otoshimon2000

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目覚まし時計の憂鬱

 なぜだ、と毎日のように思ってる。俺がせっかく全力で起こそうとしているのに、そんなことは気にも留めず眠り続け、あげくの果てに「また遅刻しちまうじゃないか!」と八…

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4年前
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伝説のギタリスト

 その噂を教えてくれたのは、同じ大学に通う同級生の友人だった。チェーン店の居酒屋で、ゼミ合宿の打ち上げと称して2人で飲んでいた時だった。  「バックケリーのギタ…

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4年前
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とある禁止条例

 「ピコーン」とスマホが鳴り、私の優越感ゲージが、また1つ増えたのを感じた。SNSを開いてみると、昨日あげた記事に「いいね~!」や「すごいね~!」などの反応が新た…

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4年前
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ダンスホール

 赤や青、緑や黄色のレーザー光線が、人間の神経を高ぶらせるように暗いホールを慌ただしく照らし出している。いつもはこんな場所には来ないのだが、後輩の野田がしつこく…

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4年前
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目覚めたらヒーロー

 誰も信じてくれないかもしれないが、私は今日、ヒーローになった。  幼稚園に通っていた頃(もう40年ほど昔のことだが)、ヒーローごっこで遊んでいる同い歳の子達を見…

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4年前
5

名前のない祈り

 青年の手から、白いハトが飛び立っていった。  ケガが完治したといっても、飛ぶのは久しぶりのことであり、初めはぎこちなく、慌てたように翼をバタバタさせていたが、…

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4年前
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棺桶職人の背中

   トン、トン、トントン、  トン、トン、トントン、    金槌で釘を打ち込む音が、静かに響いている。  父は、今日も、いつもと変わらず黙々と棺桶を作っている…

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4年前
5

クリームソーダ

 2人並んで砂浜に座り、僕らはボーっと海を眺めていた。  たくさんの人達が、今年、最後の夏を惜しむかの様に、身体中の細胞に記憶させるかのように、海で泳ぎ、笑い、…

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4年前
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REBORN

緑の海で、溺れている夢を見た。 葉っぱが身体を優しく包み、サワサワと風の通る音が聞こえる。 視界一杯に広がる緑に囲まれながら、 ドクン、ドクンと、自分の鼓動が小…

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4年前
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カミノツカイ

なにやら向こうの方が騒がしい。 どうやら人間がエサを配っているようだ。 何も知らず、何も知ろうとせず、無邪気な顔をしてエサにありついている者たちを見ていると、嘆…

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4年前
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a whole new world

あなたは、道で、光り輝く小さな玉を拾ったことがあるだろうか? 私は、昨日拾った。 「道に落っこちてるものを、なんでもかんでも拾ってくるんじゃないよ!」と、小さい…

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4年前
3

足裏への謝罪文

親愛なる僕の足裏 今年の夏は、本当に暑いですね。 少し涼しくなってきたかな?と思っていたら、ところがどっこい、今日も35℃。 いつまで、この暑さは続くんでしょうね…

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4年前
2

ピッ、ピッ、ピッ、

スーパーでのお会計、 ピッ、ピッ、ピッ、 バーコードを読み込む音が鳴る。 その音を聞いてるうちに、 自分の、そして、あらゆる存在の、 心電図の音を聞いてるような…

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4年前
1

大口開けて笑うとき

わっはっはっはっ、と 大口開けて笑うとき 喉の奥の奥の奥の方まで、天に、人にさらけ出せた気になって なんだか愉快な気持ちになる。 どこまでいっても自分の中には …

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4年前
3

「今」「いま」「イマ」

いつも不満を抱いていた。 いつも不安を抱いていた。 もっと、何か自分に合っている仕事が、環境が、あるはずだ、と。 憧れの目で未来ばかりを見据えていた。 「いつか…

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4年前

「お陰様」

「すべては今のためにあったこと」という本は、修養団・元伊勢道場長である、中山靖雄先生が著されたものです。 この本の中に出てくる言葉を読んで、何を感じたかをアウト…

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4年前
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目覚まし時計の憂鬱

目覚まし時計の憂鬱

 なぜだ、と毎日のように思ってる。俺がせっかく全力で起こそうとしているのに、そんなことは気にも留めず眠り続け、あげくの果てに「また遅刻しちまうじゃないか!」と八つ当たりのように乱暴に俺の声を止める。俺が声をかけた時に起きていれば、ご主人様はゆとりをもって準備し、出かけることができるというのに。

 なぜだ、、、。

 少しでもご主人様の役に立てるように、「目覚まし時計」としての役割を果たせるように

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伝説のギタリスト

 その噂を教えてくれたのは、同じ大学に通う同級生の友人だった。チェーン店の居酒屋で、ゼミ合宿の打ち上げと称して2人で飲んでいた時だった。

 「バックケリーのギターを聴いたが最後。もしも今の世界が気に入ってるんなら絶対に聴かない方がいい。問答無用で異世界へと引き込まれるからだ」

 梅酒ロックをもう6杯も飲んでいるその友人は、いつもは寡黙なのだが、酒が入ると決まって饒舌になる。「また始まった」と鼻

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とある禁止条例

 「ピコーン」とスマホが鳴り、私の優越感ゲージが、また1つ増えたのを感じた。SNSを開いてみると、昨日あげた記事に「いいね~!」や「すごいね~!」などの反応が新たに沢山ついていた。コメントも多く「やっぱクミちゃんてすごい!尊敬しちゃう!」であったり「いいなー☆うらやましい」であったり、それらを読むたびに私の優越感ゲージは増えていき、輝きを増していく。表情が自然と緩み、あやうくヨダレを垂らしそうにな

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ダンスホール

ダンスホール

 赤や青、緑や黄色のレーザー光線が、人間の神経を高ぶらせるように暗いホールを慌ただしく照らし出している。いつもはこんな場所には来ないのだが、後輩の野田がしつこく誘ってきたため、これも社会勉強になるかもしれないと思い直し、来てみたが、想像以上に騒々しい場所だった。まだ飲み物を頼んだだけなのに、一刻も早くこんな店から飛び出して、家に帰り愛猫の『みーすけ』を撫でたい願望が沸々とお腹の底から湧いてきていた

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目覚めたらヒーロー

 誰も信じてくれないかもしれないが、私は今日、ヒーローになった。

 幼稚園に通っていた頃(もう40年ほど昔のことだが)、ヒーローごっこで遊んでいる同い歳の子達を見て「何やってんだか」とバカにしていたこの私が、まさか正真正銘のヒーローになるとは。「現実は小説よりも奇なり」とよく言われるが、これはもはや「奇」を通り越して「苦」である。 

 昨晩、確か、仕事から帰宅した後、シャワーを浴びて軽く酒を飲

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名前のない祈り

名前のない祈り

 青年の手から、白いハトが飛び立っていった。

 ケガが完治したといっても、飛ぶのは久しぶりのことであり、初めはぎこちなく、慌てたように翼をバタバタさせていたが、本能的に飛ぶことを思い出したのか、やがて風に乗り、泉のある森の方へと飛んで行った。青年は、寂しそうに、誇らしそうに、ハトが飛んでいった空を眺めている。

 

 そういえば人間は、白いハトを平和の象徴だとする考えがあるんだったな。ふと、そ

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棺桶職人の背中

棺桶職人の背中

 

 トン、トン、トントン、

 トン、トン、トントン、

 

 金槌で釘を打ち込む音が、静かに響いている。

 父は、今日も、いつもと変わらず黙々と棺桶を作っている。

 汗をかきながら、集中力を途切れさせることなく、ただただ黙って手を動かし続ける父の背中からは、安易に触れてはいけないような、声をかけてはいけないような、殺気にも似た迫力が感じられた。

 母は、そんな父親を誇りに思っているよ

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クリームソーダ

クリームソーダ

 2人並んで砂浜に座り、僕らはボーっと海を眺めていた。

 たくさんの人達が、今年、最後の夏を惜しむかの様に、身体中の細胞に記憶させるかのように、海で泳ぎ、笑い、はしゃいでいた。晩夏の日差しを笑顔で反射させている彼らの姿を見て、あ、輝いてるってこういう事か、とボンヤリ思った。彼らの姿が眩しくて、思わず目を背ける。光で照らし出されるのは、なんだか、すべてを見透かされているようで、落ち着かないのだ。

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REBORN

REBORN

緑の海で、溺れている夢を見た。

葉っぱが身体を優しく包み、サワサワと風の通る音が聞こえる。

視界一杯に広がる緑に囲まれながら、

ドクン、ドクンと、自分の鼓動が小さく小さく鳴っている。

一瞬、魚のようなものが、目の前を過ぎていった。

「まさか」と思いながらも目で姿を追うと、

それは正真正銘の魚で、

気持ちよさそうに緑の中を泳いでいる。

僕は魚の真似をして、緑の中を泳いでみる。

緑を

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カミノツカイ

カミノツカイ

なにやら向こうの方が騒がしい。

どうやら人間がエサを配っているようだ。

何も知らず、何も知ろうとせず、無邪気な顔をしてエサにありついている者たちを見ていると、嘆かわしいやら情けないやら、悲しい気持ちになってくる。

お前たちには無いのか?

鹿としての矜持が。

鹿として、この世界を生きているプライドが。

数年前に亡くなった爺様の言葉を思い出す。

「ええか。何を失ったとしても、たとえどんな

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a whole new world

a whole new world

あなたは、道で、光り輝く小さな玉を拾ったことがあるだろうか?

私は、昨日拾った。

「道に落っこちてるものを、なんでもかんでも拾ってくるんじゃないよ!」と、小さい頃から、よく母親に注意されていた。

一時はその癖もなくなっていたが、大人になって、その衝動が再び噴き出してきた。

今は一人暮らしをしているから、なんでも拾って持って帰れる。パラダイス状態なのだ。

昨日拾ったのは、それはそれはキレイ

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足裏への謝罪文

足裏への謝罪文

親愛なる僕の足裏

今年の夏は、本当に暑いですね。

少し涼しくなってきたかな?と思っていたら、ところがどっこい、今日も35℃。

いつまで、この暑さは続くんでしょうね。

体調はいかがですか?

夏バテしていませんか?

、、、靴擦れで皮がめくれてしまい、痛いですよね。

、、、汗いっぱいかいて、靴の中がムレムレでしたよね。

いつも、顔や頭なんかは、「ゴミがついていないか?」「目ヤニは付いてい

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ピッ、ピッ、ピッ、

ピッ、ピッ、ピッ、

スーパーでのお会計、

ピッ、ピッ、ピッ、

バーコードを読み込む音が鳴る。

その音を聞いてるうちに、

自分の、そして、あらゆる存在の、

心電図の音を聞いてるような錯覚を抱く。

日常に流されて、

色んなものに惑わされて、

気付いていないけれど、

忘れてしまっているけれど、

あらゆるところで鳴っている。

様々なピッ、ピッ、ピッ、と出逢って、

沢山のピッ、ピッ、ピッ、に支えられて、

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大口開けて笑うとき

大口開けて笑うとき

わっはっはっはっ、と

大口開けて笑うとき

喉の奥の奥の奥の方まで、天に、人にさらけ出せた気になって

なんだか愉快な気持ちになる。

どこまでいっても自分の中には

良いも悪いも色々なものがあって

たまに挫けそうになることもあるけど

自分という器の蓋を

大きく大きく開け放って笑ったら

どんな自分も、あんな自分も

すべてをお天道様の下にさらけ出せた気になって

心も身体も軽くなる

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「今」「いま」「イマ」

「今」「いま」「イマ」

いつも不満を抱いていた。

いつも不安を抱いていた。

もっと、何か自分に合っている仕事が、環境が、あるはずだ、と。

憧れの目で未来ばかりを見据えていた。

「いつか、自分に合った仕事を見つけてみせる」と。

そんなことを考えながら、妄想しながら、仕事をしていた。

「今」の自分を認めたくないから、いつも「未来」へと逃げ込んでいたのだ。

「今」「今」「今」の連続が、未来に繋がっているとは、想像

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「お陰様」

「お陰様」

「すべては今のためにあったこと」という本は、修養団・元伊勢道場長である、中山靖雄先生が著されたものです。

この本の中に出てくる言葉を読んで、何を感じたかをアウトプットしていきます。

わたしがわたしに なるために じんせいのしっぱいもひつようでした  むだな くしんも ほねおりも かなしみも              すべてひつようでした                        わたしがわ

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