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74.【黒羽根さん:抗う侵入者】

ある日の夢は……

アッチノ世界の学校の教室の中にいた。
教室には大勢の生徒がいて、アタシは前の方の席に座っていた。
なぜか両手の指にはたくさんの指輪。

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それを見ていたら――

「指輪凄いねー。 ちょっと手を見せてくれない?」

隣に座っていた人が話しかけてきた。
ベリーショートでボーイッシュな感じの女の子。
アタシは何も考えず見せようとしたら、斜め後ろから誰かに手を掴まれた。
指輪を隠すように握ってくる誰かを見てみると、なんと黒羽根さんだった。

64.【侵入者:マキナさんと茶色い塊:夢が残す目印】の夢で会ったのが最後だったから、無事だったんだ……と顔を見てホッとしてしまった。

「キミの場合、指輪を見るだけじゃないでしょ? 僕にはわかるよ」

黒羽根さんは意地悪そうな顔で女の子に言った。

女の子は黒羽根さんとアタシを睨むように見ると……

「そうよ! だって、アンタが付けてたってだけで、そんな指輪一つ一つがこの世界じゃ億単位の値がつく。一つぐらい貰ったっていいじゃない」

そう言って、女の子はフンッと小さな溜息をついて、そっぽを向いてしまった。

「えっ……どうしてそんな値段に?」

驚いていると――

「デマだから気にしないで。この世界の住人と違って、キミはこの世界に縛られない。何度殺されてもまた戻ってくるし、捕まえられても逃げていくからね。珍しい存在なんだよ」

そんなようなことを笑いながら言うと、黒羽根さんは席にあったカバンの中から袋に入った何かを取り出してアタシの手に持たせた。
見ると粉砂糖がかかったドーナツだった。

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「キミは授業なんて受けなくていい。これでも食べながら外でのんびりしておいで。僕も後から行くから」

黒羽根さんにぐいぐい背中を押されながら教室を出ると、廊下にもたくさんの生徒がいた。

とぼとぼ歩いてると階段を見つけた。
下りようとしたら――

「違う。次の階段だよ」

後ろから声がした。
振り返ると黒羽根さんが立っていた。

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右向きに下りる階段は真っ黒な廊下に出てしまうから、使ってはいけない。
前にも誰かに同じことを言われた気がする。
黒羽根さんが教えてくれた階段は左向きだった。

一緒に下りて歩いて行くと、明るい中庭のような場所に出た。
人がたくさんいて、楽しそうに話していた。
みんな国籍が違うのか民族衣装を着ている人もいる。

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中庭の真ん中あたりに、トラックとクレーン車を混ぜたような黄色い乗り物が停まっていた。
中庭の雰囲気とは、なんだか不釣り合いな乗り物だった。
気になりつつ、外にあったベンチに座って黒羽根さんと一緒にドーナツを食べようとした時だった。
黄色い乗り物が突然動き出して、近くにいた人を薙ぎ倒しながら某ロボット映画のように形を変え始めた。

ベンチのすぐ横に坊主頭の白人の人が吹っ飛ばされてきて、アタシは急いで声を掛けた。
でも、ガシャンガシャンうるさい。
イラッとしながら後ろを振り返ると、乗り物が中途半端なロボットの形でこちらに近づいてきていた。

「ヤバい……」


そう思った瞬間、巻き戻したかのように、乗り物がロボットの形から車のような形に戻って行く。
自分の意志ではなく無理やり戻されているのか、抵抗しているようにも見える。
けれど、黒い煙を出しながら最初の乗り物に戻ってしまった。

何だったんだ?と辺りを見渡していると――

「最近、こっちはこんなのばっかりなんだよねぇ……」

隣にいた黒羽根さんが溜息混じりに呟いた。
その瞬間、目が覚めてしまった。

あれは黒羽根さんが助けてくれたのだろうか。


気になる夢でした。


別サイト初回掲載日:2011年 07月30日



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