見出し画像

校正者は文章を読んではいけない!

この度、世に出した拙著『多様性〜人と森のサスティナブルな関係』
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B091F75KD3
ですが、盛岡市在住のベテランライターの吉田聖子さんに校正をお願いしました。私の少しドイツ語なまりの言葉遣いや、我流の表現の修正、漢字や平仮名の統制、句読点の正しい打ち方など、非常にシステマティックに丁寧に「調律」いただきました。
これまで、共著本を中心に何度か本を出しましたが、校正作業は、出版社の編集者にほとんどお任せでした。でも今回は、企画も編集も出版も自分で、自分の責任でやるという決断をしたので、大切な「校正」も、知り合いを通じて適任者を紹介してもらい、運よく、経験豊かなプロ中のプロの吉田さんにお願いすることができました。吉田さんは、NHKの「正しい日本語」というテーマの番組で紹介されるくらい、地域の業界の中では知らない人はいない、信頼がおかれている方ですが、「校正」という表に出ない地味なお仕事から、一般にはあまり知られていない方です。
今回、私は約13万字の文章を書き上げたところで、吉田さんの丁寧な校正作業を通して、2月にほぼ3週間、自分で自分の文章のブレやズレに、真に向き合うという作業をしました。正直、書き終えた、という達成感に浸りたい中で、自分の文章のアラを指摘され、それに向き合うのは、快適ではない辛い作業でした。でもやり終えた後は、スッキリとした気持ちになりました。床屋でボサボサ頭を洗髪、散髪、髭剃りしてもらったあとのような。
誰かプロの校正者の方が書いていたことですが、校正者は「文章を読んではいけない」そうです。感情移入してはいけない、ということです。文章を、徹底して分解、分析、照合する、という左脳のロジカル思考をフルに使い、そこに右脳が入り込むのを抑えなければなりません。
私は、吉田さんに校正の依頼をする時に、吉田さんが雑誌などに自分で記事を書いたりもされていることを知っていたので、「本を読まれての率直な感想も、よければいただきたい」とさりげなくお願いしました。仕事中「読んではいけない」人に、「読んでください」という、失礼なお願いだったことに後で気づきました。
吉田さんは徹底してプロフェッショナルでした。初校のあと再校がきっちり終わって、請求書をいただいてから、感想をいただきました。吉田さんの許可を得て、下記の私のブログに掲載しています。
https://blog.arch-joint-vision.com/?p=865
私は今回の本で、左脳偏重の現代社会において、右脳と左脳の協同作業の大切さを一貫して伝えているつもりです。でもそのメロディが、雑音や音のズレなく、読者に心地よく届くためには、左脳中心による徹底したロジカルな調律作業が欠かせません。
世の中で目立たない、でも、とても大切な舞台裏のお仕事をされている校正者の皆さんに、多大な敬意を表します。
池田憲昭

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?