マガジンのカバー画像

エッセイらしきものばかり

521
何がエッセイなのかよく分かっていない人が書いたエッセイらしきものです。
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

どんな贅沢からも生還する

どんな贅沢からも生還する

 いわゆる貧乏舌なんです。嫌いな食材が混ざっていたりとか、食べ物が傷んでいたりとか、調理で派手な失敗とかしなければ、大概のものはおいしく食べられる。

 たまの贅沢でいいお店に行って高級な肉とかを食べていると、こんなことを言い出す人がいます。「もう普通の肉を食べられないかもしれない」。こんなうまいもん食べたら普通の肉なんかまずくて食べちゃいられないってことですね。それでも、大半の人間は高級な肉を毎

もっとみる
テレビを通してだけ見た親戚

テレビを通してだけ見た親戚

 ここでは田村君としておきますけれども、私が田村君と初めて会った時から彼には可愛い彼女がいました。田村君に負けず劣らずいい人でございまして、できればちゃんと続いてほしいと思わせるカップルでした。

 まだ当時は互いの家族に挨拶をしていなかったんですけれども、互いの家族についての話はそれなりにしていました。家族構成、職業、年齢などなど、大まかなプロフィールからちょっとした笑えるエピソードまでちゃんと

もっとみる
校長室を利用した人は社長室も利用する

校長室を利用した人は社長室も利用する

 以前にも書いたんですが、久野さんという知人がいるんです。

 久野さんは小学生の頃、毎日のように教科書やノートの束を背負って登下校する生活に疑問を抱いていました。あんな重いものを背負って毎日歩くなんて冗談じゃない。不満は久野さんを解決へと突き動かしました。学校に荷物を置いて帰ることにしたんです。

 クラスの友人にはもちろん、先生にも速攻でバレまして、いろいろ言われたそうです。最も言われたことは

もっとみる
ドラえもん専門コピーバンド

ドラえもん専門コピーバンド

 恐らく中学生から大学生くらいだと思うんですが、バンドをやりだす人が一定数いらっしゃいます。とにかく演奏をしたかったからとか、友達に誘われて何となくとか、音楽で天下を取りたいからとか、始める理由は十人十色でしょうが、どの理由にも多かれ少なかれ背後には「みんなの前でいい格好したい」という気持ちが漂っている。私の中にはそんな偏見がございます。

 そんな偏見が出来上がったのにも一応わけがありまして、他

もっとみる
偏愛電子マネー

偏愛電子マネー

 今では電子マネーとかQRコード決済とか、その手の電子決済システムがたくさんすぎて全然把握しきれていませんけれども、決済時に動物の鳴き声がするのはWAONくらいなんじゃないでしょうか。ご存じ、イオンで使える電子マネーですね。誕生したばかりの頃からイオンに行けばレジのあちこちでワオンワオン鳴いてましたけれども、あれからだいぶ経つのにまだ頑なにワオンワオン鳴いています。

 私としては鳴こうが鳴くまい

もっとみる
時空を越えるいびき

時空を越えるいびき

 学生の頃、友人たちと旅行したんです。バイトで稼いだお金をつぎ込んでいますから、お世辞にも贅沢な旅とは言えません。どうしても費用を切り詰めざるを得ない。それでも、いつもの面々と見たことない場所へ行き、自分たちしか楽しくないふざけ合いを繰り返し、疲れてウトウトしながら宿に向かうバスに揺られた記憶は、今でも思い出すと穏やかな気持ちにさせてくれます。

 宿に着いた我々に、ちょっとした想定外の出来事が出

もっとみる
忍術を駆使したマーケティング調査

忍術を駆使したマーケティング調査

 忍者に憧れていた時期があったんです。小学生の頃、忍者の本を買ったのが運の尽きでした。「本当の忍術は巻物をくわえてガマに変化するような非現実的なものではなく、人の心理や自然の法則を巧みに利用したものである」。この一文にやられまして、何度も何度も読み返すようになってしまいました。

 読むだけで済ませばよかったのに、我慢できなくなって実際にも使うようになってしまいました。忍者と言えば隠密行動が基本で

もっとみる
最も後先考えない友人

最も後先考えない友人

 世の中には「後先考えない行動」がございます。いや、もちろん、未来をキッチリ予測しきれる人間なんていませんから、いくら綿密に準備をしたところで、どこかの段階で思い切って動かなければいけないとは思うんです。でも、限度があるでしょうって話なんですよね。お金が欲しいからって安易に強盗してはいけませんし、寒いからって家に火をつけてはダメなわけです。

 幸いにして、私の周囲には後先考えず犯罪に手を染める人

もっとみる
とにかく馬鹿な慣用句

とにかく馬鹿な慣用句

 大概のものは知り尽くしたとたかをくくっていると、まだまだ知らないものが続々出てくるのが慣用句の類です。これまでの人生で使っているところを見たことないものもザラです。スポーツでも芸能でも、みんなに知られている超メジャーな人は一握りであり、圧倒的大多数の方々はほぼ誰にも知られていなかったりしますけれども、慣用句もまた同様みたいです。

 さて、深刻な格差問題が続く慣用句の世界ですけれども、どうも誰か

もっとみる
いつも遅刻できるわけじゃない

いつも遅刻できるわけじゃない

 なぜかいつも遅刻する人っていませんか。中学時代の同級生、ここでは重森君としておきますけれども、彼は毎日遅刻をする人でした。「毎日のように」じゃないんです。本当に毎日律儀に遅刻していました。

 重森君は別に不良だったわけでなく、むしろ勉強はできるほうで授業態度は真面目でした。短距離走はクラスでトップを競うほどであり、まさに文武両道、とてもちゃんとしている人なんです。でも、遅刻だけはいつもする。

もっとみる