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寂しくないから大丈夫だよ

いま私のそばには犬の赤ちゃんが居る。赤ちゃんと言っても人間の年齢に換算すれば、10歳くらいではあるらしいのだが。

非常に寂しがりや且つ感情豊かな子で(犬と暮らすのは初めてで比較対象が無い)、私や家族が別の部屋に居るとそれはもう寂しがって、悲しそうな声で鳴く。
なかなか悲痛な叫びなので、手が離せないなりに「大丈夫だよ!もうすぐ行くから寂しくないよ!」「ちょっと遠いけど同じ家に居るんだから寂しくないよ!」と声を掛けてみたりする。

そう言った傍ら、「寂しいかどうかを決めるのは私では無かったな」と思ったのだった。


すぐに行くからって言ったって、今この瞬間にそばに居なければ寂しい。
同じ家に居たって、隣に居なければ寂しい。
そりゃそうだ。

「寂しくないよ」の理由付けを、案外私は頭で色々考えていた。無意識の行動で、心から「寂しいわけない」って思って言ったこと。寂しい感情が表に出る前に、理性で無かったことにしていたんだな。
人間なんだからそれくらいコントロール出来て当たり前のことだけど。

今この瞬間の感情を、なんのフィルターも通さずストレートに表に出すなんて、そんな簡単そうなことを私はもう出来ない。

大好きな人の帰りを全力でお出迎えをして、お出掛けで大喜びして、お腹いっぱい食べて、たくさん寝て。屈託の無い犬の姿に振り回されて、時々参ってしまうこともあるけれど、いつでも正直に生きている犬を、少し羨ましく思う。

寂しいなんて言わないし、言えないし、私はずっと寂しくないから大丈夫。

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