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初めてのシステマ大阪 インターナルを巡る旅、人間って面白い

「インターナルを見直そう」をテーマにした、システマ大阪のsystema summer intensive(システマ夏季集中講座)に行ってきました。8/10-12の3日間開催でしたが、仕事の関係で2日目は参加できず。大阪駅から歩いて行ける好立地で、チーフインストラクターの大西さんを訪ねて普段から遠方の参加者もいらっしゃるそうです。

今回も大西さんや参加者の方たちに多くの気づきや学びをもらいました。システマは武術という枠組みで学びますが、日常生活との結びつきが非常に深いです。講座を終えた後、頭がスッキリしていたり、新幹線での座り方が変わったり、晩御飯を一口食べるごとに体の中の感じ方が変わったり……言葉にするとささやかですが(笑)。でも、そのささやかな変化の連続が自分をよい方向に導く大きな力につながっているのかなと思っています。

これまでは、「呼吸でこうやって体が変わるんだ」「思考が自分の行動にこんな影響を与えるんだ」など部分的な面白さに感銘を受けていましたが、今回はもっとざっくりした感じで「人間って面白いな」と思いました(笑)。システマは、自分を通して人間を理解する試みなのでしょうか。


体で知ることの大切さ

また、改めて「体で知ることの大切さ」に気づきました。例えば、システマを知らない人に「悩みがあっても、それを小さな問題だと思えば気にならなくなるよ」と言っても、「言葉でいうのは簡単だけど、それが難しいんだよ」「自己啓発本とかでよく聞く言葉だな」と思われて終わりかと思います。

でも、システマで実際に腕をひねられて「痛い!」という問題が起こっても、それをおおごとにせず、広く俯瞰で自分を見られたら、あら不思議でその問題が解決(自分が快適な状態になり、結果的にひねられた状態がほどける)します。

あら不思議状態は脳での理解が追い付きませんが、体が知っていることの説得力は他に代えがたいものがあります。体が知っているんだもん、以外に言いようがない。今回の講座は、あら不思議の連続コンボを決められ続けて脳はずっと混乱していました(笑)。

大西さんいわく、「その問題しか見えていないと(問題が100%の状態なので)地獄だが、広く他のものも感じていれば、その問題が全体に占める割合は10%とかに減っていく」。

日常生活で使える実践的な考え方だなと思いました。

人によって課題は違うので、現在地を知る

そして、みんなで同じワークをやる中でも、一人ひとり習熟度や課題が異なるので「自分の現在地を知ることが大切」だと言われました。例えば、腕をつかまれて肩が力むという場合でも、人によって解決までのアプローチ(アドバイスの仕方)は変わります。

私の場合は、そもそも体全体に力が入ってなさすぎるので、肩だけ緩めようとすると、腰や足裏など他の場所が肩の代わりに力みだします。なので、一旦全身をくまなく緊張させて体の骨格や構造を整えてから、最後に肩を緩めるとうまくいきやすい(エクスターナルを疎かにしない)。

逆に、格闘技などでバリバリ鍛えていて全体的に力が入りやすい人は、呼吸などでリラックスを進めながら肩を緩めるアプローチがよいかもしれません。同じ現象でも、人によってそれが起きている原因が違うことを知る必要があると。

また、つかまれた腕を感じにくいなら、もっと相手に強くつかんでもらうなど、フィジカルの強度を上げることでワークの難易度を下げてもらう。そうやって、「できる、できないの間で遊ぶ」ことで精度や速度を上げていく。そして、現在地を知るには自分を感じられないといけないし、パートナーにそれを教えてあげられるとなお良い。そして現在地の話、前も書いてた(笑)。

インターナルとエクスターナル、どちらも大事

講座のテーマは「インターナル」でしたが、ワークをしているうちに、インターナルとエクスターナルの境目がどんどんなくなっていく感覚でした。インターナルは内部(心理、思考など)、エクスターナルは外部(体、姿勢、構造など)というざっくり解釈ですが、インターナルとエクスターナルの掛け合わせでよりパワフルになれると理解しました。

大西さんが「インターナルは、エクスターナルを大きく超えて広がっていくべき」とデモを交えて言っていたのが印象的でした。ただ、相手の両腕をグッとつかんでも、相手は動じませんが、大西さんが「遠くに座っている人とか、エアコンの空調とか、窓から見える景色とか、広く感じると…」と言ったら、相手の人は笑い出して姿勢も崩れていきます。脳では理解できませんが、同じ空間にいれば空気感の変化は体で感じられます。

インターナルは目に見えないくせ者ですが、私たちは普段の生活を通して体感としてインターナルを十分知っているのでは?と、ふと思いました。

例えば、職場で近くの席に不機嫌な人がいたら、その不機嫌やピリピリ感は何となく他の人にも伝わりますよね。それが、誰かを物理的に叩いたり、怒鳴ったりというエクスターナルな形で強く表現されたら、誰でも気づきます。でも、指で机をトントン叩く行為や、貧乏ゆすりでは気づく人は減るかもしれない。そして、わかりやすいシグナルを発していなかったら、さらに気づく人は減るかもしれない。

刺激の強さや距離で気づきの難易度が変わるのもシステマのワークそのものだと思いました(笑)。自分が目の前の仕事でいっぱいいっぱいだと、やっぱり気づけない。自分がカーム(心が静かな状態)ならその空気の変化(ノイズ)に気づけるし、ノイズをコントロールして良い雰囲気に変えることだってできる。

インターナルって聞くと、神秘的ですごいものって思いがちですが、こうやって置き換えてみるとめちゃくちゃ身近でみぞおちにグッとくる話になりました(笑)。

「汝自身を知れ」のさらなる理解

あと、特に強烈だった体験について。
「自分自身についてよく知りましょう」というのはシステマに限らずよく聞く言葉ですが、デモを通してその意味を強烈にアップデートされた感じがあります。

私が、「行為に気を取られてしまい、人自体とワークする感覚がつかみにくい」「自分と相手の境目を限りなく薄くする感覚をもっと知りたい」と質問しました。

大西さんが、「他人は未知な存在だから、そもそも理解できるわけないじゃないですか」といって、普通の状態でただ私の腕をつかみます。普通に「なんか、腕つまれてるな」くらいの感覚で、なんなら「腕つかまれて、なんか嫌だな」と思っています(笑)。

で、大西さんの状態が変わると、あら不思議で腕つかまれているの関係なく私は笑ってしまうし、体の内側の流れが動き出すし、なんなら体も動き出すしで、一体化した大西さんの中にどんどん吸い込まれていく感覚でした。

「自分自身が分かったら、相手の情報が自分に入ってくるから、相手を知る必要はない」と言われました。ただ、私の体は「はい」と肯定しても、脳は「いや、待ってくれ。わからんよ」と引き下がらない(笑)。「相手にうつる自分を見る」というのは、この相手視点verを意味しているようです。

もっと脳が混乱したのは、大西さんがナイフを手に持っている時です。左手で私の腕をつかんで、右手にナイフを持っている。左手を通して大西さんの内側に取り込まれた瞬間に、自分からナイフにゆっくり頭を突っ込んでいくという、傍から見てもおかしいだろ!と突っ込みたくなる状況になりました(笑)。自分からナイフに刺さりにいくって、人間の本能としてあり得ないじゃないですか。でも、そういう常識的な考えとか関係なく体が勝手に動くんですよ。強烈すぎて笑いました。

講座内容のメモ

ほか、講座内容の覚書です。

●インターナルについて
・吸う息でカームにし、吐く息でリラックスして余計な筋肉の緊張を削ぐ。何段階かでその状態を深めて、できるようになったらより少ない段階、あるいは呼吸なしでその状態になる
・テンションはよりカームな方に流れていく(ペアワークで、よりカームな方に情報が取り込まれてパワーアップする感じ)
・ファイトをせず、逃げず、相手の悪い行為の原因になっている火種そのものを消す
・多くのことを感じるには、自分の内面を静かにすること
・思考などで内面にノイズがあると外からの情報を受け取れない
・例えば、人の話を聞く時でも、思考でノイズだらけなら話を受け入れる  状態になっていない
・カームのないリラックスはあるが、リラックスのないカームはない
・エクスターナルとしての体がこの空間にいても、インターナルがそこに居なければワークを始める準備はできていない
・体の後ろ側より前側・内側のほうが情報を感じ取りやすい
・状況における自分の異物感を消す、状況に溶け込んで自分の本体としての強すぎるテンションを限りなく薄くする

●エクスターナルについて
・自分をオープンにして相手の情報を取り込むには、文字通り胸を開く(頑張って胸を張るわけではない)
・体は勝手にバランスをとるようにできている
・骨の一つ一つの並びを感じる、吐く息で姿勢が悪くのは骨できちんと立てていない、良い骨の並びにする
・接触面について、線ではなく点で捉える(線で押すと相手とぶつかる。もっとピンポイントに点で捉える。点の周りをコロコロ回す感じ?)
・腕をつかまれた時、接触面で相手とぶつからず、テンションの濃淡を均一にできる場所を見つけて動く
・痛みを使うことも必要。体は痛いと感じることで、痛くならない動きを学ぶ。でも、痛すぎると心を閉ざしてしまうのでちょうどよい負荷をかけること

思ったことメモ

・やっていることは「普段、暗幕に覆われてしまっている素の自分を見つけてあげる」なのかなと思った

・大西さんに頭のテンションをとるマッサージ(?)をしてもらった。頭をつかまれているが、実際につかまれているのは頭の中にあるテンション。それをキャッチされて外に放出。頭の形にそってテンションを手で削いでもらう
→頭がスッキリした。「before:ワーク難しいな。できないな。どうやってやるのかな…」「after:ま、わからんけど、とりあえずやってみるか」と開きなりました。衛生的な面だけでなく、マッサージした側の手にテンションが残るのでそういう意味でも手を洗ったほうがいいと言っていました。

・自分で思っていたより相手をしっかりはっきり見ているんだなと思った(ガン見とは違う。意図の形とか、相手自体とか曖昧なものをはっきり捉えている感じ?)
・床との踏ん張りがないと軽く歩ける
・日常の会話でも、伝えたい明確な意図がないと、コミュニケーションがグダグダになる(それを楽しむ時があってもいいけど)。意識してみると意図が明確じゃない行為が案外多いと思った
・人との会話で、自分が伝えたい言葉をぶつけてもコミュニケーションが成り立たない。相手の話を聞いて、その文脈の中で対話していく

・システマをやっていると、点と点が線でつながる瞬間がある
→例えば、腕を上げる時にテンションで動かしてしまう時、「そうか、プッシュアップの感覚で上げればいいのか」と気づく瞬間など。この点と点が突然つながる感覚は、脳の快楽物質が流れる瞬間な気がしており、混乱しがちな脳へのささやかなご褒美になっています。


長くなりましたが…システマは、実際に体を動かして体験しないと絶対分かりません。でも、システマをやっている人ならこうした文章を通して自分の経験を呼び覚まし、その感覚を理解できたりします。人間ってすごいですね。そんなことを考えました。





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