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父娘キャンプ。22歳の娘が思うこと

少し前、父親と2人きりでキャンプに行った。


父は昔から凝り性で、仕事の傍らで色んな趣味を持っていた。

小さい頃、父は仕事が忙しくてほとんど家に居なかったけれど、私が物心ついた頃には木材を買ってきてペーパーナイフを作っていた。かと思えばガンプラを沢山作っていて、いつの間にかジオラマをいっぱい作り、最近では革製品を作っている。

小さい頃、木でハリーポッターみたいな魔法の杖を作ってもらったし、小さなナイフのおもちゃもくれた。よくそれでおままごとをしていたっけ。

私が見てきた父は、いつでも何かを作るまあるい背中だった。

映画やアニメも凄い数を観ている父の影響を、私はかなり受けて育った。父ほどクリエイティブな人間にはなれなかったけれど。

父との関係は、恐らく一般的な家庭よりかなり良好だと思う。たぶん。

でも父は、あんまりお喋りな方ではない。テンションだってずっと一定な感じだし、母がいないとあんまり喋らない。話しかけたら勿論返事はしてくれるけれど、必要なことだけを話すことが多い。母とは取り留めのない話を山ほどするけど、父とはそうじゃない。

そんな父が、新たに手に入れた趣味、それがキャンプ。

父は一度ハマるとどんどん知識を吸収し、どんどん深みへ進んでいく。今回も気付けば父の作業部屋が、キャンプ道具でいっぱいになっていた。凝り性は50を過ぎても変わらないらしい。元気そうで何より。

父はソロキャンプでも全然良いらしかった。それでもダメ元みたいに「行く?」と誘われると、(泊まりのキャンプを、そもそも父と2人で出掛けた経験すらほとんど無いのに...と躊躇したけれど)キャンプという非日常な響きに負けて、気付けば22歳という年齢で、まさかの父と2人キャンプ。こんなことをしている同級生が居るんだろうか......

端的に言えば、父との2人キャンプは非常に楽しく終わった。父はキャンプ中、ずっと楽しそうな顔をしていたし、お茶を淹れるのもご飯の準備も片付けも、いそいそと動き出す。家で毎日それらを行う母からすれば「家でやらないから非日常なんでしょう」との少々厳しい(でも多分正解だ)意見を聞いたけれど、とにかく終始上機嫌な父は、いつもより少し饒舌だった。

虫も苦手だし、不便なことが多いからなあと渋っていた私も、なんだかんだでめちゃくちゃ楽しめていた。私はキャンプ中、スマホを置いて本を読むことに集中するつもりだったのだけど、見事高校生の頃から読んでは挫折を3回ほど繰り返していた哲学入門のような本を読破できた。自然の中での読書、最高...


父と2人でのキャンプ。この年齢になってこんなことをするとは思わなかったけど、2人で冷凍餃子と一緒に飲んだビールも、肉と一緒に飲んだレモン酎ハイも、わたしが大人になったから出来たことだ。

私のことをどう思っているんだろう?もしかしたらキャンプなんて行ったら、人生についての説教とか柄でもなくされたりとか...相談に乗られたりとか...とソワソワする私をよそに、びっくりするほど父はいつも通りだった。何も考えていないのだろうか。放任主義の父は、なんにも言わない。

それでも、近くの川を歩くとき、滝を目指して険しい道を歩くとき、いつだって父は大きな手を差し伸べてくれた。自分だって若くないし、運動だってしてないくせに。

ずっといつまでも、自分の好きなことをし続けて欲しいなあという気持ちだけが残った。これまで通り楽しんで生きていてほしい。

もしかして父って人見知りなんじゃないか、とここ最近で子どもの頃よりは話すようになった姿を見る。もしくは子どもが苦手なのか。その節はかなりある。だとしたら、私はもう子どもではなく、大人として見てもらえているんだろうか。

もみあげが白くなって、白髪がどんどん増える父に、ずっと元気でいて欲しいと思った。
たまには父と2人も、悪くない。


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