゆっくりと頭を上げたそれは真っ黒い恐竜のような生き物だった。
一言で表すのならティラノサウルス。
痩せこけているのか、頭蓋骨とかが浮き出ているように見える。

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あれは夢なのになんで……

アタシはまだ夢だと気が付いていなかった。
だから余計に怖い。
酷いことにアタシはオジサンを置いたまま、隣にいた女の子の手を取って左側に見える部屋の中に逃げ込んだ。
扉を閉めようとしたら、古い木の引き戸なのか滑りが悪くてなかなか閉まらない。
鍵も外側にチェーンがあるだけだった。
部屋の中には、手荷物ぐらいしか入らない小さめのロッカーと棚しかなくて隠れられない。

これじゃ隠れられないし、鍵も閉められない……。
どうしよう。

どうにか引き戸を閉めて前を見たら、もう一つ同じような出入り口があった。
そこも開いている。
よく見てみると、下の方に人の手が見える。
そーっと近付いて覗いてみると、オジサンがいた。
隠れているつもりなのか、壁を背にしてへばりつくように座っていた。

出入り口はさっきの両開きの扉の部屋と繋がっているようだった。
あの大きな恐竜は引き戸を閉めた音に反応して移動したのか、尻尾だけが見えていた。
しゃがんで覗いているからよく見えないけど、最初に横切った何かも部屋の隅で動いている。
前の夢にも出てきた小さいタイプの恐竜だと思った。
早くしないと他の恐竜達も目覚めてしまう。


「こっち……こっち……」

ウィスパーボイスを出しながら、オジサンの手にそっと触れてみた。
「ヒャッ」という声を発して振り向いたオジサンの手を強く引っ張った。
転びそうになりながら、どうにかオジサンもアタシ達がいる部屋に入れた。
急いで扉を閉めようとしたら、さっきよりも木の引き戸が古くなっていて閉まらない。
古いというかカスカスに朽ちている。

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オジサンも手伝ってくれて どうにか閉じることができたけど、扉の下側は亀裂が入るようにボロボロ。
こぶし大の穴が幾つか開いていた。

恐竜に突進でもされたらすぐ壊されちゃいそう……。

そんな事を考えていたら、穴の奥が黒くなった。
よく見てみると、恐竜の横顔、口のような物が見える。

扉の奥にいる……。

恐竜映画のワンシーンみたいだった。
オジサンもアタシも恐怖で声も出ず。
身振り手振りでバタバタしながら後ろに数歩下がると、天井までありそうな大きな窓が目に入った。
部屋の半分が窓ガラスになっていて、他に出入り口はない。

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アタシは窓を開けて外を見てみた。
列車から見た時と同じような景色が見える。
今いる建物は高い場所に建っているらしく、下を覗くと他の建物の屋根が続いていた。
平たい屋根を見て、何だか飛び降りられそうな気がした。

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「え? まさか飛び降りる気?」

アタシの考えを察知したのか、オジサンがニヤけながらも不安そうな顔で見てきた。

「このままここにいても恐竜達に襲われるだけ。だったら飛び降りたほうがいい。何か大丈夫な気がする」

そう言ってアタシは窓から飛び降りた。
夢だからか大した衝撃もなく着地できた。

「ヒャッ! ホントに飛び降りちゃった。痛くないー?大丈夫ー?」

オジサンの甲高い声が聞こえる。
アタシは両手を上げて丸を作りながら叫んだ。

「どうするかは自分達で決めてー!」

しばらく下で見ていたら、オジサンは手で口を押さえながら窓の前に立っていたけど……

「あいつらに喰われるぐらいなら、飛び降りて死んだほうがマシっ!」

そう言いながら窓から飛び降りた。
どんな着地だったかは忘れてしまったけど
「ワタシ飛び降りた! 降りちゃった!」とアタシの右手を掴んだ時みたいに大興奮。
思わず笑ってしまったのを覚えている。

アタシとオジサンが大丈夫なのを確認できたからか、女の子もすぐ屋根に飛び降りてきた。
恐竜達も追いかけてくる気がして、アタシ達は屋根の上を小走りで進んだ。

少し行くと左側に道が見えた。
道と屋根の間にある塀を伝って下へおりてみることに。
オジサンと女の子は慎重におりているのに、ズボラなアタシは途中で飛び降りてしまった。

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しゃがむように着地して顔を上げると、奇抜な石像があってびっくりした。
トサカと顎の部分は赤色で、クチバシは黄色いニワトリの石像。
その周りにはお墓や祭壇にありそうな物が色々と置いてあった。

ここはニワトリを祀っている場所なのかな?

そう思いながら周りを見渡すと家がたくさんあった。
いつの間にか辺りは暗くなり始めている。
どの家にも小さな塀で囲われた祭壇と墓石のような物があって、蝋燭が浮かび上がるように青白く灯っていた。

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ニワトリの石像の近くにも石碑みたいなのがあった。
何か書いてあるけど、漢字の『三』っぽい文字以外は読めない。
どうにか読もうと石碑に顔を近づけて見ていたら、オジサンが騒ぎ出した。

「ちょっと! あそこにとんでもなくデカイ鹿がいるわよ!」

こんな山奥だもんねぇ……。

なんて思いながらオジサンが指差した先を見ると、少し離れた家の塀の前に大きな角を生やした巨大な何かが立っていた。
よく見ると、そこにいたのは確かに鹿だった。
でも、現実ではありえない大きさ。
胴体だけでも家を囲う塀の高さを超えている。
象ぐらいあるだろうか?
頭と角を含めたら、もっと大きいかもしれない。
墨汁に青色を混ぜたような不思議な色をしていた。

「やだ! 横にイノシシもいるじゃない! あっちにはもう一匹鹿がいる!」

オジサンが見つけたイノシシも、もう一匹の鹿も同じように巨大だった。
二匹を見て、最初の一匹をもう一度見るとガッツリ目が合ってしまった。

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襲われる……こっちに来る……。

なぜかそんな気がした。
そう思った瞬間、一気に頭の中が恐怖でいっぱいになった。
アタシは急いでさっき下りてきた塀の上に登った。

「二人共塀の上に登って! 早く!」

叫んだのが合図になってしまったのか、鹿達がこちらに向かって猛スピードで突進してきた。
オジサンと女の子は塀には登らず、少し開けていそうな場所に走った。
広くはない道を巨大な三匹が走るから、イノシシは二匹の鹿の大きな角に挟まれるような形になってバランスを崩した。
そのままオジサン達の横を通り過ぎて、正面にあった何かに突っ込んだ。
瓦礫に埋もれた三匹はお尻を出したまま動かない。

アタシは急いでオジサン達がいる場所に向かった。
すると前から男の人が三人歩いてきた。
真ん中の眼鏡をかけた髪の薄いオジサンがケガをしているのか、二人に両脇を支えてもらいながら頭を押さえて歩いている。
それを見た女の子が「あっ!」と声を出した。

「私、あのオジサンと変な乗り物に乗っていたんです。でも、途中でオジサンが何かにぶつかっていなくなっちゃって……」

なるほど。
だから一人だったのか。

頭の中で納得していたら、眼鏡のオジサンを支えていた一人がアタシ達に声をかけてきた。
医者なのか白衣を着ている。

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「あんた達もいたのか。あっちにドゥードゥルって建物があるから、そこに行きなさい」と言われた。

周りを見ると、他にも人がわらわらとたくさん出てきていた。
今から仕事に行くみたいに時計を気にしながら、自転車で走っていく人もいる。

恐竜は? 鹿は?
いいの?

アタシは混乱していた。
すぐそばには両手でカゴを持った女の人が立っていた。
アタシの顔を見ると、女の人はカゴを指先で持ったまま両手をお化けのように上げた。
そして両手の人差し指をピンと立てたと思ったら、
「ドゥードゥル?」と言いながらどこかを指差した。

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ドゥードゥル?

「わーい。ドゥードゥルって安全な場所なのかねぇー」

はしゃぐ小太りなオジサン。

ドゥードゥルってどんな場所なんだろう。

オジサンにつられて、ちょっとワクワクしだした瞬間に目が覚めた。
時計を見ると二時間ぐらい寝ていた。

久しぶりに長くて不思議な夢を見たなぁ。

なんてボーッとしていたら父が部屋に来た。

「今から晩御飯買いに行くけど何が食べたい?」

結局、お父さんに頼んだんだ?

そう思いながら、食べたいものを父に伝えて母の部屋に行った。

「さっきさ、お母さんが部屋に来た後に凄い夢を見たんだよ」と夢の話をしようとしたら……

「さっき? 今日は私、 Aちゃんの部屋には行ってないよ?」

「えっ? だって、さっき晩御飯どうするかって聞きに来たじゃん?」

「ううん。お父さんにはさっき晩御飯買ってきてくれないかってお願いしたけど……五分ぐらい前だよ? だから、今さっきお父さんがAちゃんに聞きに行ったんじゃん」

そう言われてまた混乱した。
母が声をかけてきた時は既に夢の中だったらしい。


99.【侵入者:人喰い恐竜ブロック】の夢の時も現実だと思ったら夢だったし、恐竜とか巨大な動物とか似ていることが結構あった。

そう思った夢でした。

別サイト初回掲載日:2017年 05月21日


ここからはちょっとザワザワするお話🌝

ニワトリの神社ってあるのかなぁと気になって調べてみたら、『中野神社』という神社に夢で見たのと似ているニワトリの石像があってびっくりしました。
夢の中の石像は、もうちょっと目がギョロッとしているイメージですが👀
母に夢の話をしたら
「ドゥードゥルって鶏の鳴き声じゃなかった?」と言われて、あの建物が関連があるのか、どんな建物だったのか更に気になりました。

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