otoshimon2000

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目覚まし時計の憂鬱

 なぜだ、と毎日のように思ってる。俺がせっかく全力で起こそうとしているのに、そんなことは気にも留めず眠り続け、あげくの果てに「また遅刻しちまうじゃないか!」と八つ当たりのように乱暴に俺の声を止める。俺が声をかけた時に起きていれば、ご主人様はゆとりをもって準備し、出かけることができるというのに。  なぜだ、、、。  少しでもご主人様の役に立てるように、「目覚まし時計」としての役割を果たせるように、色々なセミナーに参加し、自己研鑽に励んでいるというのに,,,。  えっ?時計

    • 伝説のギタリスト

       その噂を教えてくれたのは、同じ大学に通う同級生の友人だった。チェーン店の居酒屋で、ゼミ合宿の打ち上げと称して2人で飲んでいた時だった。  「バックケリーのギターを聴いたが最後。もしも今の世界が気に入ってるんなら絶対に聴かない方がいい。問答無用で異世界へと引き込まれるからだ」  梅酒ロックをもう6杯も飲んでいるその友人は、いつもは寡黙なのだが、酒が入ると決まって饒舌になる。「また始まった」と鼻で笑いながらも「異世界」という言葉が何となく気になった。  「異世界ってなんだ

      • とある禁止条例

         「ピコーン」とスマホが鳴り、私の優越感ゲージが、また1つ増えたのを感じた。SNSを開いてみると、昨日あげた記事に「いいね~!」や「すごいね~!」などの反応が新たに沢山ついていた。コメントも多く「やっぱクミちゃんてすごい!尊敬しちゃう!」であったり「いいなー☆うらやましい」であったり、それらを読むたびに私の優越感ゲージは増えていき、輝きを増していく。表情が自然と緩み、あやうくヨダレを垂らしそうになって、あわてて「ジュルッ!」っと吸い上げた。  人はパンだけで生きてる訳じゃな

        • ダンスホール

           赤や青、緑や黄色のレーザー光線が、人間の神経を高ぶらせるように暗いホールを慌ただしく照らし出している。いつもはこんな場所には来ないのだが、後輩の野田がしつこく誘ってきたため、これも社会勉強になるかもしれないと思い直し、来てみたが、想像以上に騒々しい場所だった。まだ飲み物を頼んだだけなのに、一刻も早くこんな店から飛び出して、家に帰り愛猫の『みーすけ』を撫でたい願望が沸々とお腹の底から湧いてきていた。  野田はというと、そんな私のことなどお構いなしに、隣のテーブルにいる派手な

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        • ショートショート
          13本

        記事

          目覚めたらヒーロー

           誰も信じてくれないかもしれないが、私は今日、ヒーローになった。  幼稚園に通っていた頃(もう40年ほど昔のことだが)、ヒーローごっこで遊んでいる同い歳の子達を見て「何やってんだか」とバカにしていたこの私が、まさか正真正銘のヒーローになるとは。「現実は小説よりも奇なり」とよく言われるが、これはもはや「奇」を通り越して「苦」である。   昨晩、確か、仕事から帰宅した後、シャワーを浴びて軽く酒を飲みながら夕食を済ませ、寝室のベットで休んだはずだ。最近、仕事が忙しくなってきたこ

          目覚めたらヒーロー

          名前のない祈り

           青年の手から、白いハトが飛び立っていった。  ケガが完治したといっても、飛ぶのは久しぶりのことであり、初めはぎこちなく、慌てたように翼をバタバタさせていたが、本能的に飛ぶことを思い出したのか、やがて風に乗り、泉のある森の方へと飛んで行った。青年は、寂しそうに、誇らしそうに、ハトが飛んでいった空を眺めている。    そういえば人間は、白いハトを平和の象徴だとする考えがあるんだったな。ふと、そんなことを思い出した。  、、、ん?なぜ、木である俺がそんなことを知っているの

          名前のない祈り

          棺桶職人の背中

             トン、トン、トントン、  トン、トン、トントン、    金槌で釘を打ち込む音が、静かに響いている。  父は、今日も、いつもと変わらず黙々と棺桶を作っている。  汗をかきながら、集中力を途切れさせることなく、ただただ黙って手を動かし続ける父の背中からは、安易に触れてはいけないような、声をかけてはいけないような、殺気にも似た迫力が感じられた。  母は、そんな父親を誇りに思っているようだったが、オルガは、棺桶を作っている父の背中を見るのが、大嫌いだった。  な

          棺桶職人の背中

          クリームソーダ

           2人並んで砂浜に座り、僕らはボーっと海を眺めていた。  たくさんの人達が、今年、最後の夏を惜しむかの様に、身体中の細胞に記憶させるかのように、海で泳ぎ、笑い、はしゃいでいた。晩夏の日差しを笑顔で反射させている彼らの姿を見て、あ、輝いてるってこういう事か、とボンヤリ思った。彼らの姿が眩しくて、思わず目を背ける。光で照らし出されるのは、なんだか、すべてを見透かされているようで、落ち着かないのだ。  隣に座っているユウも同じ心境なのだろうか。じっと自分の足元の砂浜を見つめてい

          クリームソーダ

          REBORN

          緑の海で、溺れている夢を見た。 葉っぱが身体を優しく包み、サワサワと風の通る音が聞こえる。 視界一杯に広がる緑に囲まれながら、 ドクン、ドクンと、自分の鼓動が小さく小さく鳴っている。 一瞬、魚のようなものが、目の前を過ぎていった。 「まさか」と思いながらも目で姿を追うと、 それは正真正銘の魚で、 気持ちよさそうに緑の中を泳いでいる。 僕は魚の真似をして、緑の中を泳いでみる。 緑を掻き分けながら、少しずつ、少しずつ進んでいく。 魚が何匹か、僕を追い越していっ

          カミノツカイ

          なにやら向こうの方が騒がしい。 どうやら人間がエサを配っているようだ。 何も知らず、何も知ろうとせず、無邪気な顔をしてエサにありついている者たちを見ていると、嘆かわしいやら情けないやら、悲しい気持ちになってくる。 お前たちには無いのか? 鹿としての矜持が。 鹿として、この世界を生きているプライドが。 数年前に亡くなった爺様の言葉を思い出す。 「ええか。何を失ったとしても、たとえどんなに苦しかったとしても、鹿としての矜持を捨ててはいかん。矜持を捨てた瞬間、ただの動

          カミノツカイ

          a whole new world

          あなたは、道で、光り輝く小さな玉を拾ったことがあるだろうか? 私は、昨日拾った。 「道に落っこちてるものを、なんでもかんでも拾ってくるんじゃないよ!」と、小さい頃から、よく母親に注意されていた。 一時はその癖もなくなっていたが、大人になって、その衝動が再び噴き出してきた。 今は一人暮らしをしているから、なんでも拾って持って帰れる。パラダイス状態なのだ。 昨日拾ったのは、それはそれはキレイな玉だった。 夜中に拾ったのだが、街頭もないのに、わずかだが黄色い光を放ってい

          a whole new world

          足裏への謝罪文

          親愛なる僕の足裏 今年の夏は、本当に暑いですね。 少し涼しくなってきたかな?と思っていたら、ところがどっこい、今日も35℃。 いつまで、この暑さは続くんでしょうね。 体調はいかがですか? 夏バテしていませんか? 、、、靴擦れで皮がめくれてしまい、痛いですよね。 、、、汗いっぱいかいて、靴の中がムレムレでしたよね。 いつも、顔や頭なんかは、「ゴミがついていないか?」「目ヤニは付いていないか?」「寝癖が付いていないか?」とか、いつも気にするのに、君のことは、何の気

          足裏への謝罪文

          ピッ、ピッ、ピッ、

          スーパーでのお会計、 ピッ、ピッ、ピッ、 バーコードを読み込む音が鳴る。 その音を聞いてるうちに、 自分の、そして、あらゆる存在の、 心電図の音を聞いてるような錯覚を抱く。 日常に流されて、 色んなものに惑わされて、 気付いていないけれど、 忘れてしまっているけれど、 あらゆるところで鳴っている。 様々なピッ、ピッ、ピッ、と出逢って、 沢山のピッ、ピッ、ピッ、に支えられて、 今、この瞬間、僕も鳴らしている ピッ、ピッ、ピッ。 それぞれの音が重なり

          ピッ、ピッ、ピッ、

          大口開けて笑うとき

          わっはっはっはっ、と 大口開けて笑うとき 喉の奥の奥の奥の方まで、天に、人にさらけ出せた気になって なんだか愉快な気持ちになる。 どこまでいっても自分の中には 良いも悪いも色々なものがあって たまに挫けそうになることもあるけど 自分という器の蓋を 大きく大きく開け放って笑ったら どんな自分も、あんな自分も すべてをお天道様の下にさらけ出せた気になって 心も身体も軽くなる これでいいのだ。 すべて大丈夫。 ただし大口を開けるときは、 アゴが外れない

          大口開けて笑うとき

          「今」「いま」「イマ」

          いつも不満を抱いていた。 いつも不安を抱いていた。 もっと、何か自分に合っている仕事が、環境が、あるはずだ、と。 憧れの目で未来ばかりを見据えていた。 「いつか、自分に合った仕事を見つけてみせる」と。 そんなことを考えながら、妄想しながら、仕事をしていた。 「今」の自分を認めたくないから、いつも「未来」へと逃げ込んでいたのだ。 「今」「今」「今」の連続が、未来に繋がっているとは、想像もしていなかった。 「今」「ここ」に生きている僕は、 何を考えているだろう?

          「今」「いま」「イマ」

          「お陰様」

          「すべては今のためにあったこと」という本は、修養団・元伊勢道場長である、中山靖雄先生が著されたものです。 この本の中に出てくる言葉を読んで、何を感じたかをアウトプットしていきます。 わたしがわたしに なるために じんせいのしっぱいもひつようでした  むだな くしんも ほねおりも かなしみも              すべてひつようでした                        わたしがわたしになれたいま                     みんなあなたのおかげで

          「お陰様」