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多様性〜人と森のサスティナブルな関係

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2021年出版『多様性〜人と森のサスティナブルな関係』に関する記事や書評を集めています。
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2021年7月の記事一覧

科学に100%の答えはないが...

科学に100%の答えはないが...

科学的な知見からは、こうあるべきだ、という強力で明白な理屈が導き出される事柄でも、なかなか変化や実践が進まないことがたくさんある。

優秀な科学者の多くはとても謙虚である。科学に100%の答えはないことを自覚している。そのような科学者は、世間で大きく目を引くような断定的なこと、2極論的なことは言わない。白黒はっきりした物言いや単純明快な比較を好む多くのメディアには、そのような誠実で謙虚な科学者はあ

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【競争(competition)の本来の意味】

【競争(competition)の本来の意味】

オリンピックがはじまった。

スポーツ選手たちの勝利を目指した「競争」に世界中が熱狂し、一喜一憂する。
「競争」は、スポーツだけでなく、私たちの経済活動、教育システム、文化・芸術活動と、あらゆるところにあり、個々人の生活や社会を動かす大きな原動力の1つになっている。

競争の語源について調べてみた。

日本語の「競争」は、明治時代に西洋から輸入された言葉。英語の「competition」を福沢諭吉

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書評 「多様性」 by 嶋岡匠さん

書評 「多様性」 by 嶋岡匠さん

ヨーロッパ留学経験もある嶋岡さんが、丁寧かつ簡潔な書評を書いてくれました。

かつて木材は「製造材料」であり、「エネルギー源」でもあった。 国家の繁栄に直結する資源であったゆえ、木材を生産・管理する研究が始まった。 ドイツは林学という学問体系を世界で最初に構築した国。 著者・池田さんは、ドイツで森林・環境に関する学問を治められ、今も実践されている専門家だ。

明治の開国後、当時国家の戦略的資源であ

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自由の最大公約数

自由の最大公約数

「個々人の自由というのは、他の人の自由が始まるところで終わる」

ドイツの哲学者カントが200年以上前に言った言葉です。

自由はデモクラシーの支柱の1つで、幸福感の重要な要素ですが、勝手気ままな無制限の自由の行使は、他人の自由を奪ってしまいます。個々のたくさんの自由を成立させるためには、各人による360度の「気くばり」が必要です。

また、現在、世界で大きなテーマになっている健康や福祉、社会的公

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自然と音楽は嘘をつかない!

自然と音楽は嘘をつかない!

好評いただいている7月のオンラインセミナーの締めは、7月27日18時30分から、高山の長瀬土建の長瀬雅彦さんにゲストスピーカーとして登場してもらいます。
「経年美化」する土木業者になるために 〜SDGsに取り組む長瀬土建の挑戦
https://nagasedoken.peatix.com

長瀬さんとは10年以上の付き合いで、年に1、2回はドイツか日本で会って仕事、プライベートで交流している私の大

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ドイツ西部の洪水被害の複合的な要因 〜地質、農地整備、モノカルチャーの林、林業機械

ドイツ西部の洪水被害の複合的な要因 〜地質、農地整備、モノカルチャーの林、林業機械

先週(7月中ば)に西部ドイツを襲った洪水被害ですが、死者は160名を超え、行方不明者は200人近くと推定されています。洪水被害は、中欧でも近年増加していますが、今回の被害規模はそれらを大きく上回るものです。命を亡くされた方にご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に、1日も早い復興をお祈りします。また精力的に被災地の復興支援を行われている数万人のヘルパーの方々にも多大な敬意を表します。

ベルギ

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谷や沢が多い日本では

谷や沢が多い日本では

今回の熱海の土砂災害では、谷筋の窪地に埋められた盛土(土木工事の残土など)が主要な原因との推測がされている。また尾根を削って造成されたメガソーラーや、雨が降ると土砂を運ぶ川のようになる水を制御できない構造の林道との関連性も議論されている。

いずれも、雨が多く、繊細な地質と土壌の場所では、やってはいけない開発である。私が住むドイツでは、いずれの類の開発も、幸いなことに、法的に許されていない。

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世界の終わり、パラダイスのはじまり

世界の終わり、パラダイスのはじまり

僕ら家族は、人口2万人の街の郊外、世界の終わりに近いところに住んでいる。
歩いて10分、自転車で3分走れば、世界の終わりにたどり着ける。そこからパラダイスがはじまる。一般的にいわれる人間の想像のなかにあるパラダイスではない。このパラダイスには実態がある。観て、聴いて、触って、匂いを嗅いで、食べることができる。僕はそれを「生きた里山」と呼んでいる。

定期的な草刈りや動物の放牧で、多様に管理されたパ

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告白

告白

「日本の森のポテンシャルに心が躍る」
「森で仕事をするものとして励みになる」
「森にさらに興味が湧いた」
などなど、春に出版した拙著『多様性〜人と森のサスティナブルな関係』https://www.amazon.co.jp/gp/product/B091F75KD3
に、嬉しい感想を、専門外の一般の方々からもたくさんいただきました。みんなにやる気とモチベーションを与えるような、ポジティブで持続可能だ

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校正者は文章を読んではいけない!

校正者は文章を読んではいけない!

この度、世に出した拙著『多様性〜人と森のサスティナブルな関係』
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B091F75KD3
ですが、盛岡市在住のベテランライターの吉田聖子さんに校正をお願いしました。私の少しドイツ語なまりの言葉遣いや、我流の表現の修正、漢字や平仮名の統制、句読点の正しい打ち方など、非常にシステマティックに丁寧に「調律」いただきました。
これまで、共

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