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私と誰かのこと

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相手があって成立するもの。
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駅のホームで8分間

駅のホームで8分間

大好きな大好きな友達に、引っ越し前の最後に会ってきた。これまで月に1回(多い時は月に2回)会い続けた友達と、今までみたいに会うことが出来なくなるのが、引っ越しの1番の嫌なところだった。

引っ越しが近づくにつれて、数ヶ月前に「もう大丈夫かも」と思えた外食のつらさが復活して、精神的にきつくなってきていた。常に緊張状態にあるような、パニックがすぐそばにあるような。

これまで大好きな友達と一緒にいる間

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なにをもって恋とする

友達が凄くかわいい。
おしゃれが好きで推しに真っ直ぐ全力で、仕事を頑張っていて、好き嫌いがはっきりしていて、案外頑固。家にお邪魔していると、ときどき急に寝転がって脚になついてきたりする。柔らかい手に触れる。マッサージが苦手なの、なんて言う友達の肩に、私は簡単に触れられてしまう。近くに来られるとどきどきする。

多分私はおかしい。ただの友達で、向こうはなんとも思っていない。安全な同性だから許される距

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祖母は今も笑っている

祖母は今も笑っている

祖母が亡くなった。

祖母が床に臥せてから、ずうっと暗い気持ちが続いていた。
思い返せば呆気なく、あっという間に逝ってしまった。
だけど祖母は、もうこれ以上苦しまなくて済む。

そんな風に思わなければ、納得できなかった。
身近な人の死を経験するのは初めてで、家族内でも考え方や受け止め方で、何度も口論になった。みんな不安で、余裕がなかった。

「幸せだったのかな」
「もっと生きたかったんじゃないかな

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頑張って生きるのは、誰のためだろう

頑張って生きるのは、誰のためだろう

「もう人生終わりがいいのに、まだ続くのがつらい」という思考に囚われていたら、私じゃなくて祖母の生命が危うくなってしまった。

今月頭から体調を崩した祖母は、みるみるうちに弱っていった。遠方に住んでいるため、テレビ電話で時々様子は見るものの、最後に会ったのは2年半前だった。その頃はまだピンピンしていて、ちょっとやそっとじゃ倒れないように見えた。

祖母はあまりお喋りな方ではなかったし、表情も豊かでは

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寂しくないから大丈夫だよ

寂しくないから大丈夫だよ

いま私のそばには犬の赤ちゃんが居る。赤ちゃんと言っても人間の年齢に換算すれば、10歳くらいではあるらしいのだが。

非常に寂しがりや且つ感情豊かな子で(犬と暮らすのは初めてで比較対象が無い)、私や家族が別の部屋に居るとそれはもう寂しがって、悲しそうな声で鳴く。
なかなか悲痛な叫びなので、手が離せないなりに「大丈夫だよ!もうすぐ行くから寂しくないよ!」「ちょっと遠いけど同じ家に居るんだから寂しくない

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春が来なくても、君は綺麗になった

友人に会ってきた。
大好きな人で、会うのは半年ぶりくらい。
彼女に貰ったピアスをつけて会いに行く。

もう5年くらいの付き合いになるけど、どんどん綺麗になっていく友人に、会うたびいつも、少し寂しくなる。

人は変わっていく。自分では分からないけど、きっと私も昔のままでは無いはずなのに、泣きたくなるくらいに寂しいのは、すごく自分勝手だなあと思う。

内面はきっとそんなに変わっていなくて、でも、社会人

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「そのままでいい」という無償の愛

前の職場を辞めて数日経った頃、母から「そのままでいい」というタイトルの本を貰った。

母から本を貰うのは、それこそクリスマスにサンタの役職を務めてくれていたとき以来で、そこそこに非日常な出来事だった。

そんなはずはない、と思ったのがまず一番最初。そのままで良いはずがない。世間や社会というのは、当たり前だけど全く優しくなんてない。人間は他人にいくらでも厳しくなれる。

そのままでいいと本のタイトル

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父娘キャンプ。22歳の娘が思うこと

父娘キャンプ。22歳の娘が思うこと

少し前、父親と2人きりでキャンプに行った。

父は昔から凝り性で、仕事の傍らで色んな趣味を持っていた。

小さい頃、父は仕事が忙しくてほとんど家に居なかったけれど、私が物心ついた頃には木材を買ってきてペーパーナイフを作っていた。かと思えばガンプラを沢山作っていて、いつの間にかジオラマをいっぱい作り、最近では革製品を作っている。

小さい頃、木でハリーポッターみたいな魔法の杖を作ってもらったし、小さ

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いぬ

我が家に小さないぬが来た。

ふわふわであたたかくて、細っこい。
すぐに弱ってしまいそうな小さないのち。

私が離れると「どこにいくの」と訴えて、近くに来ると満足して、脚に寄り添ったり、背後に回り込んで安心したようにねむる。

いぬは、私たちと初めて会うにも関わらず「人間が好きです」という感情をダダ漏れにして突進してきた。
鳴き声にこれでもかというくらい「人間が可哀想だと思う音」を込めてくるので、

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「大嫌いなアイツにも家族がいる」それがなんだ

「大嫌いなアイツにも家族がいる」それがなんだ

一年前に退職した会社の社長には、私と同い年の娘さんがいた。
同級生で、同じ女。私は社会人だったけど、社長の娘さんは大学生だと聞いた。

左の薬指に光る指輪。
社長の長期休暇中に毎日社内メールで報告される家族団欒の海外旅行。
プライベート用の年賀状発注を任された際に見た家族写真。

この人にも家族がいるんだな、と、いつかに孫の話をされながら思ったことをなんとなく、覚えている。

同期が何人かいた。ほ

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