小説:バンビィガール<1>ある女子大生の夢 #note創作大賞2024
――むかしむかしあるところに、冴えない21歳の女子大生がおりました。
その女子大生の密かな夢は、地域密着型の情報誌の顔とも言えるイメージモデル。一年間の任期の間に県内で注目の的になるそれは、簡単に言うと地元のミスコンを意味していました。
30歳までの独身女性を対象にしたそのミスコンに、女子大生はチャレンジしてみることを決めました。
しかし冴えない女子大生は、文字通り冴えなくて、取り立てて美人でもなく、ファッションにも疎い子でした。おまけに写真を撮られるのが苦手だったのです。
案の定、一回目の挑戦は書類審査で落ちました。
恥ずかしくてごくわずかの友人たちにしか応募したことを打ち明けておらず、女子大生は安堵しましたが、どこか淋しくもありました。
女子大生の夢は一度、消えました。
二回目は24歳の春。
女子大生だった頃より少し垢抜けた24歳の彼女は「諦めきれない」と再度応募し、書類審査は通過したものの、カメラテストで落ちました。敗因は自己分析の結果「ファッションセンスではないか」と結論付けました。
当時の彼女は髪型をショートカットにしていて、パステルピンクのタイトなワンピースという、どことなくちぐはぐな装いをしていて、端的に言うと『ダサい』。彼女は「そりゃ落とされるだろうな」と納得しました。
――納得はしたけれど、悲しくて悔しいことには変わりありませんでした。
更に3年の月日が流れました。
女子大生はいつの間にか27歳。友人たちが結婚や出産をするなか、彼女は自分の生きる道が宙ぶらりんであることに不安を覚えました。
あと3年で30歳。一見すると何もできていない。正社員を辞めた後、派遣のアルバイトで食いつなぎ、恋人もおらず、ただただ日々を生きるだけ。
そんな時、またあの情報誌がモデル募集をする季節になっていました。彼女は密かに決意を固めます。
「三度目の正直か、二度あることは三度あるのか、ここで証明して見せよう」
親友に頼んで応募写真を撮影してもらい、応募書類を用意し――地元への想いを熱く熱くA4用紙3枚にしたため――ポストに投函しました。
こうして、彼女の三回目の挑戦が始まったのです。
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