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目覚まし時計の憂鬱

目覚まし時計の憂鬱

 なぜだ、と毎日のように思ってる。俺がせっかく全力で起こそうとしているのに、そんなことは気にも留めず眠り続け、あげくの果てに「また遅刻しちまうじゃないか!」と八つ当たりのように乱暴に俺の声を止める。俺が声をかけた時に起きていれば、ご主人様はゆとりをもって準備し、出かけることができるというのに。

 なぜだ、、、。

 少しでもご主人様の役に立てるように、「目覚まし時計」としての役割を果たせるように

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伝説のギタリスト

 その噂を教えてくれたのは、同じ大学に通う同級生の友人だった。チェーン店の居酒屋で、ゼミ合宿の打ち上げと称して2人で飲んでいた時だった。

 「バックケリーのギターを聴いたが最後。もしも今の世界が気に入ってるんなら絶対に聴かない方がいい。問答無用で異世界へと引き込まれるからだ」

 梅酒ロックをもう6杯も飲んでいるその友人は、いつもは寡黙なのだが、酒が入ると決まって饒舌になる。「また始まった」と鼻

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とある禁止条例

 「ピコーン」とスマホが鳴り、私の優越感ゲージが、また1つ増えたのを感じた。SNSを開いてみると、昨日あげた記事に「いいね~!」や「すごいね~!」などの反応が新たに沢山ついていた。コメントも多く「やっぱクミちゃんてすごい!尊敬しちゃう!」であったり「いいなー☆うらやましい」であったり、それらを読むたびに私の優越感ゲージは増えていき、輝きを増していく。表情が自然と緩み、あやうくヨダレを垂らしそうにな

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棺桶職人の背中

棺桶職人の背中

 

 トン、トン、トントン、

 トン、トン、トントン、

 

 金槌で釘を打ち込む音が、静かに響いている。

 父は、今日も、いつもと変わらず黙々と棺桶を作っている。

 汗をかきながら、集中力を途切れさせることなく、ただただ黙って手を動かし続ける父の背中からは、安易に触れてはいけないような、声をかけてはいけないような、殺気にも似た迫力が感じられた。

 母は、そんな父親を誇りに思っているよ

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名前のない祈り

名前のない祈り

 青年の手から、白いハトが飛び立っていった。

 ケガが完治したといっても、飛ぶのは久しぶりのことであり、初めはぎこちなく、慌てたように翼をバタバタさせていたが、本能的に飛ぶことを思い出したのか、やがて風に乗り、泉のある森の方へと飛んで行った。青年は、寂しそうに、誇らしそうに、ハトが飛んでいった空を眺めている。

 

 そういえば人間は、白いハトを平和の象徴だとする考えがあるんだったな。ふと、そ

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ダンスホール

ダンスホール

 赤や青、緑や黄色のレーザー光線が、人間の神経を高ぶらせるように暗いホールを慌ただしく照らし出している。いつもはこんな場所には来ないのだが、後輩の野田がしつこく誘ってきたため、これも社会勉強になるかもしれないと思い直し、来てみたが、想像以上に騒々しい場所だった。まだ飲み物を頼んだだけなのに、一刻も早くこんな店から飛び出して、家に帰り愛猫の『みーすけ』を撫でたい願望が沸々とお腹の底から湧いてきていた

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REBORN

REBORN

緑の海で、溺れている夢を見た。

葉っぱが身体を優しく包み、サワサワと風の通る音が聞こえる。

視界一杯に広がる緑に囲まれながら、

ドクン、ドクンと、自分の鼓動が小さく小さく鳴っている。

一瞬、魚のようなものが、目の前を過ぎていった。

「まさか」と思いながらも目で姿を追うと、

それは正真正銘の魚で、

気持ちよさそうに緑の中を泳いでいる。

僕は魚の真似をして、緑の中を泳いでみる。

緑を

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クリームソーダ

クリームソーダ

 2人並んで砂浜に座り、僕らはボーっと海を眺めていた。

 たくさんの人達が、今年、最後の夏を惜しむかの様に、身体中の細胞に記憶させるかのように、海で泳ぎ、笑い、はしゃいでいた。晩夏の日差しを笑顔で反射させている彼らの姿を見て、あ、輝いてるってこういう事か、とボンヤリ思った。彼らの姿が眩しくて、思わず目を背ける。光で照らし出されるのは、なんだか、すべてを見透かされているようで、落ち着かないのだ。

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a whole new world

a whole new world

あなたは、道で、光り輝く小さな玉を拾ったことがあるだろうか?

私は、昨日拾った。

「道に落っこちてるものを、なんでもかんでも拾ってくるんじゃないよ!」と、小さい頃から、よく母親に注意されていた。

一時はその癖もなくなっていたが、大人になって、その衝動が再び噴き出してきた。

今は一人暮らしをしているから、なんでも拾って持って帰れる。パラダイス状態なのだ。

昨日拾ったのは、それはそれはキレイ

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カミノツカイ

カミノツカイ

なにやら向こうの方が騒がしい。

どうやら人間がエサを配っているようだ。

何も知らず、何も知ろうとせず、無邪気な顔をしてエサにありついている者たちを見ていると、嘆かわしいやら情けないやら、悲しい気持ちになってくる。

お前たちには無いのか?

鹿としての矜持が。

鹿として、この世界を生きているプライドが。

数年前に亡くなった爺様の言葉を思い出す。

「ええか。何を失ったとしても、たとえどんな

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取引の行方

取引の行方

一人、ボーっと海を眺めていると、どこからともなく悪魔が現れ、「よお」と馴れ馴れしく話しかけてきた。

黒のタキシード、ノリのきいた白シャツ、几帳面なまでに整えられた髪型、高級そうな革靴、そして端正な顔立ち。外見だけで考えるならば、金持ちで育ちのいい英国紳士のようだ。多くの人がそう思うだろう。しかし実際は違う。彼は悪魔なのだ。長い付き合いだから、どんな格好をしていようが、僕には分かる。

悪魔は、何

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蚊が飛んでいる

蚊が飛んでいる

今 僕の近くを蚊が飛んでいる。

耳元で、「フィ~ン」だか「プーン」だか「ブーン」だか知らないが、羽音を鳴らしながら飛んでいる。

蚊の存在を感じると、反射的に体のどこかがムズ痒くなる。

「蚊=痒い」という回路が脳に出来上がるほど、産まれてからこの歳になるまで、数えきれないくらい蚊に刺されてきた。

刺される度、いつも思う。

なぜだ?と。

なぜ「痒み」を残していくのだ?と。

こちらは蚊に血

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花火色の世界

花火色の世界

「で、何か質問はあるか?」

男は、タバコをふかしながら、そう尋ねてきた。サングラス越しだが、こちらを野獣のような目つきで睨んでいるのを感じる。

ヒューッ、と甲高い音を立て、上空で大きな花火が開いた。

学生時代の頃から、先生に「何か質問はありますか?」と訊かれる度、「ああ!早く何か質問しなきゃ!」と一人アタフタしていたのを思い出す。

「質問もできないなんて,,,」と相手を失望させるのではない

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